通販新聞 2015/11/16 12:00

通販事業者にとって永遠の課題である新規顧客の開拓。すでに各社とも自社の商品やサービスをあの手この手でアピールして新たな顧客の開拓を進めているが、ここで1つの重要なポイントとなりそうなのが「既存の見込み客層以外へのアプローチ」だ。効率性を求めてより顧客となりやすい層へアプローチを集中させがちだが、特定の同じ層だけにアプローチを繰り返せばいずれ効果が落ちていくわけで、これまでとは異なる新規層にアプローチしていくことも重要だ。注目すべき通販各社の施策を見ていく。(写真は東京デザインウィークに出展したアスクルの日用品通販サイト「LOHACO(ロハコ)」のブースの様子)

新規顧客の効率的な開拓で売上を伸ばす秘訣。新たな客層の獲得を進める4社の事例①
東京デザインウィークに出展した「ロハコ」のブース

アスクルの「ロハコ」、「くらしに馴染む」デザインで訴求、高感度層へリーチ

アスクルが運営する日用品通販サイト「LOHACO(ロハコ)」は10月24日から11月3日まで東京・神宮外苑で開催した最先端のデザイン・アートの展示イベント「東京デザインウィーク」にブース出展した

アスクルでは昨年から大手メーカーを対象に社内に「ロハコ」で収集した各種ビックデータをもとにマーケティング戦略や商品開発などの研究ができる「LOHACO ECマーケティングラボ」を設置しているが、同ラボの参加メーカーの中の21社とともに各社が「くらしに馴染む」をコンセプトとした商品パッケージのデザインを考え、同ブース内で様々な商品を展示した。

例えば、今回の展示会用にデザインし、10月20日から「ロハコ」限定で先行販売を開始したユニチャームの生理用品「センターインコンパクトフレグランス ビビッドフラワー デザイン」。同商品は生理用品を入れた3つの花柄のジップ付きファスナー袋をシンプルな箱の中に収納したもの。「店頭デザインでは難しいが、これなら箱のまま、トイレにおいても問題ない。また、袋には“花柄”を採用しており、何が入っているのか分からず、持ち歩き時にも便利」(同社)だ。

展示品を手に取ると使用シーンの映像が流れる

同じく今回の展示会用にデザインしたキーコーヒーのコーヒードリッパー「クリスタルドリッパー」は内側のダイヤ形状の突起が特徴的だが、スタイリッシュなデザイン性だけでなく、この突起により、湯の流れをコントロールし、「誰でもおいしいコーヒーが入れられる」(同)という。

このほか、今回の展示会用のデザインではないものの、話題となった高級茶葉「玉露」を使い、瓶詰とした伊藤園の「特別限定品「瓶 お~いお茶 玉露」や商品名などが小さくスタイリッシュなデザインなどが特徴の「エリエール除菌できるアルコールタオル」などまだ販売していないプロトタイプのデザインパッケージなども展示した。

「通常のパッケージデザインは店頭での購入を考え、気付いてもらい、手に取ってもらえるような商品名やメーカー名が大きく、また様々な色を使った目立つデザインが大半。しかし、通販の場合は気付きのために目立たせる必要がない。むしろ、目立つデザインは店頭ではよいが、生活空間では浮いてしまい、使い勝手が悪くなることが多い。各メーカーには"通販ならではのデザイン"というものを考えて頂いた」(同社)という。

ブースでは展示した21社の商品のうち、16商品についてはブース内の巨大モニターの前に設置し、来場者が手に取ると、当該商品の特徴や実際に生活空間で使用した際の感じなどが分かる15秒程度の映像が自動的に再生するという“仕掛け”を施した。「来場者の方々により分かりやすく、驚きを持って楽しんで頂けるように、チームラボとともにこの演出を考えた」(同社)という。なお、どの商品がどれだけ手に取られたかというデータなども集計しており、当該データなどは来場者へのアンケートなどとともに参加メーカーにフィードバックする予定で、メーカーが商品デザインを考える上での参考に役立てたい狙い

このブースを設置した「東京デザインウィーク」は入場に3000円(一般)が必要で、来場者はお金を支払っても来場するようなデザイン感度の高い層だと言えるが、商品パッケージのデザイン性やブース内での“仕掛け”などが奏功し、ブース来場者に対して、行っているアンケートによると、「店で売っているものは家では目立つところには置きなくないが、このパッケージならそのまま置いても大丈夫。リビングやキッチンにすごく馴染みそう」「同じ値段で2つ並んでいるなら絶対、こっちを買う!」といったポジティブな声が大半を占め、期間中に同ブースに来場した約1万人の来場者から好評なよう。「デザインの価値で商品を選んで頂けるデザイン感度の高い層にPRしたい。また、そうした層からSNSで今回のブースについて拡散して頂き、そこからのくちコミの広がりなども期待している」(同社)としている。

スタートトゥデイ、コーデアプリの利用促進でコンテスト

新規顧客の効率的な開拓で売上を伸ばす秘訣。新たな客層の獲得を進める4社の事例④
「ウェア」の普及を狙い、学校でコンテストを実施(写真はバンタンデザインでの表彰式の様子)

スタートトゥデイは同社のファッションコーディネートアプリ「ウェア」の利用促進などを目的に日米の服飾系学校と連携したファッションコンテストに取り組んでいる。国内は都内のバンタンデザイン研究所と文化服装学院の2校、米国はプラット・インスティテュートとエルアイエムカッレジのニューヨークの2校。コンテストという形で「ウェア」の利用促進を図る背景には、卒業後にアパレルの現場で働くコアな利用層を早い段階で養成するという狙いがあるようだ。

国内の2校では約1カ月間のコンテスト期間中、「ウェア」に投稿されたコーディネートの「いいね」数などを評価して人気度を競った。結果、10月18日にはバンタンデザイン研究所で、11月3日には文化服装学院でそれぞれコンテストの表彰式を開催、グランプリや各賞の発表が行われた。

この取り組みの狙いは「ウェア」の認知拡大や利用促進。そもそも「ウェア」は一般ユーザー層が中心だが、一方でショップスタッフらもコーディネートを介して情報発信を行っている。スタートトゥデイのWEAR事業室営業ブロックディレクターの中川龍氏は「『ウェア』をこれから普及していくためには一般のユーザー層にとどまらず、アパレル業界のコアな層が活用するのが1つのポイントになる。それは日本でも世界でも同じ」とする。服飾学校の生徒は今後アパレル業界で働くケースが多い。そうした“潜在的なコア層”に対して学生のうちから「ウェア」に親しんでもらおうというわけだ。

一方の学生側もコンテストに参加することで「ウェア」の活用方法を学ぶことでできる。「将来的にアパレルの業界に入った時にもSNSを活用する場面が出てくる。それを先に学んでおくことで、ビジネスで役立つノウハウも獲得できる」と中川氏。そのため双方にメリットがあると判断し、今回の取り組みに至ったようだ。

ベルーナ、通販ワインをステーキ店で訴求

新規顧客の効率的な開拓で売上を伸ばす秘訣。新たな客層の獲得を進める4社の事例⑤
シェフが目の前で調理する

ベルーナは運営する飲食店来店客に対し、通販展開する「ワイン」を訴求するなどのアプローチを行っている。ベルーナでは子会社のエルドラドを介して11月1日、東京・銀座にステーキハウス「銀座のステーキ」の2号店として「銀座中央店」を開店した。

「銀座のステーキ」は高級鉄板焼き店で、「最高級の黒毛和牛を好きな食べ方で食べ放題」がコンセプト。A5ランクの黒毛和牛ステーキを「リミットプライス」(定額コース)で楽しめる。1号店「銀座本店」は、東京・新橋に昨年10月オープン。7月には席数を増やし個室もオープンした。

2号店は銀座四丁目交差点近くの好立地。メニューを刷新したほか、ランチタイム営業も開始した。ランチコースは3800円と5800円の2種類で、食べ放題は5800円のコース。ディナーはすべて定額の食べ放題で、7800円から1万6800円までの4種類となり、高級食材である黒アワビのステーキが食べられるコースもある(価格はいずれも税別)。価格が高めなことから、ランチタイムのターゲットはサラリーマンではなく、銀座を訪れる観光客などだ。

店では、ベルーナで扱うワインを飲むことができる。グラス800円のワインも揃えるなど、比較的手頃な価格だ。店内にはワインセラーも設けている。1号店には、レジの前に同社が発行するワインカタログを設置。「ワインをあまり飲んだことがない人に興味を持ってもらうきっかけになれば」(経営企画室)という狙いだ。2号店にカタログを置くかどうかは未定だが、同様の試みを行う可能性もあるようだ。

ヤフーショッピング、キャラ・メーカーとコラボ

新規顧客の効率的な開拓で売上を伸ばす秘訣。新たな客層の獲得を進める4社の事例⑦
コラボケーキでクリスマス商戦に挑む

「“すごいケーキ”ができた。ネットでケーキを買ったことのない人にも自信を持ってお勧めしたい」。ヤフーの仮想モール「ヤフーショッピング」で人気キャラや有名ブランドと同モールの人気ストアが共同で作ったクリスマス用コラボケーキの予約受付を11月2日から開始した。

「妖怪ウォッチ」のロールタワーケーキ(税込4000円=販売ストア・irina)や「ウルトラマン」の名シーンを再現したホールケーキ(同3980円=同・オーガニックサイバーストア)など人気キャラのケーキのほか、福岡ソフトバンクホークスの生クリーム仕様ケーキ(同4500円=同・果子乃季)や江崎グリコのチョコ「アーモンドピーク」のケーキ(同4536円=同・バニラビーンズ)、変わり種ではスマホにセットすると全方位映像を閲覧できるバーチャルリアリティ体験機によって人気声優とクリスマスを一緒に過ごす疑似体験ができるセット「戸松遥と過ごすバーチャルクリスマス」(同4584円=同・新杵堂)など8種類のクリスマスケーキを「ヤフーショッピング」でのみ数量限定で販売する。

「子供に人気のキャラはもちろん、野球好きやチョコが大好きな大人の女性、一人ぼっちでクリスマスを過ごす人など大人も子供も男も女も皆が楽しめるクリスマスケーキが作れた」(同社)として、キャラやブランドなどそれぞれの分野に興味を持つ層に訴求し、これまでのクリスマス商戦では獲得できなかった新たな層のケーキ購入を促す狙い。ヤフーショッピングでは有料会員へのポイント増倍施策やホークス優勝セールが好調なことや今回のコラボケーキの話題性などで、「クリスマス・年末商戦の目標流通総額は前年同期比で170%を見込む」(同社)としている。

「通販新聞」掲載のオリジナル版はこちら:
新たな客層の開拓、各社の取り組みは(2015/11/05)

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