ネット上で「他のお客さんの評価」を見て、買うかどうか判断した経験はありませんか?ここでは、ネット上で「良い評判」を作るために、「商品レビュー」や「UGC」をためるための考え方と方法を紹介します。組織全体でコツコツ取り組みましょう。
現代のお客さんは「まず評判をチェックする」
現代のお客さんは、商品を買う前に、商品ページ以上に「レビューなどの第三者評価」を見て判断することが増えています。
だから、どんな商品であっても、買ってくれたお客さんから「良い評価」が蓄積されるようにしていくべきです。小さな会社であろうとも、圧倒的に高い評判があれば、それはブランドです。
お客さんからの評価コメントは、レビューや UGC(User Generated Contents)と呼ばれます。商品ページなど「店の中」に記録されるのがレビューで、UGCはSNSやブログなど「店の外」にたまっていく「使ってみて良かった」という評判です。
最近では、InstagramやXなどSNSで個人の発信力が上がっているため、ECモールの商品ページについているレビューだけでなく、店舗の外で個人が発信しているクチコミ(UGC)の重要度や集客効果も上がっています。良い商品・サービスであれば自然と良い評判が増えるものですが、店側としても、悪い評判を少しでも減らし、良い評判が蓄積されるような工夫をしていきましょう。
商品レビューへの対策
好意的な商品レビューを増やす
モールECでは、高評価の商品レビューがたまると検索順位にプラス効果があるため、モールSEOとしても大切です。
人間心理として、「不満を感じた」時はレビューに書く強い動機がありますが、「満足した」時にはレビューを書く動機がそこまで強くありません。だからこそ、「レビューを書くお願い」をして、レビュー数を増やします。
方法としては、購入後のアフターフォローが有効です。例えば「フォローメールの配信」「手紙の同封」などでレビューを依頼してみましょう。おまけやクーポンなどの記入特典も有効ですが、モールEC側のガイドラインに注意して実施しましょう。
損得だけでなく「心証」を意識してください。クチコミの見返りに必ずしも特典は必要ありません。法則8にあるように「店としての姿勢」が発信できていて、熱意や誠実さが伝わっていれば「感想を寄せてもらえると嬉しい」「店長が喜びます」という言葉も好意的に受け取ってもらえます。
例えば商品の同封物にメッセージを書く方法があります。実は、お客さんがレビューを書くタイミングは、商品を使い込んだ後というより、使う前の「開封した時点の印象」でレビューを書くケースも多いため、心証が重要なのです。これは注文後のメールなどでも同様です。
なお、サクラレビューは厳禁です。最近の消費者はPR色のあるクチコミを敏感に察知するのでかえって興ざめします。ECモールでは規約違反どころか強制退店になった事例もあります。悪質なケースでは、ステマ規制として措置命令や罰金が科せられます。
低評価レビューを食い止める
お客さんからの不満には真摯に対応すべきですが、悪いレビューが怒りの頂点で書かれそのまま投稿されてしまうのは、販促としてはマイナスです。そのため、お客さんからの不満やご指摘は、「レビューではなく直接連絡をもらう」よう誘導することがオススメです。
そうすれば、お客さんの不満は直接対応で解消され、低評価レビューが書かれることもなく、お互いハッピーになります。具体的な方法としては、同封物などに「商品に問題やご不満があればお電話やメールで直接ご連絡ください」「レビューですとお待たせしてしまいます」といった言葉を添えます。
低評価レビューを書く人は、「満足しなかった」ことを「分かってくれる相手」に伝えたい気持ちが強いようです。商品と一緒に「細心の注意を払っておりますが、ご迷惑をおかけたらすぐご連絡を」と書かれた電話番号や二次元バーコードがあれば、何か不満があっても、そのはけ口がレビューから「連絡先の相手」に切り替わることが期待できます。
低評価レビューには返信する
次に、すでに投稿されてしまった低評価レビューに対しては、「レビュー返信機能」がある場合は、店からのお詫び返信を行います(図15-1)。真摯な姿勢が伝わると、レビュー記入者本人だけでなく「そのレビューを見たお客さん」に対して、悪い印象を減らせるからです。逆に、放置すると、とても印象が悪くなります。
UGC(SNS上での評判)への対策
個人が発信するクチコミ(UGC)も購入判断の材料になります。購入前に、InstagramやXやGoogleで、商品名・ブランド名で検索をして大丈夫かどうかチェックするわけです。良いUGCの自然発生を待つだけでなく、何か仕掛けましょう。
UGC対策は、レビュー対策と並行して実施します。実は「商品レビューを書く」という行為が、お客さんの中の「自分は満足している」という記憶を強めるからです。
施策としては「ハッシュタグを付けて拡散」をお願いします。フォローメールや商品に同封するチラシにて、固有のハッシュタグを設定し、お客さんにクチコミの拡散をお願いしましょう(図15-2)。
この際、キャンペーン(拡散すると抽選で何かがもらえる等)として企画して、メルマガやLINEやSNSで配信するのも有効です。拡散されると、接点のなかった人々にも情報が伝わっていきます。人に言いたくなるような話題性がある商品やイベントであれば、クチコミが発生しやすい傾向です。
組織的・継続的に取り組む
「良い評判をためる」のは、経営上の大テーマです。担当者の施策レベルではなく、組織全体として取り組みましょう。
もしも低評価の理由が商品やサービスにある時には、社内で共有し、真摯に受け止めて、改善しましょう。もしくは、お客さんの誤解に由来する場合は、商品ページ上での案内を見直して、誤解を防ぎましょう。
レビューだけでなくCSでの声も同様です。チームで運営している場合は、商品担当(MD担当)、販売担当(SF担当)、CS担当(BY担当)の合同活動となります。連携については法則17をご覧ください。同時に、好評価レビューも、担当者間で共有しましょう。製造スタッフのやりがいになりますし、商品ページに載せるエビデンス(法則9、10)にも使えます。
良いレビューやUGCを増やす土台として、店舗やブランドのコンセプトを発信し、記憶してもらうことが有効です。コンセプトを覚えてもらうと、ユーザーが自発的に InstagramやX 紹介するクチコミ機会も増えるからです。コンセプト定義は、戦略編の「ABCDの法則(法則 58・59)」で紹介します。
この記事は『売れる! EC事業の経営・運営 ネットショップ担当者、チームのための成功法則。』(インプレス刊)の一部を編集し、公開しているものです。
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