Digital Commerce 360[転載元] 8:00

Amazonはユーザー向けの新たなAIツール「help me decide」を発表しました。さらに、2025年のホリデーシーズン前に、物流センターに新たなエージェントシステムとロボットの導入、活用を開始しました。

新AIツール「Help Me Decide」の特長

「薦める理由」まで表示

AmazonはAIツール群に、「Help Me Decide(選ぶのを手伝って)」という新しいツールを追加しました。

「Help Me Decide」は、AIを使ってユーザーの閲覧履歴と好みを分析し、ワンタップで商品をお薦めします。Amazonによると、このパーソナライズされたお薦めには、「ユーザーの特定のニーズや好みに基づいて、なぜこの商品がユーザーに適しているのか」を明確にする説明文が含まれています。これらの説明には、カスタマーレビューから得られたインサイトも取り入れています。

「Help Me Decide」のイメージ。ユーザーにお薦めする商品の要点をまとめ、パーソナライズされたレビューをAIが表示。画面の下部には代替オプションも提示する(Amazonの公式ブログ「About Amazon」)
「Help Me Decide」のイメージ。ユーザーにお薦めする商品の要点をまとめ、パーソナライズされたレビューをAIが表示。画面の下部には代替オプションも提示する(Amazonの公式ブログ「About Amazon」)

米国ユーザーに提供開始

Amazonによると、「Help Me Decide」は、iOSおよびAndroidアプリ、そしてモバイルブラウザ上で、米国の「何百万人もの」Amazonユーザーが利用できるようになっています。

ユーザーは、アプリの上部または商品詳細ページにある「Keep Shopping For(ショッピングを続ける)」ボタンを選択することで、「Help Me Decide」を利用できるかどうかを確認できます。

「Help Me Decide」ボタンは、複数の類似商品を閲覧した後に商品詳細ページの上部に表示されます。

Amazonは10月23日のリリースで、ユーザーが似たような商品をいくつか閲覧していて、どれを購入するか決めかねている場合に「Help Me Decide」ボタンをクリックすることで利用できると発表しています。

「Help Me Decide」は、サイト上の「Keep Shopping For」ボタンのタップからも利用できます。

ユーザーが複数の類似商品を閲覧した後、「Help Me Decide」を利用するためのボタンがページの上部に表示される(画像提供:Amazonの公式ブログ「About Amazon」)
ユーザーが複数の類似商品を閲覧した後、「Help Me Decide」を利用するためのボタンがページの上部に表示される(画像提供:Amazonの公式ブログ「About Amazon」)

ニーズに基づくパーソナライズ機能を搭載

ユーザーは「アップグレード希望(Upgrade Pick)」または「予算重視(Budget Pick)」のオプションを選択することで、特定の購買意図に基づいてAIに商品を提案させることもできます。

Amazonのパーソナライゼーション担当副社長のダニエル・ロイド氏は次のように説明しています。

「Help Me Decide」は、複数の類似商品を閲覧している際に、AIを使って顧客のニーズに合わせた商品を推薦し、購入の決定を後押しすることで、ユーザーの時間を節約します。

「Help Me Decide」は、AIを活用してショッピングをより簡単で楽しいものにし、カスタマーエクスペリエンスを改善する――という、Amazonの従前からの取り組みをさらに強化するものです。(ロイド氏)

Amazonによると、「Help Me Decide」は大規模言語モデル(LLM)と、Amazon Web Services(AWS)が開発・提供している生成AIサービス「Amazon Bedrock」「Amazon SageMaker」、同じくAWSが手がけるオープンソースの検索・分析エンジン「OpenSearch」を利用。「ユーザーが何を必要としていて、なぜそれを必要としているのか」を把握します。

また、購買履歴、嗜好(しこう)、商品の詳細、カスタマーレビューなどの情報も考慮に入れます

フルフィルメント分野のAI強化

新AIロボット「Blue Jay」を追加

ユーザー向けのAIツール「Help Me Decide」に加えて、Amazonは2025年のホリデーシーズンを前に、フルフィルメント業務の効率化を目的としたAIの活用も進めています。

たとえばロボティクスの分野では、「Blue Jay(ブルージェイ)」と呼ばれるロボットが、フルフィルメントに従事するAmazon従業員の作業を支援しています。「Blue Jayは、複数のアームを連携させ、同時に複数の作業を行います。

Amazonは「従前は3つの別々のロボットステーションで行っていた作業を、1つの統合型ワークスペースで商品の『ピッキング』、保管棚への『棚入れ』、『集約』作業を同時に行えるようにした」とのことです。

「Blue Jay」の動作イメージ(Amazonのコーポレートサイトから追加)
「Blue Jay」の動作イメージ(Amazonのコーポレートサイトから追加)

Amazonは、米国サウスカロライナ州の施設で「Blue Jay」の運用テストを行っています。「Blue Jay」は現在、Amazonが扱うさまざまな商品の約4分の3について、「ピッキング」「棚入れ」「集約」の各作業ができるそうです。

Amazonは、「Blue Jay」を構想から製品化まで「わずか1年強」で開発したと述べています。また、「Blue Jay」が実現するロボット業務は、Amazonの従来のフルフィルメントロボット「Robin」「Cardinal」「Sparrow」では3年以上かかっていたとしています。

Amazon公式ブログ「About Amazon」の上級ライターであるタイラー・グリーナウォルト氏は、次のように述べています。

AIの進歩によって、数年におよぶ試行錯誤を数か月の開発に圧縮できました。エンジニアたちは“デジタルツイン”と呼ばれる高度なシミュレーション技術を活用し、現実の物理法則を再現した仮想環境で数十ものプロトタイプをテストできるようになりました。

AI、データ、そして既存のロボット群で得た知見を組み合わせることで、Amazonは「Blue Jay」のような高度なAIシステムをこれまでよりもスマートかつ迅速に構築できるようになったのです。(グリーナウォルト氏)

エージェントAI「Project Eluna」がオペレーションマネージメントを支援

フルフィルメントプロセスの別の側面では、Amazon は「Project Eluna(プロジェクト・エルーナ)」と呼ばれる、オペレーション マネージャー向けのエージェント AI ツールの使用を開始しました。

「Project Eluna」がオペレーション マネージャーをサポートするイメージ(Amazonのコーポレートサイトから追加)
「Project Eluna」がオペレーション マネージャーをサポートするイメージ(Amazonのコーポレートサイトから追加)

グリーナウォルト氏によると「Project Eluna」は、オペレーターが日頃求められている「複数のダッシュボードを監視しながら、技術的な障害に対応し、リソースを再割り当てし、迅速な意思決定を行う」という「認知負荷」を軽減するために設計されたと言います。

Amazonは「Project Eluna」をAIエージェントとして設計し、「ある程度の自律性を持って動作し、複雑な運用状況を監視し、オペレーターに適切なアクションを推奨する」ようにしています。

「Project Eluna」フルフィルメントセンターの建物全体の、フルフィルメントの運用履歴データとリアルタイムのデータを取得し、障害になり得るボトルネックを予測してスムーズな運用を維持します。(グリーナウォルト氏)

Amazonは2025年のホリデーショッピングシーズンを前に、米国テネシー州のフルフィルメントセンターで「Project Eluna」の試験運用を計画しています。「Project Eluna」の活用に当たり、まずは仕分けの最適化に取り組む予定です。

グリーナウォルト氏によると、オペレーターは運用のボトルネックを回避するために、人員をどこに移動させるかを「Project Eluna」に指示できると言います。「目標は、障害発生後の火消しを減らし、障害になり得る要素を排除するための先見性を高めることです」(グリーナウォルト氏)

雇用の創出と人員削減計画

Amazonは10月中旬、ホリデーシーズンに向けて米国で25万人の雇用を創出すると発表しました。正社員と福利厚生付きの平均時給24ドルのパートタイム社員を雇用する予定です。また、季節労働者は平均時給19ドル以上を稼ぐことができるとのことです。

その一方、ロイター通信は10月27日、Amazonが10月28日から全社員で最大3万人の人員削減を計画していると報じました。

Amazonの2025年7-9月期(第3四半期)時点での従業員数は154万6000人。この数字にに含まれているのは正社員とパートタイム社員で、契約社員や臨時社員は含まれていません。

人員削減は全従業員の約10%に相当し、2022年末から2023年初頭の人員削減以来、最大規模になります。ロイター通信の報道時点で、Amazonはこの人員削減に関する社外向けの発表やコメントはしていませんでしたが、10月28日に発表したリリースで約1万4000人の人員削減を計画していることを明らかにしました。業務効率化や組織体制のスリム化を狙いとしています。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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