
AI検索エンジン「Perplexity」が搭載したEC機能とは? AI検索+ショッピング機能で変わる顧客体験

AIを活用した検索エンジンを展開するPerplexityは、EC事業者などが出品する商品を消費者が「Perplexity」内でチェックアウトまで完了できるようにする目的で、Firmly社と協業しています。Amazonなどさまざまな大手企業がAIを活用したツールを提供し続けているなか、Perplexityは販売事業者の事業規模を問わずエンドユーザーの利便性をアップさせるため、「Perplexity」にチェックアウト機能を搭載しました。
I検索エンジンン「Perplexity」、EC向けに利便性アップ
AIを活用した検索エンジン「Perplexity」を開発したPerplexityは、ECに関連する取り組みを強化しています。

Firmlyとの提携でチェックアウト機能を搭載
Perplexityは2025年3月、米国・シアトルを拠点とするスタートアップ企業Firmlyとの新たな提携を発表。「Perplexity」のインターフェース内で消費者が直接チェックアウトできるようにしました。FirmlyはAI商品検索やチェックアウト機能などのソリューション「Firmly.ai」を提供する企業です。


提携の目的は、消費者が「Perplexity」の検索結果から直接買い物をできるようにし、あらゆる事業規模の販売事業者が簡単に「Perplexity」を活用できるようにすることです。
Firmlyとの提携により、販売事業者は「Perplexity」をビジネスに活用しやすくなります。また、より多くの消費者が「Perplexity」内で検索結果から購買行動へとスムーズに移れることで、Perplexityの事業を成長させることにつながります。(Perplexity チーフビジネスオフィサー ドミトリー・シェヴェレンコ氏)
ショッピング関連の検索クエリは5倍に増加
今回の提携は、2024年11月に「Perplexity」の有料プラン「Buy with Pro」の利用ユーザーを対象にショッピング機能の提供を始めたPerplexityの、EC向けの次のアクションです。
Firmlyとの新たな提携により、ショッピング機能の利用者は「Perplexity」のプラットフォーム内で商品を直接購入できるようになりました。Perplexityによると、Firmlyとの提携以来、「Perplexity」でのショッピング関連のクエリは5倍に増加しています。

「Perplexity」販売事業者は潜在顧客へのアプローチが可能に
多くの小売事業者が、AIを取り入れて、消費者が買い物する際の利便性アップを図っています。そんななか、PerplexityとFirmlyの提携は、どのような事業規模の販売事業者でも、比較的簡単に消費者の利便性アップに関する市場競争に食い込める環境を整えました。
Perplexityによると、Firmlyのソリューションであるエージェントコマース技術を組み込むことで、消費者は商品検索からチェックアウトまでの一貫したショッピング体験を「Perplexity」のインターフェース内で直接完了できるようにしました。
消費者は「Perplexity」の検索プラットフォームから移動せずに買い物できます。「Perplexity」を活用する販売事業者にとっての魅力は、自社が取り扱う販売の主導権をPerplexityに譲ることなく、新しい客層にリーチできることです。
Perplexityはニュースリリースで、「『Perplexity』に商品を出品することで、販売事業者はブランドの価値を守りながら、数百万の潜在的な顧客にアプローチできます」と説明しています。
Perplexityの広告およびコマース責任者であるタズ・パテル氏は、米国のEC専門誌『Digital Commerce 360』からのメール取材で次のように答えています。
有料プラン「Buy with Pro」の提供以降、「Perplexity」ではショッピング意図のある検索クエリが5倍に増加しました。エンドユーザーは、家電製品、コンピューターなど、購入をより慎重に検討する商品を検索するために「Perplexity」を利用しています。(パテル氏)
売り上げに対する手数料なし
Perplexityによると、今回のPerplexityとの提携により、販売事業者は単一のAPIを通じて「Perplexity」のマーケットプレイスに参加できます。
さらに、Perplexityは、現時点では販売事業者から今回の新機能に関する手数料を徴収しない方針です。
Firmlyの共同創業者兼CEOであるクマール・センティル氏は、『Digital Commerce 360』からのメール取材に対し、次のように回答しています。
販売事業者が「Perplexity」で自社の商品を売り始める際、販売事業者はこれまで通りのアクションで良く、新たなテクノロジーの搭載・導入といった特別な準備は一切不要です。これは、販売事業者にとって最もメリットのある仕組みです。なぜなら、「Perplexity」で売れた商品の売り上げはすべて、販売事業者のものになるからです。(センティル氏)
センティル氏は「目標はファネル全体で摩擦を減らすこと」だと付け加えています。 センティル氏はニュースリリースで「Firmlyのネイティブチェックアウト技術とPerplexityのAI検索技術を組み合わせることで生まれるメリットは、エンドユーザーのショッピングのプロセスを簡単にするだけではありません。「Perplexity」を利用する販売事業者は、他サイトとの統合の手間なしで「Perplexity」上の新たな顧客にリーチできるようにします」と説明しています。
大手プラットフォーマーによるAI活用の取り組み
検索を売り上げにつなげる取り組みに注力する「Perplexity」
Perplexityが今回搭載したショッピング機能は、Perplexityが販売事業者向けに、2024年後半に提供を開始した「Perplexity」の広告サービスとは異なります。
しかし、どちらも、コマースを通じてエンドユーザーの検索から売り上げにつなげるという観点では同じです。
Perplexityは2022年の設立。創業者は、「ChatGPT」のOpenAI、生成AIプラットフォームの「Poe」の開発・成長に力を入れているQuora、検索エンジンにチャット機能を組み込んだチャットAIサービス「Bing」を提供するマイクロソフトなどの主要テクノロジー企業の元幹部などです。「Perplexity」は現在、週に1億2500万件以上の質問に回答しているそうです。現在、Perplexityはそのトラフィックを、購入と支払いを処理するトランザクションに転換しようとしています。
消費者がインターネットで商品を探す場合、長らくの間、AmazonとGoogleが検索プラットフォームの中心に君臨してきました。「Perplexity」がエンドユーザーを、実際にお金を払ってくれる購入者にできるかは、まだはっきりとは断言できません。
Amazonによる近年のAI活用
Amazonは、AIへの取り組みを拡大し続けています。Amazonは2025年3月に、「Amazon Interests」と呼ばれる、AIの新サービスの提供を開始しました。「Amazon Interests」は消費者の入力したプロンプトに基づいて入手可能な関連商品、再入荷、セールに関する情報などを積極的に通知する機能を搭載しています。

これは、消費者向けに商品の情報や比較検討などをサポートする生成AIアシスタント「Amazon Rufus」や、Amazonマーケットプレイスの販売事業者がビジネスを管理・拡大するのを支援するように設計した生成AIアシスタント「Project Amelia」など、従前から取り組んできたAI展開に続くものです。
Amazonはまた、生成AIを組み込んだ音声アシスタント「Alexa」のアップグレード版「Alexa+」の展開を予定しており、提供する際はEC機能が搭載される予定です。Amazonは「Alexa+」を2月26日に発表しており、米国でβ版の提供を開始。その後数か月にわたって段階的に展開していく段取りとしています。
