ECモールSEOは「商品ごとの最適化」、Web検索対策は「サイト全体の最適化」

プル集客は、検索経由を中心とした「能動的に情報を探しに来るお客さん」を対象とした集客方法です。想定すべき検索エンジンは2種類あり、それぞれ仕様が違います。1つは楽天市場やAmazonなどECモールの「商品検索」で、もう1つはGoogleなどの「Web検索」です。
「商品検索」と「Web検索」の違い
商品検索もWeb検索も、「検索結果画面でなるべく上位に表示されて、お客さんの視界に入り、興味を持ってクリックしてもらう」ことで、集客ができます。
以下の3要素を高めることで、プル集客力がアップします。
- バリュー要素:検索エンジンからの評価
- マッチング要素:検索意図とキーワードから逆算した作り込み
- クリック率:見た目の分かりやすさ
あらゆる検索サービスは、「各ユーザーの需要」と「商品や情報たち」のマッチングサービスだと言えます。需要にマッチした商品や情報はたくさんあるので、その中から「最も価値(バリュー)の高い情報」から順に表示されます。
ECモールの「商品検索」では、売上実績や評価の高い「商品」が上位に表示され、Googleなどの「Web検索」では、評価の高い「サイト」や「ページ」が上位に表示されます。
ただ、いずれも前述の「バリューはあるか、マッチングしたか、クリック率が高いか」で集客の成否が決まるという構造は同じです。この基本を理解しておくと、仕組みが変わっても、状況判断がスムーズになります。
ECモール検索は 「商品ごとの最適化」が大切
ECモールの「商品検索」では、どのECモールでも、当該商品の「直近の売上」が高いと順位が上がります。 よく売れるものを上位表示させることで、ECモールにもマージン売上が発生するので、当然ですね。ただ、出店者にとっては、「検索順位を上げて売上を伸ばしたい」のに「売上が伸びないと検索順位が上がらない」という矛盾が発生します。このままでは検索順位が低いままになります。
対策としては、まず「マッチング要素」への対策を優先します。
キーワード先読みと網羅で「マッチング要素」に注力
ECモールの商品検索で表示されるかどうかは、商品名や商品説明文などの商品情報に検索キーワードが含まれているかどうかが判断基準となります。そのため、検索されうるキーワードを幅広く記入しておくことで検索にヒットしやすくなります。例えば「ババロア」といった一般名詞だけでなく「スイーツ」「洋菓子」などのカテゴリ名、「デザート」「お中元」などの用途、「バースデーケーキ」に対しての「誕生日ケーキ」といった別表記、「誕生日 男の子」といった対象者などの「間接的なキーワード」を入れていくことが重要です。
モールECの商品検索では、仕様上、出店者がカテゴリページを作っていても、その内容は商品検索に反映されません。よって、ヒットさせるには必然的に「カテゴリに書くような情報も商品ページの中に書いていく」ことになります。その結果、ECモールでは「単語の羅列のような読みづらい商品名」になる傾向にあります。
さらに、キーワードの記入だけでなく各ECモールが定義した商品カテゴリやタグ・商品属性を適切に登録することも、マッチング率を高める方法です。靴であれば、サイズや「メンズ」といった商品属性情報を商品情報に登録しておくことで、検索にヒットしやすくなります。
このような施策は、1商品だけで実施しても体感効果は少ないのですが、店舗内の全商品で徹底することによって大きな成果が出ます。そのためには、商品マスタ(法則18)の整備、商品登録や更新時の仕組み化が重要です(法則25)。
※ 関係のない単語を羅列するなどはペナルティの対象となります。商品検索のアルゴリズムは、Web検索と比べると精度が低い傾向ですが、お客さんがお金を払うものですから、人間による巡回チェックが行われています。
売上が伸びると「バリュー要素」が高まる
このように、1つ1つの商品で検索キーワードを先読みし、「マッチング要素やクリック率」を向上させ、売上実績を積み上げます(「バリューを高める」に該当)。すると検索順位が上がって売上が伸びて、順位が上位で安定するという、好循環に入ります。あるいは、後述する検索連動型広告でブーストをかけて、人為的に検索順位を上げることもできます。
その他の影響要素としては、出荷スピードがあります。EC モールごとに基準は違いますが、注文から発送までの期間が短い商品ほどバリューが高くなります。 レビューの平均点数や件数も影響するので意識しましょう。
商品検索結果で目立って「クリック率」を向上
上位表示されたとしても、クリックされないと売上にはつながりません。そこで、以前紹介した検索結果に表示される「商品画像」で興味を引きます。また、商品名の頭に「国産」「大容量」など、魅力を端的に表現した単語を追加することも有効です。法則3で紹介した「ダレナゼ」を踏まえ、お客さんの目線で書きましょう。
同じECモールでもAmazonは例外で、「カート獲得」が最大の影響要素になります。楽天市場やYahoo!ショッピングと違い、Amazonでは出品者が違っていても同じ製品なら商品ページは1つに統合され、価格が安く出荷が早い店の商品だけが「代表」として表示されます。なので、商品情報を調整することができません。仕入れ商品よりオリジナル商品のほうが競争を避けやすい構造だとも言えます(別注商品などのオリジナル商品企画については法則54を参照してください)。

Web検索は「サイト全体の最適化」が重要
Web検索の「バリュー要素」は、サイト全体の専門性が重要
ECモールでは「商品」が強めに評価されるのに対して、Googleでは個々のページを総合した「サイト全体への評価」が影響します。読者にとって「専門性と信頼性のある情報」を提供しているサイトが高く評価されます。また、借り物ではなく独自の経験であったり、専門家としての裏付け(権威性)があるほうが好評価になります(経験や権威性、専門性などの評価される基準をまとめてE-E-A-Tと言います)。
基準としては、検索エンジンが記事を読んで品質を高く評価したり、信頼できる外部サイトから言及されると、バリュー要素が強まっていきます。ページ表示速度やスマホでの閲覧に適しているかなどの「使い勝手」も影響します。
Web検索は、「基本的に商品を探している」ECモールと違い、ユーザーは情報を調べています。読者にとって価値ある情報(例:毛ガニの食べ方)を発信し、「毛ガニの食べ方を知りたい」人を集めても毛ガニの売上に直結はしませんが、前述の「権威性」にあたるので、じりじりとサイト全体の評価が高まります。サイト全体の専門性が評価されると、徐々に売上に直結する検索キーワード(例:毛ガニ 取り寄せ)でも有利になります。この状態を目指し、半年以上はかけて、長期的な取り組みとして取り組みましょう。この後の「フック集客」で紹介する、コンテンツマーケティング施策(法則8)が有効です。
Web検索の「マッチング要素」
商品検索では商品だけが表示されますが、GoogleなどWeb検索ではカテゴリページやトップページが表示されやすいようです。特に、「複数の商品ページやコンテンツを束ねるカテゴリページ」がよく上位に表示されます。そのため、サイト内の各ページが階層構造になるよう設計することが重要です。これをトピッククラスターモデルと言います。
作業手順としては、「そのサイトでユーザーが検索しそうな様々なキーワード」をいったん全部洗い出し、主要なキーワードを配置する形で階層構造を作ります。つまり、上位にカテゴリを作り、下位に詳細ページを配置します(例えば、沖縄料理カテゴリの下に、沖縄料理に関連する商品や情報を配置)。
キーワードは、ページタイトルや見出し、本文中など、適切な場所に自然に配置します。細かい表記揺れ(例:誕生日ケーキとバースデーケーキの違い)は、検索エンジンが理解してくれるので、細かく網羅する必要はありません。意味が伝わりやすいライティングであれば大丈夫です。
商品検索では「検索キーワードの先読みと網羅的記入」が重要ですが、Web検索では単語にとらわれすぎず、自社の専門性を生かして「ユーザーに役立つ情報を発信する」ことに意識を置いてください。
Web検索の「クリック率」
Web検索でクリック率を上げるには、ページのタイトルやdescriptionと呼ばれる「ページの説明文」の調整が有効です。検索結果画面でどのように表示されるかを想定し、分かりやすく書きましょう 。
ただ、今後のWeb検索では「AIがユーザーの需要に合わせて情報を要約して表示する」場面が増えてくると予想されます。AIの発展によって、Web検索がどう変わるかに注目し、柔軟にやり方を変えていきましょう。
検索連動広告について
広告について補足します。ECモールやGoogleでも、検索結果画面には、通常の検索結果に加えて検索連動型の広告が表示できます。ユーザーが検索したキーワードに関連する広告を表示する仕組みのことです。
GoogleなどのWeb検索結果に表示される検索連動型広告は、リスティング広告とも呼ばれ、検索結果画面の上部や下部に表示されます。商品名だけでなく、悩みや課題に関するキーワードでも広告を配信できるのが特徴です。
楽天市場やAmazonなどのECモールにも、検索連動型広告が存在します。楽天市場の「RPP広告」、Amazonの「スポンサー広告」などがそれにあたります。
いずれもクリック課金制かつ入札制で、競争の激しいキーワードは値段が上がっていきます。また、出しっぱなしだとどんどん無駄にお金がかかってしまうので、こまめに調整することが大変重要です。商品の在庫や、季節ごとの需要変動やモールイベント動向も考慮しましょう。費用を抑えるなら、収益性の高い商品に絞って広告を出稿するのがお勧めです(広告の効果検証と運用は法則28を参照)。
データフィード広告について
取扱商品数が多い EC の場合は、商品情報データを活用した広告が使われます。例えば、Googleで商品について検索すると、ECモールのように「画像付きの商品検索結果」が表示されることがありますよね。これをGoogleショッピング広告と呼びます。
GoogleやFacebookなどの媒体側が指定するフォーマットに合わせて、手持ちの商品情報を加工したデータを提供することで、広告が表示されます。これは、ECモールに商品情報をアップロードするのと同じことです。「原稿」ではなく「商品データ」を渡して、自動で原稿を生成してもらうわけですね。
広告媒体に提供された商品情報データは、プル集客だけでなく、プッシュ集客(例:ページの閲覧時に表示されるディスプレイ広告)でも使われます。こちらについては、法則7で解説します。
この記事は『売れる! EC事業の経営・運営 ネットショップ担当者、チームのための成功法則。』(インプレス刊)の一部を編集し、公開しているものです。
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