楽天が9月から始める「レビューへの傾聴施策」「違反点数制度」って何?
楽天が強化している「安心・安全」への取り組み。2016年9月から、楽天市場を“プレミアムな店舗の集合体”とするため、新たに「レビューへの傾聴施策」と「違反点数制度」を設ける。振り返ると、2014年に「品質向上委員会」を設立し、価格表示の統一、各種ルールの策定を実施。2015年は模倣品対策を強化し、模倣品調査のために提携したブランド数は1139ブランドに拡大(2016年3月末時点)、不正注文対策にも力を入れて2015年だけで72億円の不正注文を検知・防止してきた。新たな施策に取り組む楽天の「安心・安全」への取り組みとは――。
低評価レビューの原因が店舗側にある場合、1件当たり700円を店舗が負担
楽天は2016年1月から、低いレビューを投稿した購入者に対して直接電話をし、その理由を確認する取り組みを行っている。購入者から寄せられた声を担当コンサルタント(ECC)が店舗に伝えることで、運営改善につなげている。
その効果は出てきているようで、改善を行った店舗のうち56%の店舗で消費者からのレビュー評価の高まりが確認できているという。
電話がかかってきた購入者のほとんどは、何か伝えたいことがある。低レビューの評価を書き込んでいる人がほとんどで、炎上させようという気持ちを持っている人はほとんどいない。また、レビュー評価で悪い点数をつける人は、他の楽天店舗と比べて課題があると感じ、それを改善して欲しいと感じていることが多い。つまり、低レビューユーザーほど、楽天内でよく買い物をしており、リピーターになりやすい重要顧客であるという傾向値が、調査データからも見えてきた。低レビューを投稿したユーザーの声に耳を傾けることは機能改善・サービス改善につながると感じている。(河野奈保上級執行役員)
今年9月からはレビューを通じた購入者への傾聴施策をさらに強化する。ショップレビュー評点3.0未満のレビューが書き込まれ、低評価となった原因が店舗側にある場合、調査活動費用の一部としてレビュー1件当たり700円を店舗負担とする。ただし、月間5件までは課金対象外。6件以上になった際に負担が発生する仕組みとする。
とはいえ、レビュー投稿者による勘違いなどの可能性もある。低レビューになった原因について、店舗にもしっかりとヒアリングを行ったうえで、店舗側に原因があったかどうかを判断する。たとえば低レビューの原因が配送遅延が配送会社のミスや外的要因によって発生した場合や、商品そのものの質に問題があった場合には、課金対象には当たらないという。
お金の徴収が目的ではなく、店舗には“改善を行うということに真摯に取り組んでいただく”ための施策。低レビューが書き込まれたから、すぐにアウトというわけではなく、しっかり店舗の意見を聞いて判断します。今まで通り、店舗対応をしっかりしている店舗は何も変わりません。これまでのデータを見ると、97%の店舗は該当しないと想定しています。(河野上級執行役員)
累積違反点数35点からランキング掲載停止などに
新たな取り組みの2つ目は違反点数制度の導入。従来、楽天市場は各種規約やガイドラインに違反した店舗に対し、改善要請をした上で、個別に一時出店停止や退店措置などを講じてきた。
しかし、対象行為や措置の内容、個別措置の実施時期などが店舗からは全く見えない状況となっている。そのため、違反点数に応じた措置を公開。その点数に達した場合に、必要な措置を行うなど、罰則の透明化を図る。
具体的には、連絡が困難など軽微な違反に対しては5点、各種表記のガイドライン違反に関しては20点、検索文字列を過剰に記入したり、消費期限切れの食品を販売するなど深刻な違反に対しては35点、店舗関係者によるレビューの書き込みなどより深刻な違反の場合は80点となっており、違反点数が年間累計で35点に達した場合に、7日間ランキング掲載停止や検索表示順位のダウンするといった措置が行われる。違反点数は累積加算され高くなればなるほど、より大きな措置が取られ、100点に達した場合、原則その時点で契約解除措置を実施する。違反点数は毎年1月にリセットされる仕組み。
これまで、なんとなく検索順位が下がったり、ランキング掲載されなくなった、と感じる店舗が、何か違反をしたのかECCに恐る恐る尋ねることが少なくなかった。9月からは管理画面に現在の違反点数を表示する。違反していない店舗は、正しいアクションをしていることがわかるので、継続して店舗運営を行うことができる。違反した場合もすぐに把握できるので、すぐに修正できる。(河野上級執行役員)
楽天市場で長く商売できていること自体がブランドになるように
また、ガイドラインに新たな項目として「キャンセル機能の推奨」という項目を設ける。
楽天市場に対する問い合わせで最も多いのが納期や配送に関する質問(31%)。次がキャンセルに関する質問(27%)となっている。キャンセルをしたいと思っても、店舗によって仕様が異なり、多くの場合が店舗の会社概要ページに移動して、問い合わせメールをする形となっている。お客さまから見ると、わかりにくさがあり、店舗から返信がくるまで返品できるのか不安があるため、問い合わせの多さにつながっている。(河野上級執行役員)
こうした問題を解決するため、すでに用意している購入履歴からキャンセルできる機能を導入するよう店舗に推奨していく。とはいえ、推奨のため導入は必須ではない。
簡単にキャンセルできるようにすることで、キャンセル率が上がるのではないか、と店舗側は心配していると思う。「楽天24」で購入履歴からキャンセルできるようにテストしたところ、キャンセル率は上昇せず、問い合わせ件数が大きく減った。店舗はオペレーションを軽減することができるはず。キャンセルをしたい消費者は、フローに関係なくキャンセルをする。Web上で簡単にキャンセルできるようにした方が、店舗の手間は少なくなると思う。(河野上級執行役員)
新たな取り組みは6月2日に全店舗に告知、9月1日から実施していく。楽天ではこの期間に問題となる対応やガイドラインに反する表記などを修正していくよう、注意喚起を強化していく。今回の取り組みに対して、出店者からの意見もヒアリングし、取り入れていくとしている。
今回の取り組みには、スタートまでの間に多くの店舗から声を拾い上げ、その声を反映させていきたいと思っています。重要なことは、罰するよりも改善していただくこと。「安心・安全」の取り組みを行っている「楽天市場」で長く商売できていることそのものが、それぞれの店舗にとってブランディングにつながるようなプラットフォームにしていこうと考えています。(河野上級執行役員)