東証グロース上場企業で、アパレルやコスメのECを手がけるyutoriは、ファッションIPビジネスとグローバル展開を加速させる。
IPの企画・開発などを手がけるアカツキ、人気キャラクターなど各種IPのグッズ企画・販売を行うGPS HOLDINGS(GPS HD)、繊維商社のMNインターファッション(MNIF)を引受先とする第三者割当による新株式発行と、3社との資本業務提携を実施すると12月19日に発表。また、大和証券を割当先とする新株予約権の発行も決定した。
第三者割当増資では、アカツキ、GPS HD、MNIFに対して合計44万2700株(希薄化率9.42%)を割り当てる。発行価額は2258円で、調達総額は約10億円となる。
大和証券を割当先とする新株予約権は、1個あたり100株で1845個を発行。発行価額は1個948円、行使価額は2709円で、資金調達額は約5億円を見込む。
アカツキ、GPS HDとの提携でIP事業を拡大
アカツキ、GPS HDとの資本業務提携の目的の1つはIP事業の拡大。yutoriグループは、Z世代や若年層を主なターゲットに、アパレルやコスメ分野を中心として30を超えるブランドを展開。SNSを起点としたブランド構築、D2Cモデルによる商品企画・販売を通じて、ファッションとカルチャーを融合させた事業を手がけている。
yutoriグループ、アカツキ、GPS HDは、それぞれの強みを持ち寄ることで、日本発IPの中長期的な価値最大化とIPポートフォリオ構築を共同で推進することが、各社の事業拡大と企業価値向上につながると判断し、資本業務提携に合意した。
提携を通じて、IP事業の拡大や海外展開の加速など、多面的な協業を進める。IP事業では、yutoriグループのアパレル・コスメブランドとGPS HDのIPコンテンツ事業を組み合わせたコラボレーションを実施し、新規顧客の獲得やブランド価値向上を図る。
さらに、yutoriグループ、アカツキ、GPS HDの3社による合弁会社を設立し、ファッション、カルチャー、デジタル体験を横断したIPプラットフォームを構築。日本発IPの価値最大化とグローバル展開をめざす。
グローバル市場では、キャラクターやIPを起点としたビジネスが、グッズ販売だけでなく、ファッション、ライフスタイル、デジタルコンテンツ、リアル店舗体験などへ多面的に広がっている。特に中国、韓国、米国などでは、キャラクターIPを核とした体験型店舗やオンラインサービスが成長し、日本発IPの海外展開も加速。日本国内でも、若年層を中心にファッションとキャラクター・IPを横断的に楽しむ消費行動が広がっている。
yutoriは、IPの世界観を生かしながら「ファッション」と「カルチャー」を高い次元で統合し、リアル店舗、EC、デジタルコンテンツを一体的に提供する新たなリテールフォーマットには、依然として大きな成長余地があると認識しているという。
アカツキの概要
アカツキは東証プライム市場に上場し、ゲームやコミックなどエンターテインメント領域において、IPの企画・開発・運営、オンラインプラットフォーム構築、海外マーケティングなどに実績を持つ。モバイルゲームなどデジタルコンテンツ事業をグローバルに展開している点が強み。2025年3月期の連結業績は、売上高が前期比1.3%減の236億5200万円、営業利益は同46.3%増の39億1500万円、経常利益は同49.4%増の42億3300万円、当期純利益は同27.8%増の16億4600万円。
GPS HDの概要
GPS HDは、人気キャラクターなど各種IPのグッズ企画・製造・販売、公式ECサイト運営など、キャラクタービジネスに特化した事業を展開。キャラクタービジネスに特化したグレイ・パーカー・サービスを傘下に持つ。IPの世界観を損なうことなく商品化・販売してきた実績があり、高い企画力と運営力を有する。2025年8月期の業績は、売上高および営業利益が0円、経常利益は33億500万円(前期は0円)、当期純利益は33億500万円(前期は0円)。
yutoriは、これまで「若者のファッション」を作ってきた。ここからは、「ファッションとしてのIP」を、世界中のストリート、クローゼット、スマホの中にまで届けていきたい。この資本業務提携は、そのためのスタートライン。3社で設立する新会社を起点に、株主・投資家の皆さまにも「yutoriはファッションIPビジネスを本気で取りに行っている」とワクワクしていただけるようなニュースを、これからお届けしていく。(yutori片石貴展社長)
MNIFとの提携でサプライチェーン高度化と新規事業創発
MNIFとの資本業務提携は、サプライチェーンの高度化と新規事業創発も重要な目的。yutoriグループは今後、アジアを中心とした海外展開の加速、サステナビリティニーズに対応した商品開発、サプライチェーンの高度化を重要な経営課題にあげている。
サプライチェーン高度化や新規事業創発では、yutoriグループが培ってきたZ世代中心の顧客インサイトやコミュニティ運営ノウハウ、MNIFの機能性素材・付加価値商材の開発力、OEM・ODMに関する知見を掛け合わせる。これにより、トレンド性と機能性を両立した商品開発を実現。既存ブランドのバリューアップや新規ブランド、コラボレーションラインの立ち上げなどを通じて、中長期的なブランド価値向上を図る。
さらに、MNIFのグローバルな生産・物流ネットワークを活用し、原材料調達から生産計画、物流設計までを連携。リードタイム短縮、適正在庫の実現、原価低減などを通じて、D2Cアパレルビジネスにおける欠品や過剰在庫を抑制し、粗利率や在庫回転率の改善による収益性向上をめざす。MNIFの海外拠点を活用し、yutoriグループ主要ブランドのアジアをはじめとした海外展開も加速させる方針だ。
MNIFの概要
MNIFは、日鉄物産の繊維事業と三井物産アイ・ファッションの事業統合により誕生した繊維商社。機能性テキスタイルやアパレル製品の調達・販売、OEM・ODM事業、ブランド事業、デジタル事業など、素材開発から生産・物流、ブランドマーケティングまで一気通貫の機能を有する。2025年3月期の連結業績は、売上高が前期比10.3%増の2001億7200万円、営業利益は同27.8%増の68億1500万円、経常利益は同0.2%増の59億7800万円、当期純利益は同6.5%減の39億1500万円だった。
yutoriグループは2024年からMNIFと取引を開始し、協業による新たな事業価値創出に向けた協議を重ねてきた。