ランサムウェア攻撃被害のアスクル、12月上旬以降に本格復旧フェーズをめざす計画とは

アスクルは11月6日、ランサムウェア攻撃によるシステム障害に関し、段階的なサービス復旧に向けた計画を発表した。
事業所顧客の業務継続を最優先とし、まずは法人向けサービス「ASKUL」の復旧を優先的に進める方針。安全性と安定稼働を確認しながら、対象範囲を段階的に拡大していくとしている。
「ASKUL」サービスの復旧計画
「ASKUL」サービスの復旧は3段階で進める。第1弾では、FAXによる手運用の出荷トライアルを10月29日から開始。対象は医療機関や介護施設を含む一部の顧客で、コピー用紙やペーパータオル、トイレットペーパー、ゴミ袋など37アイテムをケース単位で受注する。出荷拠点は新木場物流センターとASKUL大阪DCの2拠点。
11月12日からは拡大フェーズに移行し、対象顧客・商品・出荷拠点を順次拡大する。FAX注文を継続しつつ、取扱商品を237アイテムに増やし、介護用おむつや飲料、洗剤、飲食消耗品なども追加する。出荷拠点はASKUL仙台DC、ASKUL横浜DC、ASKUL名古屋DC、ASKUL関西DC、ASKUL福岡DCの5拠点を追加し、計7拠点体制とする。追加拠点からの出荷は11月7日から開始予定。出荷能力は従来の1〜2割程度としている。
11月中旬からは対象顧客をさらに拡大し、Web注文と手運用による出荷トライアルを開始する予定。FAXに加え、「ソロエルアリーナ」サイトでの注文を再開する。対象商品は第1弾トライアルの対象である箱単位注文の237アイテムに加え、単品注文で医療機器・衛生材料などのメディカル品として注射針、シリンジ、カテーテル、消毒用エタノール、酒精綿、高濃度手指消毒剤、ガーゼ、カット綿、検査用グローブ、新型コロナウイルス抗原検査キット、舌圧子、パルスオキシメーターなど約470アイテムを追加する。出荷拠点は箱単位注文は7拠点で稼働する。単品注文はASKUL東京DCが対応する。
12月上旬以降には本格復旧フェーズに移行し、「ASKUL」Webサイトでの注文および一部物流センターからの通常出荷を再開予定。箱単位ではなく単品注文への対応を含め、物流センター在庫全商品の出荷に対応する。順次、稼働拠点を拡大していくという。
なお、第1弾および第2弾のトライアル期間中は、倉庫管理システム(WMS)を使用しない運用となる。そのため、通常サービスよりも配達日数がかかる場合があるとしている。
その他サービスの状況
BtoB-EC以外のサービスでは、次のような対応を進める。
- LOHACO(ロハコ):現時点では出荷トライアルの対象外。再開時期は確定次第発表予定。
- パプリ(印刷サービス):11月中旬より一部顧客を対象にFAX注文を再開予定。
- ビズらく:システム・Webサイトの安全確認を実施し、通常通りサービスを提供中。
- SOLOEL(ソロエル):システム・Webサイトの安全確認を完了し、通常サービスを提供中。ただし、SOLOEL内の一サプライヤーとしての「アスクル」は出荷を停止中で、再開時期は未定。
- 外部カタログ連携(直販モデル含む):現時点では出荷トライアル対象外。再開時期は確定次第発表する。
ASKUL LOGISTの3PL事業における出荷業務は、今回の復旧スケジュールとは異なる対応になる。
システム障害と対応の経緯
アスクルは10月19日にランサムウェア攻撃によるシステム障害を確認し、第1報を発表。同日より「ASKUL」「ソロエルアリーナ」「LOHACO」での受注を停止した。10月22日の第2報では、障害範囲が主に物流システムにあることを公表。29日の第3報では、37アイテムのFAX受注トライアルを開始したと発表した。10月31日には、ハッカー集団による犯行声明に関する一部報道を把握しているとし、事実関係の確認を進めていることを明らかにした。同日、「ASKUL」「ソロエルアリーナ」「LOHACO」で一部の個人情報が流出した可能性があることも公表している。現在も、詳細なログ解析や異常監視、原因および障害対象範囲の調査を継続している。
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