Digital Commerce 360[転載元] 6/12 8:00

米国小売大手のWalmartは、販売業務、商品開発、カスタマーサービスなどさまざまな業務分野で、AIエージェントの活用を進めています。

Walmartが推進するAI活用

AIエージェントは、カスタマーサービスの自動化から、買い物の全プロセスをAIが支援するエージェントコマースまで、幅広い目的で多くの小売事業者が取り入れています

米国アーカンソー州ベントンビルに本社を置くWalmart(米国のEC専門誌『Digital Commerce 360』によると、2025年のWalmartのオンライン売上高は1538億8000万ドルに達すると予測)も例外ではありません。Walmartは、従業員や顧客に代わってタスクを自動化し実行する能力を持つAIソリューションの導入へ積極的に取り組んでいます

Walmartは複数の分野でAIエージェントの活用を探っています。最高技術責任者は、今後AIエージェントを成功裏に活用するためにWalmartが何をすべきかについて、いくつかの案を模索。目標を実現するため、Walmartは顧客や消費者からの特定のニーズを捉えつつ、自社データで新しいツールの開発を加速しています。

これまで、WalmartのAIエージェントへの取り組みは、社内向けのツールやカスタマーサポートなどの分野でした。ハリ・ヴァスデフ最高技術責任者は5月29日に配信したニュースリリースで、WalmartのAIエージェント戦略をどのように描いているのか説明しました。

初期に広い範囲で実施したテストで、最も効果的なAIエージェントの活用法は特定の作業に割り当てることだとわかりました。 たとえば、AIエージェントによる1つひとつの作業をつなぎ合わせることで、複雑な一連の仕事をスムーズに進めたり、問題を解決できます。そのため、さまざまな目的ごとに適したAIを導入している他の会社とは異なり、Walmartは自社固有の課題解決やニーズを満たすことへ徹底的に集中できるのです。(ヴァスデフ氏)

社内のオペレーション効率化、顧客向けのサービス向上まで広く探求

ヴァスデフ氏は、WalmartがAIエージェントの導入が進んでいる分野や、達成しようとしていることを次のように説明しています。

AIエージェントの活用は、データ入力や分析といった、時間のかかるさまざまなタスクを自動化する販売業務ツールから、Walmartのアパレル商品の開発期間を従前と比較して最大18週間短縮するAIソリューション「Trend-to-Product」までさまざまです。店舗での従業員のタスク、EC利用者の購入体験向上、商品計画など、エコシステム全体での活動をさらに最適化するために、AIを用いたエージェントシステムを探求しています。(ヴァスデフ氏)

Walmartは、AIを活用してトレンドになり得そうなプロダクトを察知してデザインする「Trend-to-Product」を開発した(画像はWalmartのコーポレートサイトから追加)
Walmartは、AIを活用してトレンドになり得そうなプロダクトを察知してデザインする「Trend-to-Product」を開発した(画像はWalmartのコーポレートサイトから追加)

従前のカスタマーサポートをAIがブラッシュアップ

ヴァスデフ氏は、これらの新しいAIソリューションについて、Walmartがすでに導入している一部のチャットボットや生成AIソリューションの延長線上にあると見ています。

Walmartのカスタマーサポートアシスタントでは、顧客からの問い合わせの振り分け処理や解決をAIエージェントがすでに担っています。従前のシステム以上にAIエージェントが自律的に行動することで、単調な作業を自動化し、従業員がより複雑なタスクに集中できるようにしています。

Walmartの生成AIを搭載したショッピングアシスタントは、マルチエージェントの連携、機能や性能を制限して動かすフォールバック処理、進化し続けている音声/カメラ機能を活用し、顧客が関心のある商品の発見から購入までサポートしています。(ヴァスデフ氏)

エージェントコマース成功のために必要なこと

Walmartはさらに、消費者に代わって商品を検索し、購入を実行するためのパーソナルショッピングAIエージェントの開発に取り組んでいます。この開発に向けて必要なインフラを準備するにあたり、ヴァスデフ氏は2つの重要なトピックスをあげています。

AIエージェントが“育つ”仕組み作り

1つ目は、消費者に提供するAIエージェントが、ユーザー1人ひとりの特性に合わせて育つようにすることです。そうすることで、そのAIエージェントの動きや能力を伸ばすための仕組みが作れるはずだと考えています。

たとえば、ユーザーごとの予算の上限、好きなブランド、サイズ、色、よく行くお店の場所など、具体的な特長をAIに教えることが含まれます。特に大切なのは、実際の事実と照らし合わせて、AIに継続的にフィードバックをすることです。そうすることで、AIは1人ひとりのニーズを学び、どんどん賢くなっていきます。(ヴァスデフ氏)

フロントと内部の情報共有を推進

二つ目は、顧客と直接やり取りするフロントのAIエージェントと、自社システムの内部で運用されるAIエージェントとの間で、効果的な情報共有――すなわち「コミュニケーション」ができるようになることです。その目的は、社内のAIエージェントが、顧客と接しているフロントのAIエージェントがやろうとしていることをきちんと把握できるようにすること。

ヴァスデフ氏は、この2点を推進することで、顧客が望む結果をスムーズに実現できるように促進するべきだと考えているのです。

AIが自動で判断して実行すべき作業は何か、そして、人間による確認や許可が必要な作業は何かを、慎重に見極めています。Walmartは、AIエージェントの分野で、将来さらに高度な運用ができるようになるため、その基礎を固めるために投資を進めています。(ヴァスデフ氏)

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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