米国EC市場でのAI活用の現状は? 事業者間で進むAI導入+消費者の利用状況まとめ

米国のEC専門誌『Digital Commerce 360』が発行した2026年版の「主要ベンダーレポート」では、主要なEC事業者が利用しているAIツール、消費者がAIの利用に関連して重視するメリットなどを取り上げています。レポートから、小売事業者と消費者のAI利用の実態を解説します。
主要ベンダーは2025年にサービスや商品にAIを次々と組み込んだ
主要なECベンダーは2025年、ECサイトの運営や業務のほぼあらゆる領域に多様なAIツールを導入し、提供する商品やサービスにAI機能を組み込みました。
EC事業者から投資やインフラ選びに「成功した」と評価されるためには、機能の強化が成果に結びつくことが重要です。その成果には、カスタマーエクスペリエンスやコンバージョンなども含まれます。
『Digital Commerce 360』発行の「2026年版 Top 1000小売事業者向け主要ベンダーレポート」に掲載した調査結果では、EC利用者が価値を感じるポイント――つまり、小売事業者のECサイトやアプリで買い物をする際に何を重視しているかを明らかにしました。
北米の主要なEC事業者の間で最も利用されているベンダーのランキング掲載に加え、パーソナライゼーション、検索など、消費者の視点も取り入れ、AI機能が実際にどこでイノベーションをもたらしているかを記載しています。
2025年に登場したAIツールを消費者はどのように活用するのか。2025年のホリデーシーズンが近づくなか、小売事業者はその片鱗を目にすることになりそうです。そしてその結果は、次年度のテクノロジーに当てる予算の配分に間違いなく大きな影響を与えるでしょう。
EC利用者がAIからすでにどのような価値を感じているのかについて、現段階で明らかになっている点を紹介します。
消費者がAIに求めるのは「お得情報」「時間の節約」「検索の効率化」
Bizrate Insightsと『Digital Commerce 360』が2025年10月に実施した調査(EC利用者1026人が対象)によると、EC利用者の4分の1はAIツールに懐疑的であることがわかりました。
しかし、AIツールの利用は増加しています。調査で「ECで買い物をする際、AI機能から得られる最も大きなメリットは何か」を聞いたところ、回答結果から3つの主要な項目があがりました。
最も多かった回答は「AIはより良いお得情報を見つけるのに役立つ」で、回答者のうち23.9%でした。ホリデー商戦がAI活用と“お得感”の両方に焦点を当てると予測される2025年の状況から考えても、驚くべき結果ではありません。
お得な情報に次いで多かった回答は、長らく消費者の優先事項となっている「時間の節約」でした。AIツールを利用する際に最も大きな利点として、19.7%の回答者が「時間の節約」をあげています。
3番目に多かった回答は、生成AI時代においてオンライン小売事業者や検索プラットフォームが特に注力している分野でもある「商品検索の効率化」で、17.6%でした。

米国小売大手のAI導入事例
レポートでは、EC事業者がこれらの成果を得るためにどのようなテクノロジーを導入しているかも取り上げています。
その一例として、ハンドメイドマーケットプレイス「Etsy.com」を運営するEtsyによるOpenAIのテクノロジーの活用(「ChatGPT」の新機能「Instant Checkout(インスタントチェックアウト)」)、米国で高級百貨店チェーンを運営するSaks Fifth Avenue(サックス・フィフス・アベニュー)による、「Salesforce」を使ったパーソナライゼーション、米国の家電量販店Best Buyによる、ECベンダーMiraklのプラットフォームを活用したオンラインマーケットプレイスの立ち上げなどがあります。
レポートに記載された22のカテゴリにわたり、小売事業者はマーケティングからフルフィルメントに至るまで、自社の業務最適化に取り組んでいます。そして、AIは特にECプラットフォームの領域であらゆる場所に導入され始めています。
オンラインショッピングのピークとなるホリデーシーズンまであと数週間という状況のなか、こうしたAI技術が消費者に本当に求められている価値を提供できているかどうか、小売事業者はまもなく知ることになるでしょう。
