米国ディスカウントストアチェーンのTargetは、「ChatGPT」内にベータ版でリリースするアプリの配信を通じて、「一気通貫した買い物体験」を提供すると発表しました。「ChatGPT」内のアプリを通じて、消費者は複数の商品を1回の買い物でまとめ購入したり、生鮮食品の購入のほか、ドライブスルー、店舗受け取りなどのさまざまな受け取り方法を選ぶことができます。アプリの特長を解説します。
「ChatGPT」内で動く自社アプリを開発
米国ミネソタ州に本社を置くTargetは、OpenAIの生成AIプラットフォーム「ChatGPT」内で消費者が利用できるアプリを開発。消費者が「ChatGPT」でTargetの商品を検索し購入できるようにすると発表しました。
Targetによると、このアプリは「レコメンドされた会話型のショッピング体験」を提供し、AIを活用した買い物を再構築する取り組みの一部と説明しています。また、Targetは、「ホリデーシーズンを前に、より多くのAI技術を活用する戦略の一環でもある」と補足しました。

まとめ買い、配送オプションの選択まで「ChatGPT」から完結
Targetは「ChatGPT」と連携するアプリを、2025年の感謝祭の週(11月24~30日)にベータ版として公開すると11月19日に発表しました。
この「ChatGPT」版Targetアプリでは、消費者は複数の商品をまとめて1回の取引で購入でき、生鮮食品の購入もできるようになります。また、ドライブスルーでの受け取りや、店舗受け取り(BOPIS)などさまざまな受け取りオプションも選択できます。
さらに、ユーザーはアプリへのパーソナライズされた商品提案の依頼や、Targetの商品カタログ全体を閲覧し商品を選択してオンライン上の買い物かごに入れたり、Targetの会員アカウントを通じて購入したりすることができます。

Targetのエグゼクティブバイスプレジデントであり、最高情報・プロダクト責任者であるプラット・ヴェマナ氏は、リリースで「Targetは、消費者が利用する場所に合わせてユーザー接点を拡大しており、何百万人もの人々が訪れる『ChatGPT』のような新しい領域にも対応している」と説明しています。
消費者の注目が集まっている「ChatGPT」という新たなチャネルに、ショッピング機能を導入する最初の小売事業者の1つであることを誇りに思います。「ChatGPT」内のTargetアプリを通じて、お客さまのTarget商品の検索を店内通路を歩くのと同じように簡単で楽しいものにするため、OpenAIと提携しています。
TargetのAI活用における目標はシンプルです。お客さまがまるで友人と話しているかのように自然な会話で、なおかつ役に立ち、ワクワクする買い物体験を提供することです。(ヴェマナ氏)
OpenAIとの提携はWalmartを追随
なお、Targetの今回の発表は、約1か月前の10月14日にOpenAIとの提携を発表した競合企業であるWalmartに続く形となります。Walmartは、この提携を「小売業の次世代到来」と表現し、「ChatGPT」とのチャット画面からECサイトの商品を消費者が直接購入できる新機能「Instant Checkout」をWalmartの商品の買い物に活用すると発表しています。
「ChatGPT」内のTargetアプリ利用例
Targetは、アプリの利用例として次のケースをあげています。
「ChatGPT」画面でユーザーがTargetを「タグ付け」し、「冬の夜に映画作品の鑑賞を家族で楽しみたい」と依頼します。すると、Targetアプリが、毛布、キャンドル、スナック、スリッパなどの冬向け関連商品を提案します。
ユーザーは提案された商品を閲覧し、オンライン上のカートに追加できます。その後、店舗の駐車場で商品を受け取るカーブサイドピックアップ、店舗受取、配送などの受け取り方法を選んで購入できます。
Targetは、今回の取り組みは「まだ始まりにすぎない」としています。今後、Targetの無料会員プログラム「Target Circle」アカウントとの連携や、当日配送といった新機能を追加していく予定です。Targetは利用者の使い方に合わせてさらに利便性を向上させる計画としています。
Targetが描くAIテクノロジーの活用拡大・深化
Targetによると、OpenAIとの提携は「テクノロジーへの幅広い投資」の一部だといいます。Targetの各部門ではすでに、OpenAIが提供する法人向けの最上位プラン「ChatGPT Enterprise」の活用が進んでおり、業務のスピード向上、作業プロセスの効率化、クリエイティブな業務にあてる時間の捻出に役立っていると説明しています。
さらにTargetは、AIを用いてサプライチェーン予測を改善し、店舗作業を効率化。消費者のデジタルショッピング体験のパーソナライゼーションも進めています。
Targetは、単に“AIを使う企業”というだけでなく、“AIを基盤に用いて運営する企業”として定義されていくでしょう。AIは、トレンドの素早いキャッチアップを可能にし、お客さまとのやり取りをより容易かつ快適にし、さらに従業員がクリエイティブなど本当に重要な業務に集中できるよう、負担を減らしています。(ヴェマナ氏)