自社ECサイトを強化するTSI傘下のサンエー・インターナショナル、その施策は?
TSIホールディングス傘下のサンエー・インターナショナルは、実店舗との連携を強化して自社EC売上高を伸ばしている。
店頭からEC送客で成果、雑貨などのネット限定品も好調
同社は、「アドーア」と「ヒューマンウーマン」「ジルスチュアート」「アッシュ・スタンダード」の4ブランドを手がけるが、店舗数や商品の価格帯、認知度などが異なるため、それぞれのブランドに合ったEC強化策に取り組んでいる。
今上期(3~8月期)におけるTSIグループ全体のEC売上高は前年同期比13.9%増の140億円強だが、サンエー・インターナショナルのEC売上高は同30%増と高成長を維持。とくに、EC売上高に占める自社ECの割合が50%超と高く、グループの自社EC売り上げをけん引している。
上期はリアル店舗との連携を強化。店頭スタッフがスマホアプリのダウンロードやEC会員登録を促し、消費者がリアル店舗に来店できないときでもリーチできる層を増やしてEC送客につなげた。
顧客が来店しているときでも、例えば、店頭で欠品している商品があれば自社通販サイトでの購入を薦め、送料分はクーポンで負担できることを伝えて再来店の手間をかけない提案も行う。同社では店舗ごとにクーポンコードを設けているため、クーポンを利用したEC購入については送客した実店舗の評価に反映させることでリアル店舗の協力を得ている。
同施策は実店舗数が約70店舗と多い「ヒューマンウーマン」でとくに実績が大きく、自社EC比率を押し上げているのに加え、実店舗からの送客分が自社EC売上高の2割程度を占めるまでに拡大している。
「ヒューマンウーマン」については、顧客属性から店舗を3つのタイプに分け、タイプ別のMDを組んでいるが、自社ECではすべての商品をそろえているため、「店頭スタッフが自分の店舗にはないアイテムをEC経由で案内することもできる」(倉田亮マーケティング室Webセクションチーフ)とする。
一方、「ジルスチュアート」ではスマホアプリを運用していないため、メルマガ会員の獲得強化に加え、2018年春夏シーズンにはLINE@のアカウントを開設。自社ECで利用できるシークレットクーポンの付与やフラッシュセール直前告知などメルマガやLINE@だけで配信する特典を用意して新客開拓を進めている。
同ブランドは認知度が高く新規流入も多いものの、商品単価が高いため、「サイト訪問者にいかに買ってもらうかが課題」(倉田チーフ)で、コンバージョン率の高いメルマガなどを通じて会員化を図ることで初回購入につなげる。
プロモーション面では、雑誌などでブランドを露出する際はEC別注品やEC先行販売アイテムなども打ち出す戦略が奏功。EC限定品の販売が好調で、とくにネットでも買いやすい雑貨の動きがいいという。
同社によると、EC限定品は好調なものの、通常アイテムの販売は計画に達していなかったという。ただ、6月にバニッシュ・スタンダードが提供する店頭販売員向けのコーディネート画像投稿アプリ「スタッフスタート」を導入。サイト訪問者が参考にできるコーディネートのコンテンツが充実したことで、通常アイテムやアパレル商材の販売比率が高まっているようだ。
販売員のコーデ画像を充実、経由売上6割のブランドも
サンエー・インターナショナルは、店頭販売員が撮影したコーディネート画像を簡単に通販サイトやSNSに投稿できる業務用アプリ「スタッフスタート」を導入し、自社EC売上高の底上げにつなげている。
同アプリはコーデ画像経由で商品が購入された場合、当該コーデを投稿したスタッフが分かるため、評価にも反映できるツールだ。同社では顧客へのウェブアンケートを通じ、サイズ感や着こなしに関するコンテンツの充実を望む声が多く、同ツールであれば販売員が隙間時間にコーデ投稿できるのに加え、スタッフの身長も記載することでリアルな着こなしの参考になることからコンバージョン率の改善も期待できると判断。まずは人気ブランドの「ジルスチュアート」と「ヒューマンウーマン」で同ツールの運用を開始した。
とくに、「ジルスチュアート」の自社ECでは導入初月の2018年6月から売り上げの約50%がショップスタッフのコーデ画像経由となるなど成果がすぐに表れた。同比率は「スタッフスタート」導入サイトの平均値よりも高いようで、同ブランドの場合は外国人が着用モデルを務めていることから、体型が消費者と近い販売員の着こなしを参考にしてもらうためにも同ツールを導入したことが奏功した。
同ブランドでは下期(18年9月~)に入るとコーデ画像の販売が自社EC売上高の60%を占めるまでに拡大。「商品購入に必要な情報として機能している」(倉田亮マーケティング室Webセクションチーフ)という。
「ジルスチュアート」は“高見せ”させたいブランドのため、モデルを起用したコンテンツがトップページの上部に並び、スタッフコーデは最下部に配置しているものの、新着商品を中心にコーデ画像を投稿しているため更新頻度、情報鮮度が高く、PV数はトップページの次に多く、スタッフコーデ画像非経由に比べてコンバージョン率は3~4倍に高まるという。また、新着商品の投稿が多いことからプロパー品にも効果があるとする。
同ブランドでの実績を受け、10月には「アッシュ・スタンダード」に、11月上旬には「アドーア」にも「スタッフスタート」を導入。同社が手がける4ブランドすべてで運用を始めている。
サンエー・インターによると、自社EC売上高が拡大しているものの、実店舗しか利用していない顧客はまだ多く、そのうち、シーズン中に1回しか購入しない消費者の割合も高いことから、店頭スタッフのリアルなコーデ情報は次の購入を促す上でも大事だという。
一方、「アッシュ・スタンダード」では現在、スタッフコーデをトップページの一番上に配置している。16年にスタートし、認知度が他ブランドに比べて低いため、コーデ画像をVMD戦略に則って目立つ位置に掲載するとともに、インフルエンサーの投稿コンテンツもサイト上部で展開することで買い上げにつなげる狙いだ。
ブランドによってコーデ画像の戦略は若干異なるが、各ブランドとも1週間で更新するコーデ投稿数を決め、運用に慣れてきたら対象の店舗数、スタッフ数を増やす形で段階的に導入を進めている。投稿画像のクオリティーを高めるために、慣れたスタッフによる講習会も実施。コーデ投稿を続けることで、店頭に立つスタッフの着こなしの質も上がると見ている。
ただ、ブランド側が良いと思うコーデと、消費者に支持されるコーデが違うケースもあり、各ブランドのMD戦略をベースにしながらも、「コーデ経由売り上げの大きいスタッフが着たいと思うアイテムを増やすこともあっていい」(倉田チーフ)としている。
運用面の課題としては、スタッフが少ない店舗では何人も売り場から離れられないため、コーデ画像をセルフ撮影できる体制を整備する必要があるようだ。
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