BtoB(企業間電子商取引)プラットフォームを運営するインフォマートは12月18日、物流業界および荷主企業に勤務する会社員を対象に実施した「物流業界の法改正とDX」に関する実態調査の結果を公表した。調査からは、法改正への対応の遅れやDX推進の遅れが鮮明になった。
法改正への対応、3割超が「特に対応していない」
2024年以降の物流関連の法改正(物流総合効率化法・貨物自動車運送事業法)で、ドライバーの労働時間規制や休息時間の確保などが求められている。物流業界が抱える課題や法改正に対しての対応を聞いたところ、企業の32.2%が「特に対応していない」と回答。従業員規模別で見ると、50人未満の企業では「特に対応していない」が半数を超え、300人以上が在籍する企業も約3割が「特に対応していない」と回答した。
デジタルツール導入、約半数が「未導入」
導入しているデジタルツールについて聞いたところ、「特に導入していない」が48.3%で最多。導入済みのツールでは、「勤怠・労務管理」が29.4%で最も多く、「車両管理システム」が17.2%、「請求書のデジタル化」が14.4%と続いた。
可視化が進む労働時間、遅れる荷待ち・積載率データ
勤務先で把握・管理できているデータは、「ドライバーの労働時間・休息時間」が41.1%と最多だった。2024年の働き方改革を背景に、労務関連データの可視化が進んでいると見られる。
一方、2025年の法改正で可視化・管理が求められる「荷待ち・荷役時間」は18.9%、「積載率・効率指標」は12.8%にとどまり、いずれも2割未満だった。今後の法対応に向け、これらのデータ化が遅れている実態が明らかになった。
荷主企業の課題は「物流コスト上昇」と「契約書対応」
荷主企業への調査では、課題として「運賃・物流コストの上昇が避けられない」が38.9%で最多だった。次いで「契約書対応(書面交付・契約内容の明確化)が増える」が27.8%と高い割合を占めた。特に飲食業や建設業では契約書対応を課題とする声が多い。
多店舗展開する飲食業や、下請け構造が重層的な建設業では取引先数が多く、契約管理が煩雑になりやすいため、デジタル化への課題感やニーズが強く表れていると見られる。
法改正で期待される効果は「物流コストの見える化」
物流関連法改正によって期待される効果について荷主側に聞いたところ、「物流コストの見える化・適正化」が26.1%で最多だった。次いで「サプライチェーン全体の標準化・DXの促進」が23.3%、「荷待ち・荷役の削減による全体効率化」が22.2%と続いた。
DXが進まない理由、物流企業は「コスト・人材・アナログ業務」
物流企業におけるDX・デジタル化が進まない理由として、「投資余力がない」が35.2%、「IT人材がいない」が32.0%、「紙やFAX、電話に依存している」が28.8%と、コストや人材不足、アナログな業務慣習が主な障壁としてあげられた。
また、「どのツールを選べばよいかわからない」が24.0%、「使用するツールが乱立している(荷主によって異なる)」が22.4%となり、ツールの選定や乱立もDX推進を阻害する要因となっているようだ。
一方、荷主企業側で「DX・デジタル化が進まない、または進みにくい」と回答した理由では、「投資コストが高い」が31.5%で最多となり、次いで「部署間の連携が取れない」が29.4%だった。
今回の調査から、物流業界では法改正を背景に「ドライバー不足」と「コスト増」が深刻化する一方、3割超の企業が十分な対応を進められていない現状が明らかとなった。紙や口頭に依存した商習慣がDX推進の足かせとなり、荷主企業もコスト増や契約管理負担の増大に直面している。インフォマートは、今後は業界全体で構造改革を進めるとともに、まず現状を正確に可視化することが重要だと指摘する。データ化・可視化を進めることで、コストの適正化やサプライチェーン全体のDX推進につながることが期待される。
調査概要
- 調査内容:物流業界の法改正とDXに関する実態調査
- 調査方法:インターネットリサーチ
- 調査期間:2025年10月29日~11月1日
- 調査対象:物流業・荷主企業の会社員 各180人
(メーカー系物流会社/商社系物流会社/独立系物流会社/倉庫業、製造業/卸売業/小売業/飲食業/建設業/不動産業/医療業)