ここからは追客の話です。まず、メルマガやLINEを活用した「追客施策」を紹介します。これは購入客や見込客へのリピート促進に加えて、好感度を高めて高評価レビューを増やすなどの「店舗・商品の評判」を高める効果も期待できる施策です。
追客施策について
追客で使う媒体は、後述する「メルマガ」「LINE」が中心ですが、他にも同封物や定型メール、紙のDM、1to1電話フォロー、SNSが使えます。対象は、購入済みのお客さんに加え、LINE友達やフォロワーなど「購入まで至っていない見込客」を含みます。
追客を頑張るとネット上にたくさんの評判が蓄積されたり、口コミが発生したりといった理想的な状態になりますよ。
ネット上のお客さんは、初見においては複数の選択肢を徹底して見比べる厳しい側面がありますが、一方で「いちいち比べるのが面倒」「いったん信頼した店になれば価格で比べずに買う」という側面もあります。
つまり、競争の激しいECにおいて、追客は「競争を避ける・有利にする」効果が期待できるわけです。特にリピートしない商品は「ネット上に蓄積された評判」が今後の集客力を左右するので、コツコツ取り組んでいきましょう。追客施策はあまり費用がかからないのも魅力です。
現代のメルマガは「通知メール」的
以前はメルマガによるリピート促進は活発に行われていましたが、ユーザーの閲覧環境がPCからスマホになったこと、受け取る情報量が圧倒的に増えたことにより、その形式は大きく変わっています。
簡単に言うと、シンプルな通知メールのような形が増えています。その理由は、商品ページと同じでお客さんがスマホ環境で「時間がない中で見る」からです。
告知内容は、開催中イベントの通知、新着商品の通知、夏の◯◯特集のお知らせ、モール内イベント(今ならポイント◯倍)が中心です。リンク先には、法則12で紹介した「特集ページ」を載せます。
凝ったやり方も可能ですが、まずはシンプルな形でよいと思います。ただし、「楽天のイベントにそのまま乗っかってコピペしただけの件名と内容」のメルマガは読み飛ばされますし、むしろ配信停止が増えるので要注意です。形はシンプルでも内容は独自性を大切にしてください。
ブログなどのコンテンツ制作(フック集客)をしている場合は、そのコンテンツをメルマガにも載せるとよいでしょう。
開封されるかどうかは件名が重要です。件名は、メルマガ本文のメリットを端的に要約するケースが多いです。読み物の場合は「カビ対策、意外な◯◯で解決できます」などと、伏せ字で興味を引くのもアリです。有名店のメルマガをいくつか取るとイメージが湧くと思います。AIに書いてもらうこともできます(法則36を参照)。
補足として、スマホのメールソフトでは件名よりも送信者名が大きく表記されるので、実は「店舗名」もかなり重要です(ちなみに店舗名は検索対策にも有効です)。細かい工夫としては、メルマガ冒頭部分では、スタッフの名乗りや顔写真・アイコンを入れると、売り手の「実在感」が発生します。人間が商売をしている感じが出ます。何度も流すと、顔と名前を覚えてくれるわけです。
シンプルな通知メール形式であれば、後述するLINEにも原稿を転用できます。本文の字数も数百文字程度で済み、Excelやスプレッドシートで原稿管理ができます。スプレッドシートで進行表を作って、決まった日に流していくわけです。業務フローが確立されると負担が少なく取り組めますし、スタッフへの移管も可能になります(法則26参照)。
継続的に出し続ける手間は発生しますが、かなり定型的な作業なので、スタッフに移管できる割合は大きいです。まだやっていない方はぜひ検討してください(業務移管は、法則41参照)。
効果検証については、メルマガも方程式で因数分解をすることができるので、メルマガの各段階(開封、クリック、購入)を数値で管理し、改善点を特定して対策を講じるとよいでしょう。開封率はどうか、クリック率がどうかなどを見ていきます。
LINE活用
LINEは、SNSの一種ですが、集客よりはメルマガに近い存在です。法則7のプッシュ施策で紹介したように「LINE友だち登録で100ポイント」などの「オファー」を案内して、友だちになってもらい、情報を発信します。メルマガと違うのは次の点です。
①反応が早い。短いオファーを投げてすぐ反応してくれる
②リッチメニューがあるので、出張所のような案内ができる
他にも、対話やセグメント配信などの1to1的なカスタマイズ対応が可能です。リッチメニュー(トーク画面の下部に表示できるタイル状のメニュー)では、以下のような機能を持たせることが一般的です。この場合、メニューから選択するので、メルマガやトークによるオファーとちょっと違う買い物体験ができます。
1. 商品カテゴリー一覧
2. キャンペーン・特集・新着商品の案内
3. 問い合わせの誘導
4. コンテンツやSNSへの導線
5. ユーザー状況に応じたカスタマイズ提案
また、LINEを活用した問い合わせ機能も重要です。問い合わせを削減したい場合は、リッチメニューから「よくあるお問い合わせ」に誘導することで、自分で問題解決をしてもらい、CSの手間を減らせます(法則30)。
逆に高単価な商品を扱う店などで、「たくさん問い合わせてもらって対話の機会を作りたい」場合は、無料相談などを謳い、問い合わせを増やすこともできます。
YouTube動画やブログ記事があるお店はLINEからブログに誘導したりブログからLINEに誘導したりもよいでしょう。フック集客でコンテンツを発信して新規ユーザーと接点を持つ→プッシュ集客で友達獲得→LINE追客でコンテンツをさらに見てもらったり買い物してもらったり、という流れを作ることができるわけです。
メルマガやLINEによる追客は、「出品型」の事業者にはできない「お店」ならではの活動です。お店の名前や特長を覚えてもらえれば、店舗名での検索が増えるなど、ブランドが強まっていきます。
この記事は『売れる! EC事業の経営・運営 ネットショップ担当者、チームのための成功法則。』(インプレス刊)の一部を編集し、公開しているものです。
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