通販新聞[転載元] 3/11 8:30

楽天グループが運営するフリマアプリ「楽天ラクマ」では、リユース事業者などが出店する「ラクマ公式ショップ」の流通額が好調に伸びている。10~12月の流通額は1~3月の約1.5倍に。特にラグジュアリー関連商品が伸びており、10月から配布を始めたラグジュアリーに特化したクーポンも貢献しているようだ。同社のラクマ事業部BtoC&AD事業課の木下春菜シニアマネージャーにラクマ公式ショップの近況を聞いた。

流通額+出店者が伸びている理由

――ラクマ公式ショップの流通額が伸びている。

昨年12月に過去最高となるギネス月商を記録した。試験運用開始から約3年間の積み上げに加え、12月から新しく始めた施策がうまくはまった。また、「安心・安全」をPRできるようなUX調整をしたほか、一般出品者向けにはコメ兵と組んだ「鑑定サービス」も始めた。そういった活動が奏功し、ブランド品を事業者から購入する層と、一般出品者からも抵抗なく購入する層、双方が活性化された。それに加え、越境取引における購入代行事業者経由の流通も毎月伸びていった

プロモーションとマーケティングにも力を入れた。消費者へのインタビューでも分かったことだが、アパレル関連とラグジュアリー関連では、消費者の値引きへの期待もかなり違うし、購買層も若干違う。そこで、ターゲティングとコンセプトとメッセージを分けて企画を充実させたことが奏功した。加えて、年末はクリスマスラッピングの企画や、ラクマ初となる「1店舗でのトップバナージャック」も実施した。バナージャックについては、参加した店舗の流通が相当伸びている。

ラクマ事業部BtoC&AD事業課の木下春菜シニアマネージャー
木下春菜シニアマネージャー

――出店店舗数は。

非公開だが、順調に伸びている。大手はもちろん、中小規模の事業者にも参画してもらっている。

――最近はどういった事業者が出店しているのか。

楽天市場でも活躍している企業の出店が多かったが、直近ではブランド品を取り扱う中小規模事業者からの問い合わせが多く、ECに初挑戦という事業者も少なくない。数年前と比べても裾野が広がっていることを実感する。

――そういった事業者はなぜラクマを選ぶのか。

「ラクマはブランド品が強いと聞いて出店したいと思った」という声を良く聞く。店舗からも、競合と比べて30万円以上の高価格帯商品の動きが良いと評価されている。リユース事業者は横のつながりが強いので、くちコミで広まっているようだ。

――ラクマで高価格帯商品が売れる理由は。

ラクマと事業者が原始を負担するクーポンによる押し上げ効果もあるが、通常時でもラグジュアリーは非常に売れている。これだけ物価高になると、一次流通ではなかなか買えないブランド品などを二次流通で買い求める消費者が増えている。また、円安の影響もあり越境経由の受注も多い。

リユース品を入り口としてブランド品の世界に入る若年層が目立つ。また、ルイ・ヴィトンなどは、二次流通で購入してもブランド価値が下がりにくいこともあり、資産価値を意識する消費者も増えているようだ。ラクマでいうと「オールドグッチ」や「ヴィンテージシャネル」といった検索ワードが非常に増えており、そういった消費者が流入してきていることが分かる。ラクマでは、そうしたラグジュアリーが得意な事業者を集めてセール企画を実施しているというところも相まって、高価格帯商品が売れているのではないか

――セールを定期的に実施している。

ラグジュアリーのクーポン企画を月1回は実施するようにしている。クーポンは平常時は7%割引だが、昨年12月は10%割引企画を行った。

9月から楽天の買い回り対象に

――昨年9月からは、ラクマでの買い物が「楽天スーパーセール」や「お買い物マラソン」の買い回り対象となった。

MAU(月あたりのアクティブユーザー数)が顕著に伸びている。エンタメ・ホビー関連の店舗が扱う書籍やトレーディングカードとの相性が良い。ラクマにおける期間中の合計購入金額が1000円以上であれば、セール中の合計購入金額におけるポイント倍率がプラス1となるので、低単価商材が売れやすい。また、楽天市場と違って「送料込みライン」となる3980円も関係ないところがユーザーに支持されているのではないか。

少数精鋭での店舗サポート

――店舗へのサポート体制は。

楽天市場の強みでもあるコンサルタント体制の良い部分と、消費者に対応するカスタマーサポート体制の良い部分をハイブリッドしている。楽天市場に比べると運営人員が少ないが、コンサルタントも営業マンも、消費者インタビューを担当している。また、公式ショップ専属のマーケターが事業者に対応したり、開発プロデューサーやエンジニアが、事業者とZOOMで会話しながら、新機能に関する意見を聞いたりしている。例えば、営業は店舗の方ばかり向いて仕事をしがちだが、消費者の声も聞くことで、それを店舗へフィードバックすることができる。役職を超えて事業者・消費者双方に向き合う体制を敷くことで、営業・開発トータルで事業者をサポートしている。

特に重視しているのは出品部分。多くの事業者は他モール展開をしているし、全国に実店舗を出店している企業も珍しくない。ECにおける新品の商流よりも在庫管理と出品管理が複雑なので、そこはプラットフォーマーとして支えなければいけない。事業者の要望、システムベンダーの要望、双方を聞いた上でラクマとしてのスタンスを決めて開発している。

――事業者にはどんなアドバイスをしているのか。

コメント欄を使ってほしいという提案や、商品説明文を仮想モールと同一ではなく、フリマらしい書き方にしてほしいといった提案をしている。例えばハッシュタグを活用したり、「この商品はこんなアイテムと合いますよ」といった定性的なコメントをしたり、といったものだ。

――ラクマのコンサルタントは楽天市場のECコンサルタント出身が多いのか。

半々くらいだ。

楽天市場との住み分けは?

――楽天市場とラクマ双方に出店している事業者も少なくないと思うが、住み分けはできているのか。

ラクマは楽天市場に比べてメイン顧客の年齢層が低く、リユース品に対する抵抗感が少ない。また「欲しいものがあるときはまずは中古で探す」というユーザーを抱えている。さらには個人からも法人からも買えるという点も大きなベネフィットだ。事業者からも「楽天市場とは顧客層が全然違うし、売れる商品も違う」という声をもらうことが多い。リユース企業にとっては、どちらにも出店するメリットはあるのではないか。

期待値の高いジュエリー系、今後の展望と目標は?

――今後伸びそうな分野はあるか。

ジュエリー系の商材が伸びはじめている。特にダイヤモンドは、鉱山の閉鎖で供給が減少するとみられているので、消費者が関心を持ちはじめているのではないか。アクセサリー関連では、新品仕上げに対応した事業者のビュー数が伸びている。新品仕上げは一般出品者にはできないことなので、事業者にアドバンテージがあるのではないか。

今回の「ラクマショップ・オブ・ザ・イヤー」においても、新品仕上げや商品の状態に関する説明を丁寧にしている事業者が受賞したという印象がある。在庫数の多さや運営規模の大きさ以外の部分で勝負できるという点で、面白いカテゴリーだと思う。

――事業者からは機能改善に関してどんな要望が出ているか。

出品・取引周りに関する要望が多い。中古は一品ものなので、他モールと在庫を共通化している関係上、欠品が大きな課題となっている。ラクマのシステムAPI改善はもちろん、ベンダーと協議しなければいけない部分もある。

――今後の取り組みや目標は。

集客力を高めるために、公式ショップのSNS開設を準備している。マーケティングの観点では、これまでは運営側主体のクーポン施策がほとんどだったので、店舗が企画・実施できるような機能も準備している。公式ショップの商品だけではなく、一般出品者の商品も含めて、ブランド品とアパレルを安心して買ってもらえるプラットフォームにするため、日々進化させていきたい。

※記事内容は紙面掲載時の情報です。
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