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EC×AIの新潮流、Google検索に代わる新たな検索スタイルとは? AI時代のユーザー行動+エージェントコマースの取り組みまとめ

検索の場がGoogleではなくSNSに移りつつあるZ世代。この世代は、生成AIの活用が進んでいることも特長です。大手IT各社は消費者の検索や買い物をAIでサポートするサービスの提供を本格化しています

Digital Commerce 360[転載元]

5月29日 8:00

大手IT企業のGoogle、Perplexity、OpenAIからのエージェントコマースに関する発表は、AI検索クエリがどのように進化するのかを示唆しています。検索の場が、SNSに変化しつつある若い世代のユーザー行動にも触れつつ、さまざまなチャネルでの各社のAI活用の取り組みに注目してみました。

検索の“場”の変化

Z世代のような若い世代では検索の仕方が変化しています。その新たな検索方法を見ると、Google、Amazon、「ChatGPT」のOpenAI、AI系スタートアップのPerplexityといった大手IT企業が、ユーザーが検索したり商品を探したりする際にAIが中心的な役割を果たす時代のために、なぜ「エージェントコマース」の計画を進めているのかがよくわかります。

これらのIT企業はすべて、ユーザーが商品を調べるところから、実際に購入するまでの全プロセスに関わりを持ちたいと考えています。

「ChatGPT」のWebサイト月次訪問数(単位:10億。出典:Similarweb)
「ChatGPT」のWebサイト月次訪問数(単位:10億。出典:Similarweb)

Z世代で進むソーシャルメディア検索+生成AI活用

1997年から2006年生まれのZ世代の多くは、従前の検索エンジンからソーシャルメディアへと情報収集の場を移しています。経済メディア運営のForbesの2024年の調査では、Z世代の46%がGoogleではなくソーシャルメディアで検索を始めていることがわかりました。

また、米小売大手Walmartの民間財団Walton Family Foundationと、米ベンチャーキャピタルGSV Venturesが発表した2025年4月のレポートでは、Z世代の47%が毎週のように生成AIを使っていることが示されています。

このような変化は、今後のEC、そしてEC小売業者やそのプラットフォームに大きな影響を与えるでしょう。

AIがユーザーの買い物の決済まで一貫サポート

Googleは、米国で5月20日(現地時間)に実施した年次開発者会議「I/O開発者会議」で、質問に対して生成AIが文章などで回答するサービス「AIモード」とともに、自社のAIショッピングのビジョンを共有しました。

「AIモード」は、同社の検索体験をOpenAIの「ChatGPT」や、Perplexityが開発・提供しているAI搭載検索エンジン「Perplexity」に類似したチャットボット形式のツールです。

対話型の新たな検索モード「AIモード」でも新たなショッピング体験を提供する(動画は編集部がGoogleのブログから追加)

特筆すべきは、Googleが価格、ユースケース、その他の要因といった追加のコンテキストが検索結果にどのように影響するかを示すだけでなく、AIエージェントによる決済ソリューションも付随させていることです。AIエージェントは、ユーザーに与えられた権限に基づいて購入を実行できる、消費者の自律的なアシスタントとして機能するように設計されています。

Perplexityは先日、PayPalの決済サービスを米国で2025年夏頃から「Perplexity Pro」(「Perplexity」の有料版サービス)ユーザー向けに使えるようにすると発表し、「エージェントコマース」への取り組みをさらに拡大しました。これにより「Perplexity」の検索エンジンは、検索した結果からそのまま買い物ができるように道筋を付けました。

この発表は、Firmlyが提供するAI商品検索やチェックアウト機能などのソリューション「Firmly.ai」の技術をPerplexityが使い、検索結果から直接商品を購入できる「ネイティブチェックアウト」機能を追加したことに続く仕組みです。

OpenAIも以前から、ECプラットフォーム運営事業者のeBayやEtsyと提携しています。OpenAIは、「ChatGPT」を運営するOpenAIが開発した独自のAIアシスタント「Operator」をこれらのサイトで使っています。

「Operator」がユーザーと対話しながら、仮想Webブラウザ上でフォームに入力したりメニューを操作したりする(画像はOpenAIのコーポレートサイトから編集部がキャプチャ)
「Operator」がユーザーと対話しながら、仮想Webブラウザ上でフォームに入力したりメニューを操作したりする(画像はOpenAIのコーポレートサイトから編集部がキャプチャ)

Amazonにおけるエージェントコマースの取り組み

Amazonも「エージェントコマース」の活用に積極的で、AIアシスタントの技術を「Buy for Me」というショッピングツールに組み込んでいます。「Buy for Me」は、AIエージェントによって消費者がAmazonのサイト内で他社のECサイトから直接商品を購入できるようにするツールです。

AmazonのAIショッピングツール「Buy for Me」の利用イメージ(画像はAmazonのニュースリリースから追加)
AmazonのAIショッピングツール「Buy for Me」の利用イメージ(画像はAmazonのニュースリリースから追加)

どのIT企業も、消費者によるオンラインショッピングの方法は、新たな行動様式やニーズに合わせて変化していると考えています。

AIを活用した検索がもたらす変化

OpenAIの「ChatGPT」、Anthropicの自然言語対話型AI「Claude」、Googleの「Gemini」といった大規模言語モデル(LLM)の利用者は、会話形式でのやり取りに慣れています。これらは、EC企業やその他のWebサイト運営者向けに長年、キーワードを重視した検索エンジン最適化(SEO)戦略を定義してきたような短い単語やフレーズよりも、はるかに細かなニュアンスを含む言葉で会話(AIチャット)ができます。

PayPalほか大手グローバル各社のAI活用

PayPalのアレックス・クリス社長兼CEOは、PayPalのPerplexityとの提携を詳細に説明する際に「ユーザーはふと思いついた時に、チャットのなかで直接、簡単かつ安全にオンラインショッピングができるようになります」と解説しました。「これは、会話しながら買い物をする『会話型コマース』を現実にするための大きな一歩です」(クリス氏)

もちろん、AIを活用した検索自体は新しい考え方ではありません。多くの事業者が何年もの間、生成AIを活用し、より1人ひとりに合った検索結果を表示できるようにしてきました。

たとえば、家具・家庭用品ECのWayfairは2025年2月に、新たなツール「Muse」を発表しています。「Muse」は人工知能を活用し、パーソナライズされた商品提案を提供するツールです。また、米国のアパレルメーカーVictoria’s Secret、「Levi's」を運営するLevi Strauss&Co.といったGoogle Cloudの利用企業も、自社ECサイトやアプリでの結果改善のために生成AIを利用しています。

Wayfairが提供するツール「Muse」による検索結果の一例(画像は米国のEC専門誌『DigitalCommerce360』から追加)
Wayfairが提供するツール「Muse」による検索結果の一例(画像は米国のEC専門誌『DigitalCommerce360』から追加)

最近では、価格を比較できるサービスを提供するスタートアップPhia、ReFiBuyなどが新たに参入し、AIによってより効率的で改善された商品発見プロセスをユーザーに提供する“仲介役”のような企業になることをめざしています。

Googleの検索シェアは緩やかに下降傾向

Googleは、歴史的に検索分野で圧倒的な地位を築いてきましたが(そして、その優位性は今も変わりませんが)、今はその立場が競合他社に揺るがされないように守らなければなりません。

Web分析サービスを提供するStatcounterのデータによると、Alphabet傘下のGoogleの検索エンジンのシェアは、2023年2月は93.4%でしたが、2025年4月には89.7%にまで低下しました。

グローバルの検索エンジンシェア。Googleのシェアは緩やかに減少している(画像はStatCounter社のサイトから追加)
グローバルの検索エンジンシェア。Googleのシェアは緩やかに減少している(画像はStatCounter社のサイトから追加)

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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