通販新聞 2016/1/20 6:00

2016年の通販市場は上向きに」──。通販新聞が通販実施企業を対象に実施した「2016年の見通しと展望」に関する聞き取り調査によると、回答企業の半数以上が「2016年の通販市場の景況感」について上向きになるとの見方を示した。「横ばい」などの回答を含めると8割の企業が今年の見通しについて概ねポジティブにとらえているよう。ネット通販の拡大や海外観光客の旺盛なインバウンド消費が市場拡大を後押しすると見ているようだ。一方で足元は「暖冬」の影響で苦戦しているところも多いようだ。

【今年の景気は?】ECやインバウンド需要で拡大

日本通信販売協会(JADMA)が1月8日に都内で開催した賀詞交歓会に出席した通販実施企業を中心に、本紙が実施した聞き取り調査などによると、有効回答が得られた30社の中で2016年の通販市場の動向について「上向く」と回答が半数、「横ばいまたはやや上向く」が約3割とポジティブな回答が大半を占めた。

徹底予測2016 通販・EC企業が注視する「今年の景気」「消費マインド」① 2016年の通販市場の景気は?

「上向く」との回答では「他業種の参入もあるし、どんどん規模が膨らむのでは」(ティーライフ)、「EC化率が毎年、一定率増えているので、2016年も伸びるのでは」(全日空商事)、「ECや訪日外国人のインバウンド需要は伸びており、市場全体も拡大すると思う」(トランスコスモス・日本直販事業)、「機能性表示食品制度が始まった影響などで市場に追い風」(世田谷自然食品)との声が多かった。

また、「横ばいまたはやや上向く」との回答では「ネット通販は相変わらず成長しているので、全体としては伸びるだろうが、総合通販企業は厳しいのでは」(スクロール)、「商品の企画開発力や海外での知名度などでインバウンド需要などをどの程度取り込めるか企業間格差が出てくる」(オルビス)、「IoTなどを使い、ネット通販の進化した形が生まれるのではないか」(ブルックス)との声などがあった。

「下向く」「どちらとも言えない」の回答では「カタログ通販は厳しい。ネット通販とは異なるお客様に求められる新しいものを確立していく必要がある」(カタログハウス)、「個人の消費マインドは厳しい状況が続いている。景気回復に賃金の上昇が追い付いていないことが原因で節約志向はとまらない。今年も同様の状況が続くものと思われるが、景気の回復が本格化し、中小企業までその恩恵が行きわたって所得が上昇すれば消費回復も考えられる」(千趣会)との声もあった。

また、通販ビジネスを支えるコールセンターやメーリングサービスを行う事業者の「2016年の景況感」についても各団体の賀詞交歓会で聞き取り調査を実施した。

コールセンター運営事業者は「去年の流れで好調な業界はあるが、中には先を見越してかなりコストをセーブしていくような動きもある。製造業などは世界で戦っており、日本の景気がいいから単純にコールのボリュームに直結するかというとそんなことはない。我々としては既存のエンドユーザーのお客様の継続率を高めるといったほうに注力することが必要かもしれない」(TMJ)、「昨年は景気が足踏みした感があるが、ゆるやかに回復しているのだろう。ただ、そうなると賃金のアップや労働力の不足などにもつながるため、100%手放しで喜ぶわけにもいかない」(キューアンドエー)。

メーリングサービス事業者は「去年は(クライアントが)同じ業界の中でもまだら模様だった。12月は通販物流、DM業務はまずまず。今年は政府主導による個人消費の底上げ策が現実味を増しているので特に4月以降に期待している。ただし、景気好転による人不足などは大きな課題になるだろう」(アドレス通商)、「通販は今年も引き続き伸びると思う。加えて食品業界などからのキャンペーン業務の需要も伸びており、ネガティブな話は聞いていない。後は自分たちがどのジャンルに適切に設備投資などをしていけるか」(ディーエムエス)、「年末の業務は例年より少し静かな印象。今後も景気の見通しとして不透明な部分がある。賃上げの動きや地方の活性化が実現できるかどうかなど不安要素はいくつか考えられる」(アテナ)などの声があった。

【足元と今年の業績は?】暖冬で足元苦戦も見通しは"堅調"

徹底予測2016 通販・EC企業が注視する「今年の景気」「消費マインド」② 2016年の足元と今後の業績見通し

「2016年の出足の状況」は「暖冬の影響で厳しい。コートや『あったかインナー』などは売れない。前年に比べると落ちるのではないか」(ベルーナ)、「アパレルは暖冬の影響で厳しい。ただ、グループ会社の豆腐の盛田屋の『豆乳よーぐるとぱっく玉の輿』は絶好調。中国人の大量購入もあり、好調な売れ行きを維持している」(スクロール)、「暖冬の影響で11月から12月中旬にかけて苦戦したが、キャンペーン等の効果もあり、12月下旬以降は持ち直した」(ディノス・セシール)、「足元はよくない。例年より暖かいことが響いている」(JAFサービス)、「12月は掃除用品を軸に売り上げが例年以上に伸びたが、暖冬の影響もあり1~2月でどの程度、冬物が売れるかがポイントになりそう」(テレビ東京ダイレクト)、「百貨店の強みが出せる企画は引き続き好調で、昨年12月の『おせち』の売り上げも前年比20%増だった。一方で衣料品は暖冬の影響を受けている」(高島屋)、「足もとの事業環境は良いとは言えない。通販業界だけでないが、暖冬の影響でアパレル市場全体でもコートなど重衣料の在庫がふくらんでいる」(オットージャパン)など暖冬の影響を受けたとの声も多かった。

ただ、一方で、「通販サイトの12月の売上実績は前年同月比で120%と好調を維持している」(全日空商事)、「足元はまずまず、底は打ったように思う。新規開拓が順調に進み、顧客は増加傾向にある」(ティーライフ)、「昨年に種まきしてきたことが花を開き始めており、足元の業績は順調」(カタログハウス)、「月次売上高は2桁増収と足元は堅調」(世田谷自然食品)、「機能性表示食品の売れ行きが好調で前期(15年11月期)の通販売上高は十数%増で着地の見通し。今期も12月の出足はとてもよい」(トウ・キユーピー)、「10~11月は厳しかったが、12月は堅調。1月もまずまず」(オルビス)、「順調。月次では2桁増収で推移している」(ダイドードリンコ)、と堅調な出足を見せる企業も多かった。

「2016年の業績の見通し」や「方向性」については「来年3月までは横ばいかややプラスで推移するのではないか。来年4月は消費増税があるので、来年は4月以降厳しくなりそう」(ベルーナ)、「グループの豆腐の盛田屋の『豆乳よーぐるとぱっく玉の輿』は海外展開を計画しており、スクロール360では豆腐の盛田屋で作った物流インフラを他の通販会社に提供したいと考えている。一方、アパレルはあまり期待できないだろう。連結ベースでは横ばいかややプラスくらいか」(スクロール)、「基幹ブランドである『ベルメゾンデイズ』が今年から本格展開したこともあり、販売促進などのプロモーションを強化し、ブランド構築の始まりとしたい。昨年は赤字決算だったため、今年はV字回復を目指し、新社長のもと新たな体制でスピーディーな経営を実践していく」(千趣会)、「今年は通販事業で前年比で増収を計画している。当たり前のことではあるが、“顧客機軸”を貫けるかがテーマ。普段のルーティーン業務を含めて商品開発や売り場・誌面作りなどにしっかりと顧客の声が反映されているか、すべての事業部員が愚直に顧客に向き合うことが求められている」(高島屋)との声があった。

【今年の関心事は?】やはり気になる消費増税の影響

徹底予測2016 通販・EC企業が注視する「今年の景気」「消費マインド」③ 2016年の関心ごととは

通販実施企業各社に「今年の“関心事”」を尋ねたところ、来春に迫った消費増税や昨年に各国で合意したTPP、機能性表示食品と回答する事業者が多かった

主な声としては「再来年度の再増税」(JAFサービス)、「再増税は2014年の8%の時と同様に大きな影響があると考えている」(千趣会)、「消費増税は気になる。増税で世の中の消費マインドがどう変わるか注目したい」(テレビ東京ダイレクト)、「消費増税で消費マインドは相当、冷えると思うがそれを乗り越えるために商品やサービス、値付けをどう戦略的に考えていくか」(カタログハウス)といった来年の春に迫った消費増税を関心事として挙げる企業が多かった。

また、「機能性表示食品制度は活用はしていないが、有力な商材が見つかったときに活用したい」(アプロス)、「マーケットで機能性食品が選ばれるようになるのか注目している」(フジッコ)、「機能性表示食品の商品開発についてはこれから。また為替動向も気になる」(ティーライフ)、「海外販売全般。越境ECも海外販売の1カテゴリーとなる。TPP発効に伴うASEAN市場もキーになるだろう」(スクロール)、「海外。Gnzoという動画配信サービスの子会社が海外展開を考えており、力を入れていきたい。あとは為替の動向も注視」(ブルックス)、「中国を中心としたアジア向け越境EC、団塊世代向けEC、EC物流サービス・時間短縮、コンテンツマーケティングの進化などが更に注目される話題になると予測している。また、(今後の話として)消費増税による駆け込み増売と次年度の反動。TPPについては時間をかけて段階的に影響が出てくると思われるが、即、効力を発するワインなどでは値下げを期待している」(全日空商事)など機能性表示食品制度や海外展開、「為替の動き。読めない部分がある。円安と読んでいたが直近は円高に振れている」(ベルーナ)など動き次第で通販企業の収益にも大きな影を落としかねない為替動向をあげた企業も多数あった。

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本紙聞き取り調査回答企業
インペリアル・エンタープライズ/アプロス/フジッコ/ベルーナ/スクロール/ブルックス/ティーライフ/JAFサービス/全日空商事/テレビ東京ダイレクト/トランスコスモス(日本直販事業)/カタログハウス/ディノス・セシール/世田谷自然食品/トウ・キユーピー/オルビス/ダイドードリンコ/ナノエッグ/高島屋/オットージャパン/千趣会(順不同、他の企業は事情により社名は非公開)

「通販新聞」掲載のオリジナル版はこちら:
【本紙聞き取り調査】 2016年の通販市場は『上向く』、半数以上が明るい見通し(2016/01/14)

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