
ECの商品説明は「見る」→「聴く」時代へ? Amazonが始めた「AI音声要約」とは
Amazonが新たに運用を開始した約2分間のAI(人工知能)音声による商品紹介は、会話形式でユーザーに詳細を伝えることができます。何かをしながらのオンラインショッピング、アクセシビリティ対応の観点からもユーザーの利便性アップに貢献するでしょう。Amazonによる従前のAIサービスの解説を交えながら、新サービスの特長を解説します
AmazonのAIによる商品詳細の音声要約
AmazonはAIを使って、商品の詳細や顧客レビューを短くまとめたポッドキャスト風の音声クリップの表示をモバイルアプリで試験運用しています。

Amazonによるとこの機能は現在、米国の限られたユーザーが利用できます。音声クリップにより、ユーザーは従前のように長い商品説明をスクロールして読む必要がなく、重要な情報を素早く理解できるように設計されています。
“2人”の合成音声が商品を紹介
この新機能はAmazonの商品カタログ、レビュー、その他のWebソースから情報を収集します。そして、大規模言語モデル(LLM)を使ってスクリプトを生成。「AIショッピングエキスパート」と呼ばれる合成音声によって読み上げられます。この音声クリップは、実際の会話を真似るように設計されており、表示時間は通常約2分間です。
Amazonの新しい音声要約は、AIが生成したものであることを示す免責事項の表示から始まり、生成AIによって合成された「2人」の「ホスト」による気軽な会話が続きます。Amazonの検索および会話型ショッピング担当バイスプレジデントであるラジブ・メータ氏はニュースリリースで次のように説明しています。
この機能は、商品検索を楽しく便利にしてくれます。利用するユーザーは、自分の買い物についてまるで友達が話し合ってくれているように感じるでしょう。何かをしながらでも、外出先でも利用できます。(メータ氏)
対象商品の画像の下に「ハイライトを聞く」ボタンが表示され、ユーザーはそれをタップして聞くことができます。Amazonによると、このツールは現在、購入前にじっくりと検討する必要がある商品でテストしているとのことですが、具体的な例は示されていません。

Webアクセシビリティ、ながら動作に適応
注目すべきはAmazonがこの機能を、視覚、聴覚、認知機能などさまざまな制約を持つユーザーに配慮した「アクセシビリティツール」として位置付けていないことです。
しかし、この音声形式は視覚に障がいのある消費者、目で見るよりも耳から学ぶことを好む人に役立つ可能性があります。広告代理店NivoAdsの創業者であるヤシン・エルカルムディ氏はLinkedInの投稿で、このツールは「マルチタスクを行う『ながら族』の人、聴覚学習者、そして長文のテキストを読み飛ばすのにうんざりしているすべての人」にとって役立つと指摘しています。
AI音声要約の提供拡大を計画
エルカルムディ氏はまた、販売事業者に対し、大規模言語モデルが商品コンテンツをより良く解釈できるように、商品リストのバックアップとSEOを調整するよう提案しています。「アルゴリズムは進化していますから、販売事業者も同様に進化しなければいけません」(エルカルムディ氏)
Amazonは、このツールを動かすLLMを明かしていません。スクリプトが生成され、その後、合成音声によってナレーションされる短編の音声クリップに変換されます。Amazonは今後数か月以内に、より多くの米国の消費者と商品にこの機能を展開する計画だと発表しています。
Amazonによる生成AI活用ツールの変遷
この音声機能は、Amazonがユーザーの購入体験にAIを組み込む取り組みの一環です。
Amazonは2025年3月、「Amazon Interests」というAI搭載ツールを立ち上げました。これは、個々の消費者の好みに合わせて商品を表示するツールです。

この機能は、マーケットプレイスの販売者向けのAmazonの生成AIアシスタントである「Project Amelia」など、既存のAIツールに基づいて構築しています。
メータ氏が強調したその他のAmazonのAIツールには次のようなものがあります。
- 「Amazon Rufus」: 消費者の質問に答え、商品の情報や比較検討などをサポートする生成AIアシスタント
- 「AI Shopping Guides」: ショッピングのガイダンスと、ユーザーの好みに基づいて商品のおすすめをまとめる商品発見ツール
- 「Review Highlights」: 顧客のレビューから、レビューを書いたユーザーの考えを素早く読み取り、その要点をまとめるツール
2025年の初めには、「Buy for Me」の試験運用も開始しました。これは、消費者がAmazonアプリを離れることなく、サードパーティブランドのECサイトから購入を完了できる、エージェントAIを活用したチェックアウトツールです。

Amazonによると、「Buy for Me」は、人間による操作を最小限に抑えて購入プロセスの一部を実行できます。これは「エージェントコマース」として知られるプロセスであり、商品発見からチェックアウトまでのショッピング体験を自動化するために、テクノロジー企業やEC小売事業者が次々と取り入れています。
大手小売・IT各社が生成AIの活用に注力
Amazonは、AIへの取り組みを加速している小売事業者の一つです。2025年5月に開催されたGoogleの年次開発者会議「Google I/O 2025」で、Googleは質問に対して生成AIが文章などで回答する新サービス「AIモード」、エージェントチェックアウト向けの機能、および仮想試着室の最新状況を説明しました。
米国の大手ホームセンターHome Depotも生成AIを活用した取り組みを進めています。商品担当エグゼクティブバイスプレジデントであるビリー・バステック氏によると、同社では、生成AIアシスタント「Magic Apron」が顧客エンゲージメントとオンラインコンバージョンを向上させています。このツールは、商品レビューを要約したり、住宅改修製品に関する質問に答えたりできます。
