楽天ラクマの責任者らが語るビンテージ品とフリマアプリの市場動向とは
楽天グループのフリマアプリ「楽天ラクマ」は2024年10月、横浜市で開催されたビンテージ関連のイベントに、「ラクマ公式ショップ」に出店するリユース事業者の商品を販売するブースを出展。ビンテージファンの来場者にアプリの存在をアピールした。ECやフリマアプリにおけるビンテージ品の動向に関して、コマース&マーケティングカンパニーラクマ事業部の長谷川健一朗ゼネラルマネージャーと、イベントを主催したVCMの十倍直昭代表取締役に聞いた。
ビンテージ品のネット売買、コロナ禍を機にハードルがダウン
ビンテージ100店舗以上が集まるECを立ち上げ
――十倍氏は2021年にビンテージのECプラットフォームとして「VCM」を立ち上げた。
十倍直昭代表取締役(以下、十倍):もともと2008年よりビンテージショップを経営していたが、コロナ禍もありVCMを立ち上げた。以前のビンテージ業界は大きなコミュニティーがなかった。フリーマーケットは開催されていても古着屋はあまり参加しておらず、もっとビンテージを扱う古着屋が出店したいと思えるイベントやプラットフォームを作らなければいけないと思い、ECからスタートした。
ビンテージはネットだけだと風合いやサイズ感がわかりにくいので、実店舗の方が強かったわけだが、外出できない状況だったので、皆がECに注力しはじめた。こうしたなかで、当社は100店舗以上のビンテージ店が参加するECモールを立ち上げることができた。
また、バイヤーもコロナ禍で海外へ買い付けにいけなくなったため、ディーラーとネットでつながって写真を見て買い付けをするようになった。コロナ禍は消費者の行動を変えただけではなく、業界の慣習も変えた。そういったこともあり、ネットでビンテージ品を売り買いすることへの抵抗がなくなった。ただ、私としては、当時からECの先にリアルイベントが視野に入っていた。
ビンテージのリアルイベントを開催
――そこから、ビンテージの祭典「VCM VINTAGE MARKET」開催につながったわけだ。
十倍:アメリカには「ローズボール・フリーマーケット」という、大規模なビンテージイベントがあるが、その日本版を作りたいというのが動機。そこにたどりつくためにECを始めたわけだ。
ビンテージの価格高騰進む
――ビンテージブームで商品の価格も高騰している。いつまで続くのか。
十倍:昔は「新しい洋服を作ろう」という動きが多かったが、最近は「昔のモデルを復刻しよう」というブランドばかり。洋服においてビンテージ要素は無視できない時代であり、一つのファッションジャンルになった。ブームで終わることはなく、ビンテージが好きな人は永遠に好きなので、買い手がいて供給できる商品が少ないという状況を踏まえると、人気が落ちることはないのではないか。少し前は「1000万円のデニムなんて売れないよ」と言っていたのに、今は3000万円になっている。日常着というよりは、アートに近い形で取引されているように思う。
ラクマでも取引価格アップ+購入者の男性比率が急増
購入者の男性比率は42%に向上
――ラクマにおいては、中古事業者や並行輸入事業者が出店する「ラクマ公式ショップ」を中心に、ビンテージ品の取り扱いが増えている。
長谷川: Tシャツが顕著だが、ビンテージ品の取引価格は大きく値上がりしている。Tシャツにこんな値段がつくとは想像もしなかったが、高い値段でも売れるからすごい。ラクマ公式ショップにおいては、アクセサリーの売り上げが前年比40%増、「ビンテージ」や「オールド◯◯」とついた商品も同20%増というところだ。
また、ラクマの流通額は約50%がファッションで、女性の利用が多かったわけだが、ビンテージ品は男性が中心のため、男性の比率が急増している。昨年は男性が34%だったが、今年は42%まで増加した。やはり、男性の伸びを下支えしているのはビンテージブームではないか。
――いつ頃からビンテージ品がラクマで目立ってきたのか。
長谷川:ここ1、2年ではないか。ブランド品のリユース品をポジティブに捉える動きも強まっている。「このブランドが好きになったから、現行にはないアーカイブ品をラクマで買う」という消費者も増えているようだ。ラグジュアリーのバイヤーがビンテージに目を向けることで、両者をミックスして着用する消費者も増えているのではないか。
ラクマの強みは「母体がフリマアプリ」「真贋を判定サービス」
――ビンテージ品を販売するフリマアプリとして、ラクマの強みとは。
長谷川:一つは、リユースファッションに特化しており、そういった事業者が集まっていること。もう一つは、毎月1~7日に「ラクマブランドウィーク」を開催しており、クーポンを配布したり楽天ポイントの付与率を高めたりしていることだ。
また、「フリル」というレディースファッション中心のフリマアプリが母体という点と、購入した商品到着前に真贋を判定する「ラクマ最強鑑定」を導入した点も強みになるのではないか。
VCM主催の展示会にラクマが出店。満足度の高いブースとして成功
――強みを生かすべく「VCM」のスポンサーとなった。
十倍:今までのスポンサー企業のなかでも、一番ブースが盛り上がったのではないか。Tシャツやブランド品が違和感なく展示されており、ラクマが取り組んでいることが体現されていた。来場者も、ブースを一つのショップとして捉えて満足度も高かったのではないか。
長谷川:カップルの来場者も多いので、女性も楽しめる空間を意識したことが良かった。
――スポンサーになったきっかけは。
長谷川:6月に東京・表参道で「ラクマ公式ショップ」出店事業者が出品するラグジュアリーブランドの名品を集めたリユース品展示会を開催したが、そこに十倍氏が来場したのがきっかけ。以前から気になっていたイベントなので、トントン拍子で話が進んだ。
――出展の成果は。
長谷川:オンラインで多くの流通額がある事業者にとって、リアルイベントは、投資対効果でいうとそこまで高くない、というのが一般的だが、「VCM」は非常に濃い、優良顧客が多いので、直接話を聞けたことが大きかった。
ラクマを知っているユーザーは非常に多かったが、「公式ショップ」という形でビンテージ品が買えることを知らないユーザーが多かったので、それを周知できたことも良かった。単価についても、2万5000円程度を予想していたが、5万5000円だった。
十倍:ラクマは他のフリマアプリに比べて、ファッションに強いということもあって、商品の編集がおしゃれ。当社としても「ビンテージを買うならラクマ」と、ビンテージファンに対して促せるようにしていきたい。実際のところ、ラクマの流通規模を考えたらリアルイベントの売り上げは小さい。ラクマは、ネットでビンテージを買う人たちへのブランディングの部分で当社に期待してくれているはずなので、きっかけが作れれば。
初心者がビンテージに挑戦しやすくしたい
――ビンテージ市場は広がりを見せている。
十倍:「良くわからないけどビンテージ品が人気らしい」「そんな高くないやつでいいけどビンテージデニム買ってみようかな」というマス層が増えていると思う。なので、マニアに特化しすぎるのではなく、ラクマで「初めてビンテージ品を買うならこれ!」といった、ビンテージ初心者の基本を作りたい。
――「ビンテージは難しそう」というイメージを持つ消費者は少なくないのではないか。
十倍:確かに「知識がないから何を買えばいいかわからない」という人は多い。当社は「全身ビンテージ」にしてほしいとは思っていない、たとえば、記念日なら5万円や10万円のワインを買うかもしれないが、日常使いではもっと安いワインを飲むわけで、「高いものなら何でもいい」というような考えはない。たとえばデニムなら、気軽に買える2000年初頭のものからはじめて、好きになったらもっと高いものを買えばいい。
十倍:少しずつビンテージを楽しんでもらえばいいし、どっぷりはまったらもっと良いものを買う、というようになれば、ビンテージショップも高級品だけを揃えずに済む。ラクマには「ビンテージに挑戦しよう」という消費者に対し、ハードルを下げるような存在になってほしい。
付加価値は「誰から」「どこで」買うか
――ECやフリマアプリにおいてビンテージ品がもっと売られるようになりそうだ。
十倍:特に最近はECへの抵抗が減っているので、ビンテージはネットで売買されていることがもっと増えていく。ただ「誰から買うか、どこで買うか」が付加価値になるはずだ。「ラクマだったら安心してビンテージ買えるよね」「ラクマで買えば満足できる」となるように、当社の力もお貸ししたい。ラクマならそういった共通認識が作れるのではないか。
長谷川:「楽天市場」で高級バッグを買うようなユーザーが、当該ブランドの過去のバッグをラクマで購入する、という流れが加速できるのではないか。それとは別に、もっと若い人たちがビンテージ品を気軽に買えるような仕組みも作れれば良いと思う。
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