「棲み分け」「ダレナゼ」「キャラ立ち」で選ばれる商品になる。埋もれずに存在感を発揮する考え方を解説!

ECの世界には、一見すると競合商品が多くて、自店舗の商品が埋もれているように見えますよね。でも実は、商品の特性やターゲットとするお客さんによって、上手に棲み分けされているんです。ここでは、棲み分けを意識して「埋もれずに存在感を発揮する」考え方をご紹介します。
ネットならではの「棲み分け構造」とは?
ECは全国大会です。ローコストで全国に販売ができるため、当然無数の企業が参入して、競争が激しくなります。一方で、「ニッチな需要」も全国から集まってくるのでニッチな商品でもまとまった売上を作ることができます。
例えばネットで「誕生日 ケーキ」で検索して買うとして、お客さんみんなが「人気で美味しい誕生日ケーキ」を買おうとしているわけではありません。それぞれ別々の人生を生きているので、それぞれの比較基準があります。法則1で紹介したように、「小さい男の子が喜ぶケーキがいいな」「甘いものが苦手な大人のためのケーキがいいな」「サプライズに使えるケーキがいいな」などと様々な需要があります。すると、それぞれ「パトカーやキャラクターのケーキ」「ビターなチョコケーキ」「顔写真とメッセージ入りケーキ」などが選ばれます。これが「棲み分け構造」です。あるいは、タオルを検索してみても「ホテル的な贅沢タオル」「タオルギフト」「機能性の速乾タオル」「業務用タオル」のように棲み分けされています。こたつでも、安価な小型のこたつは一人暮らしの学生、標準的な布団付きセットはファミリー向け、高級でオールシーズン使えるこたつはインテリアにこだわる層など。ですから、似たような商品でも、厳密には競合ではなかったりします。
一見すると、ライバルが多くて自分の商品は埋もれているように感じるかもしれません。でも、売上がゼロじゃないなら、誰かには選ばれているんです。大勢からは選ばれていなくても、選んでくれる人がいるなら、必ず選ばれる理由があるはずです。
「なぜ、こんな無名商品を選んで くれたんだろう?」
「有名な会社や人気の商品もある中で、何でウチの商品を選んでくれたんだろう?」と考えてみてください。
「選んでくれない人たち」や「選んでもらえない理由」よりも、「ウチを選んでくれた人」は、何をしたい人(ダレ)で、ナゼ自分を選んでくれたのか。自分のどこを気に入ったのかを、(感謝と共に)把握することが大切。これを「ダレナゼ」と言います。ダレナゼを把握しましょう。
よくある勘違いは、自分たちが思う「強み」と、お客さんが感じる「魅力」のズレです。例えば「お菓子の風林火山製法こそが当社のウリだ!」と思っていても、実際のお客さんは「小分けできてパッケージがかわいい」という理由で買っていたりします。「選んでくれている理由」を知らずに、風林火山製法のアピールをしている。自分の商品はかわいいものですが、これでは「親バカ状態」です(メーカーさんに多いです)。コダワリも大切ですが、まずはダレナゼです。

周りを見回して「キャラ立ち」を目指そう
まずは、脱・親バカとして、たくさんのライバル商品の中から「自分の商品を選んでくれた人」がどんな良さを感じていたのかを理解しましょう。「ダレナゼ理解」がスタート地点です。
そして、その人が認めてくれた自分の魅力を、多くの人に向けてもっと伝わりやすく表現していくことが、選ばれるお店になるための第一歩なんです。
誕生日ケーキの中で一番になる必要はありません。「自分の息子のための誕生日ケーキを探している人」にとって一番の商品になれればいいんです。筆者はこれを「キャラ立ち」と呼んでいます。ダレナゼを把握し、キャラ立ちをしていきましょう。そうすると「棲み分け」ができます。
前述の「小さい男の子が喜ぶ」ケーキを探しているお客さんなら、見せたいのは、「小さい男の子が笑顔で驚いている誕生日の写真」とケーキですよね。キャッチコピーは「記憶に残る誕生日」とか。キャラが立ってますよね。
しかし残念ながら、多くの商品ページで、ランキング1位です、今ならポイント5倍です、パティシエがこだわりましたとか、ズレたアピールがされています。実店舗なら一人一人のお客さんの要望を伺って、対話しながら案内できますが、ネットでは一方通行になりがちですよね。
「ダレナゼ」と「キャラ立ち」を実践しよう
ここでは簡単に、ダレナゼとキャラ立ちの実践について紹介します。
まずダレナゼです。お客さんに「選ばれている理由」を調べましょう。どういうシーンで、どういう用途で使われているのか。類似商品が色々ある中でなぜ選ばれたのか。商品レビューがたまっていれば、それを読むのが一番手っ取り早いです。たまっていなければ、店頭のお客さんなどに話しかけて探ったり、購入者へのアンケートがお勧めです(詳しくは法則53を参照)。
「ダレナゼ」が分かったら、次は「キャラ立ち」です。ダレナゼ=お客さんが商品を選んだ理由を把握し、その情報を元に商品ページを直していけば、お客さんのニーズに応えられる、キャラの立った商品ページになります。例えば、レビューで「パッケージがかわいい」という評価が多ければ、その点を強調します。新築祝いに使われることが多いなら「新築祝いに人気」と追記します。お客さんから言及・評価されていない箇所は、削らなくてもいいですが、あまり目立たせる必要はないでしょう。このように、お客さんの実際の評価と、親バカ状態だった商品ページのギャップを埋めていきましょう。

「自分で自分を評価する」だけでなく「相手基準で自分を評価してみる」という話でした。自己満足を避け、相手の期待を踏まえることが、どんな仕事でも重要ですよね。この話は組織編にも出てきます(法則35)。
この記事は『売れる! EC事業の経営・運営 ネットショップ担当者、チームのための成功法則。』(インプレス刊)の一部を編集し、公開しているものです。
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