ジャパネットの買収提案を受けていたツインバード、TOBへ反対意見を表明。その理由は?
ツインバードが、ジャパネットホールディングスによるTOBに反対意見を表明した。量販店チャネルへの影響やブランド毀損、人材流出、燕三条のものづくり基盤への懸念などを理由に挙げ、シナジーには具体性が乏しいと判断。自社の中期経営計画を進める方が企業価値向上に資すると結論づけた。
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ツインバードは8月31日、ジャパネットホールディングスによるTOB(株式公開買い付け)に対し、反対意見を表明した。ジャパネットが描く販売拡大や共同商品開発のシナジーについて具体性が乏しいと指摘。量販店チャネルの売上毀損(きそん)、既存顧客や人材の離反、地元である新潟・燕三条のモノづくり基盤への影響など、事業面でのディスシナジーが大きいと判断した。
ツインバードは、自社で策定した新中期経営計画を推進することが企業価値と株主共同の利益に資すると結論付けており、ジャパネット側は「今後の当社の対応・見解については、精査・整理のうえで公表する」としている。

合意ないままジャパネットはTOBをプレス発表したと指摘
ジャパネットは6月19日、ツインバードの完全子会社化を目的としたTOBの開始予定を公表した。買付価格は1株800円、買付予定数の上限は設けず、下限は727万800株。ツインバードが賛同しない場合、または10月30日までに意見表明をしない場合には提案を取り下げ、TOBを実施しない方針としていた。
ただ、ツインバードによると、6月19日の公表は両社の合意がないまま行われたという。その後、ツインバードは特別委員会を軸にジャパネットとの質疑や面談を重ね、検討を進めた。最終的に取締役全員一致でTOBへの反対を決議した。ツインバードは判断にあたり、特別委員会で6月3日から8月31日まで計18回に渡って審議を実施。量販店を含む取引先の声の確認に加え、企画・開発、営業、サプライチェーン部門の従業員5人にも個別にヒアリングを行うなど、多面的に影響を検証したとしている。
経緯を巡り、両社の認識の違いも表面化している。ジャパネット側は、ツインバードから「完全子会社化ではなく、3分の1程度の出資にとどめる形での資本業務提携から始めたい」との提案を受けたと公表していた。
これに対しツインバードは、そうした提案をした事実はないと否定している。ツインバードの説明では、2月時点の打診について、具体的な内容が示されなかったこともあり、経営環境などを踏まえて検討する意向はない旨を伝えていたという。
TOB反対の理由①:量販店チャネルで約23億円の売上を失う可能性
ツインバードがTOB反対の理由としてまずあげたのが、量販店チャネルへの影響だ。
ツインバードが取引する主要量販店は10社に満たず、ジャパネットの傘下に入ることで、量販店との取引が停止・縮小するリスクがあるとした。2027年2月期の売上高見込み約33.3億円のうち、失う可能性がある売上高は約23億円。量販店経由の売上高は全体の3分の1程度を占めるといい、5年間累計では87億円規模の売上高を失う可能性があると試算している。
量販店からは実際に懸念の声も寄せられたという。「ツインバードとジャパネットが一緒になるのであれば今後、今まで通りの付き合いは難しくなる」「通常通りに取引を続けていくのは難しくなると思う」「取引条件や販売状況などの情報がジャパネットに流れるようなことがあれば、取引停止という判断になるかもしれない」といったコメントが寄せられたとしている。
ツインバードは、単なる販路減少にとどまらず、競合関係を意識した量販店側の警戒感が表れていると見ている。
TOB反対の理由②:高付加価値ブランドの毀損や顧客離反を懸念
ブランド面での懸念も大きいと指摘している。
ツインバードは「匠プレミアムシリーズ」に代表される高付加価値製品を軸に、デザインや質感にこだわる顧客層を取り込んできた。
一方、ツインバードはジャパネットの事業について、「分かりやすい機能を持つ製品を幅広い層に大量販売するモデル」とみており、両社の訴求方法やターゲット層は大きく異なるとした。
ジャパネット傘下に入ることで高付加価値ブランドとしての認知が薄れ、既存ファンの離反につながる恐れがあるとしている。
TOB反対の理由③:BtoB事業などへの経営資源配分に懸念
経営資源の配分も論点となった。
ツインバードは新中期経営計画で、高収益なBtoB領域へのシフトを成長戦略の柱に据える。独自技術であるヘリウムガスを使った冷却装置を活用した事業やソリューション事業などに、企画・開発・生産リソースを重点配分する方針だ。
これに対しジャパネットは、布団乾燥機、トースター、体組成計などのPB製品化を検討。単価2万円程度のPB商品を年間30万~50万台規模で販売し、将来的にはこうしたコアモデルを5ラインアップ以上に広げる構想を示していた。
ツインバードは、これが実現すれば大規模な設備投資や人員確保が必要になり、限られた経営資源がジャパネット向けのBtoC製品に振り向けられる可能性があると指摘。成長領域であるBtoB事業や高付加価値製品の開発が長期にわたり停滞しかねないと見ている。
ギフトなど既存販路にも影響する可能性
その影響は既存販路にも及び得るとしている。
ジャパネット向け製品の開発・生産が優先された場合、ギフト流通事業者向け製品など、厳格な納期管理や安定供給が求められる既存製品で欠品や納期長期化、取扱商品の縮小が起き、既存販路の売上減少につながる可能性も指摘した。
TOB反対の理由④:人材流出と企業文化への影響
人材面でも懸念を示している。
ツインバードは「多品種小ロット・高付加価値」のものづくりを特徴とし、企画・開発部門の担当者が比較的若い段階から商品企画、設計、開発、市場投入まで一貫して関われる点を企業文化の強みとしてきた。
大量生産型モデルへの転換は、その裁量や仕事の意味合いを大きく変えかねない。ツインバードは、企画・開発人材を中心に離職リスクが高まる可能性があると懸念している。
TOB反対の理由⑤:燕三条のモノづくり基盤への影響
さらにツインバードは、燕三条に根差した地域性が損なわれる恐れも反対理由にあげた。
ツインバードは燕三条発のモノづくり企業として、地域や近隣の新潟県内で約30社の委託先・調達先と長年にわたる信頼関係を築いてきた。
こうした地域サプライチェーンは、単なる調達網ではなく、商品開発力や品質への信頼、人材採用・定着の基盤でもあるという。
PB商品の大量生産・大量販売を前提にした体制へ転換すれば、この地域に根差したサプライチェーンを少なくとも一時的に壊して再構築する必要が生じる可能性がある。地域の職人技術やものづくりの価値を尊重する姿勢への信頼も損なわれる可能性があるとしている。
ジャパネットが示したシナジーは「具体性に乏しい」と指摘
一方、ジャパネットが主張するシナジーについて、ツインバードは実現可能性を裏付ける根拠が不十分だと判断した。
たとえば、ジャパネットは販売チャネルの活用による拡販を掲げていたが、ツインバードによると、近年のジャパネット向け売上高は約2000万円にとどまり、直近は取引実績がない状況という。この実績を踏まえ、チャネル活用によって販売が急拡大すると見込むのは難しいとした。
ジャパネットは8月10日、TOB成立を条件に、「匠プレミアム」全自動コーヒーメーカー10万台、単機能電子レンジ5万台を含む合計約30億円の商品を発注予定と提案したという。
ただ、発注時期や納入時期、継続期間などの条件は明らかでなく、純増効果を客観的に検証することは困難だとツインバードは指摘する。
ウォーターサーバーの製造移管は「構想にとどまる」
既存事業の製造移管でも同様だ。
ジャパネットはウォーターサーバーの製造移管についても示したが、ツインバードによると、対象製品、現物やサンプル、品質基準、数量、価格、納期、販売計画といった前提条件が示されていなかった。さらに、実機を基礎に取引後に再設計する想定だったとしている。そのため、品質、コスト、納期の面から製造可能性を現時点で検証することはできず、将来的な構想の域を出ないとの見方を示した。
物流センターやコールセンター統合にも効果の具体性を欠くと判断
ジャパネットが挙げた物流センター・コールセンターの統合による業務効率化や、非上場化に伴う上場維持コスト、バックオフィス業務負荷の低減についても、ツインバードは一定の効果が生じる可能性自体は否定していない。
ただし、実施方法や時期、必要費用、削減効果などの具体的な前提が示されておらず、具体的な効果の検証は困難とした。
自社の新中期経営計画で企業価値向上をめざす
こうした検討の末、ツインバードはTOBに応じず、自社単独で企業価値向上をめざす道を選んだ。ツインバードは、2026年2月期に2期連続の最終赤字となった状況も踏まえて検討した。そのうえで、TOBに応じるよりも、自社で進める構造改革と中期経営計画の遂行の方が企業価値向上に資すると判断したとしている。
同日公表した「新 中期経営計画 2026-2030」では、「売上偏重でなく高収益事業への転換による利益の最大化」を基本方針に掲げ、2031年2月期に売上高117億円、営業利益14億円、営業利益率12%、ROE13%以上、PBR1倍以上を目標に据えた。
加えて、累進配当を基本としつつ自己株取得も組み合わせ、総還元性向75~100%をめざす積極的な株主還元策も打ち出している。
特別委員会は、この中期経営計画について、策定プロセスや内容に不合理な点はなく、定量面でも企業価値向上の可能性は十分あると判断した。
実際、同社の収益構造改革の成果は出始めており、2026年3-5月期(第1四半期)には第1四半期として5年ぶりの黒字化を達成した。中計を推進する合理性を補強する材料の1つと言えそうだ。
公開買付価格800円の提示は判断材料の1つではあるものの、それだけで本取引が企業価値向上に資すると結論づけることはできない、というのがツインバード側の判断だ。なお、ツインバードは、ジャパネットから買付価格の条件を大幅に引き上げることを検討している旨の書面を受領していた。ただし、引き上げ後の具体的な価格は示されておらず、価格引き上げや企業価値向上効果が裏付けられたとはいえないと判断した。
TOBに向けた経緯
TOBに向けた経緯を振り返ると、ジャパネットは6月19日にツインバードの完全子会社化を目的とするTOB開始予定を公表し、7月9日付で両社は秘密保持確認書を締結して具体協議に入った。ジャパネットは、販売網と顧客基盤、ツインバードの設計・開発・製造技術を組み合わせた「製販垂直統合モデル」の構築を狙っていた。
一方、ツインバードは、期待されるシナジーよりも量販店チャネルへの影響や人材流出、地域のものづくり基盤への影響など、ディスシナジーの方が大きいと判断した形だ。
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