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AIが買い物をするエージェントコマースをウォルマートが導入。ChatGPT内で買い物できる「より楽しく便利な未来」を実現へ

米国の大手小売りチェーンWalmartは、「ChatGPT」とのチャット画面からECサイトの商品を消費者が直接購入できる機能を導入する企業の1つです。WalmartはかねてからAI活用を推進しており、今後はさらなる活用拡大を見込んでいます

Digital Commerce 360[転載元]

10月23日 8:00

米国小売大手WalmartはOpen AIと提携し、「ChatGPT」とのチャット画面からECサイトの商品を消費者が直接購入できる新機能「Instant Checkout」を導入します。この機能は、OpenAIが9月末に「ChatGPT」の新機能として発表したものです。Walmartのダグ・マクミロンCEOは、「ChatGPT」を通じて買い物ができるようになることを「より楽しく便利な未来へ向けた重要な一歩」とコメントしています。

「ChatGPT」からWalmartの商品を直接購入

WalmartとOpenAIは、OpenAIの生成AIプラットフォーム「ChatGPT」を介して、消費者やロイヤルティ会員がWalmartの商品を買い物できるようにする提携を10月14日に発表しました。

「Instant Checkout」の導入効果により、顧客は「ChatGPT」のチャットから商品を直接購入できる(OpenAIのYouTubeアカウントから追加)

Walmartはリリースで、この提携を「次世代の小売を切り開くもの」と位置付け、「AIの力とWalmartの豊富な品ぞろえや迅速な配送を組み合わせる」と説明しました。マクミロン氏はリリースの中で次のようにコメントしています。

従来、多くのECサイトでは、検索バーへの入力と、長い商品リストの表示が購買体験の中心でした。しかし、それが変わろうとしています。これからはマルチメディアで、パーソナライズされ、文脈に応じた“ネイティブAI体験”が登場します。Walmartは、「Sparky(スパーキー)」や今回のOpenAIとの重要な提携を通じて、その楽しく便利な未来に向かって進んでいます。(マクミロンCEO)

「Sparky」はWalmartが開発したオンライン上で買い物する消費者をサポートするAIアシスタントです。「Walmart」のアプリ内に搭載。顧客がオンラインで買い物をする際に商品を検索したり、異なる選択肢を比較したり、レビューをふるいにかけたりするのをサポートします。

「Sparky」の活用イメージ。さまざまな顧客のニーズに対応し自律的に行動する(画像はWalmartのニュースリリースから追加)
「Sparky」の活用イメージ。さまざまな顧客のニーズに対応し自律的に行動する(画像はWalmartのニュースリリースから追加)

WalmartによるAI活用の変遷と実績

WalmartはOpenAIが提供する「ChatGPT」を活用して、消費者が食事の計画を立てたり、家庭用品を補充したり、新しい商品を見つけたりできるようにする取り組みを進めています。

さらに、「ChatGPT」の「Instant Checkout」機能で、Walmartは「お客さまはただチャットするだけで、購入まで完結できます」と説明しています。

これは「エージェントコマース」の実践例です。AIはいま、受動的な存在から能動的に、静的な仕組みから動的な仕組みへと変化しています。AIはエンドユーザーの行動や好みを学習し、今後の計画を立て、次に購入される可能性がある商品を予測することで、お客さまが気付く前にニーズを先取りしてサポートします。(Walmartのリリースより)

子会社でもAI推進

Walmartは、展開するスーパーチェーン「Walmart」と、子会社の会員制スーパー「Sam’s Club」の両ブランドでAIを活用。AIを活用した商品ラインアップの改善、アパレル商品の生産期間を短縮、カスタマーサポートの対応時間の削減に成功してきました。「AIの活用は単に事業成長のスピードアップだけではなく、目的を持って活用している」と説明しています。

4つのAI「スーパーエージェント」の展開を推進中

OpenAIとの「Instant Checkout」機能の提携発表に先立ち、Walmartはその1か月前(2025年9月)にOpenAIを活用した認定プログラムを発表しています。さらにさかのぼると2025年7月には、4つのAI「スーパーエージェント」の展開計画を発表し、これらが今後重要な役割を果たすと説明しました。

Walmartが提唱する4つの「スーパーエージェント」とは、①顧客向け②店舗スタッフ向け③サプライヤーと販売業者向け④ソフトウェア開発者向け――にAIエージェントを搭載した4つのエージェントです。その中の一つ、「顧客向け」のスーパーエージェントが、マクミロン氏が今回の発表で言及した「Sparky」です。

Walmartは今後、買い物用エージェントの「Sparky」に、「再注文」「シームレスなサポート」「より直感的な買い物体験」などのエージェントコマース機能を追加する予定です。

Walmartのグローバル最高技術責任者(CTO)兼最高開発責任者であるスレッシュ・クマール氏は次のように説明しています。

今後1年のうちに、これらの「スーパーエージェント」はWalmartのエコシステムの中でより目に見える形で活躍するようになるでしょう。同時に、社内チーム向けや高度なカスタマーサポート向けなど、さらに専門性に特化したAIエージェントも構築していきます。(クマール氏)

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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