フェリシモ猫部が人気を集める理由。カタログ通販大手が生んだ「顧客に愛される部活」
今回は当コーナー初の関西出張! 猫好きなら知らない人は多分いないフェリシモ猫部さんに突撃です! フェリシモは1965年創立のカタログ通販大手ですが、猫部の商品は抜群のSNS映えが特徴。見かけたら思わず「いいね!」したくなる、ビックリして人に教えたくなる、もっと言うと「こんな面白い商品ばっかり作っていてホントに大丈夫? 」と心配になってしまう。そんな商品はどうやって生まれるのでしょうか? 兵庫県神戸市の本社におじゃましました。 記事の最後にプレゼントのお知らせがあります。
猫好きなら知らない人はいないと書きましたが、猫好きじゃない人にも読んでもらいたいので、まずはフェリシモ猫部の商品をいくつかご紹介します。
まずは「にゃんそうこう」。愛猫に引っかかれた名誉の傷に貼るための絆創膏、それが「にゃんそうこう」。SNSで爆発的に拡散し、第2弾も好評発売中です。
お次は「猫の肉球の香りハンドクリーム」。猫用ではありません。自らの手も猫の肉球と同じ香りにしたい……そんな重度の猫好きの欲望がハンドクリームになりました。
「猫まみれまくら&布団カバーセット」と「猫のウォールシール」があれば、こんな風に猫まみれの部屋にすることも可能です。ここはどこのパラダイスでしょうか。
みなさん、付いて来てますかーー?
こんなユニークな商品の数々を生み出したのがフェリシモ猫部なのです。
社内の部活動から生まれた「猫部」
フェリシモ猫部は社内の部活動から始まりました。フェリシモでは毎週水曜日の午前中を、所属部署に関わらず好きなテーマで集まって部活を作り、事業化を目指して活動するための時間に割り当てられています。猫部もその中の1つ。部員6名でスタートした部活でした。
部長がこの方。フェリシモ 生活雑貨事業部 猫部グループ グループリーダーの松本 竜平さん。
もともとはフェリシモのWeb担当者だった松本さん。2010年9月に猫部が結成されると、業務のかたわら累計200の猫関連商品の企画をまとめ、WebサイトやSNSの運営なども手がけてきました。すごすぎです。成果が実を結び、この3月からは猫部専任になりました。
SNSでお客さまと一緒に商品を作る
フェリシモでは1年間に数万種類の商品を開発しています。顧客が欲しい商品を作るために「どういう商品がほしいか」という意見を聞くことは以前からずっと行ってきました。でも、元Web担当の松本さんの商品作りはさらに一歩踏み込んでいます。
SNSを使ってユーザーさんと商品開発をしていくということを大事にしています。例えばこの「猫ふせん」の猫の写真は、すべてユーザーさんから送ってもらった写真なんです。
TwitterとFacebookで「こういう写真を送ってください」って募集したら、1週間くらいで約2,400枚集まりました。その写真で試作品を作って厳選したんです。
企画中に仕様で迷ったとき、前は社内で聞いて回っていたんですけど、最近はSNSで「どっちが良いですか?」って直接聞いちゃうんです。そうすると「こっちがいい」とか「こういうところも考えて」とかってご意見をいただけるんです。買っていただく人に聞いた方が良いかなと思って。発売されると「待ってました!」って言ってもらえるんです。
「猫のおでこの香りのファブリックウォーター」も、最初にTwitterで「猫のおでこの香り」についてアンケートを実施。多かったのが「焼きたてのパンの香り」だったため、それをベースに何パターンか作り、猫カフェに行っていろんな猫を嗅いだり、デパートでたくさんパンを買って来てみんなで嗅いだりして決めたそうです。……無茶苦茶楽しそう!
SNSウケは意識してます。商品を発表したときにすごくリツイートされて拡散されていくとか、いろんなメディアに取り上げられるということも気にして作っています。あと、どうやって商品を認知してもらうかということで、Webサイトに商品以外のコンテンツも用意して毎日見に来てもらえるようにするっていうのも1つです。
とはいえ、成果が出なければ事業としては続きません。
実はあまり成果は考えずにやってきましたが、運が良かったところもあって、結構どれも売れました。他の商品の平均よりも上なんです。
部員はそれぞれ自分の部署でやらなくてはいけない仕事もあるんですが、猫部で楽しみながら息抜きみたいな感じで企画したものが、ゆるくて逆に伝わって売れるっていうのが最近のパターンです。
その肩の力が抜けた感じや、企画段階からオープンに顧客に飛び込んでいく、そんな姿勢が愛されてファンを増やし、成果につながっているんでしょうね。
リアルショップでお客さまの肌感覚をつかむ
オムニチャネルにも取り組んでいます。「フェリシモ猫部・期間限定ショップ」と称して2015年の2月に渋谷ヒカリエに出店したのを皮切りに展開数を増やし、現在は新宿、銀座、浦和で開催中。
初めてヒカリエで開催したときは夜中まで設営に加わった松本さん。開店したら想定以上に売れたそうです。当時はちょうど初代「にゃんそうこう」が話題だった時期で、開店3時間でその日の分が完売してしまいました。
ずっとWebだけをやっていたので、ポップアップショップを出してみるまで、こんなにブランド力があることに気付いてなかった。
店頭にいるとお客さまのテンションとか肌感覚が分かってきます。「こういうのが好きなんだな」とか。Webの運営に生きますね。
それまでも他の部署で洋服のリアルショップを出すことは時々行っていたフェリシモ。しかし、猫部ほどの結果につながったことはなかったそうです。今後は常設化することも検討中とのこと。
猫部の目標は「殺処分ゼロ」
部活を作る目的は殺処分をなくすための基金活動だったんです。なので、最初の商品からすべて基金付きで販売しています。
もともとフェリシモには、商品購入で貯まったポイント「フェリシモメリー」を、各種団体に寄付できる仕組みがあります。寄付先には動物愛護団体もあり、その反響の大きさからこのテーマへの関心の高さ、また、ビジネス的なマーケットの大きさも感じていたそうです。
いま全国で約50の動物愛護団体が支援先としてありまして、お客さまの声を見ていても「殺処分をなんとかするために活動しているんです」っていうところに共感をいただくし、口コミが広がる原動力にもなっているなと思っています。
寄付だけでなく、本社ビルや須磨区の物流センターで2か月に1度、地元のNPO団体と協力して譲渡会も行っています。毎回20匹くらいの猫たちが新しい家族と巡り会っているそうです。
企業風土が生んだ自由な活動
こうした猫部の活動の背景には、フェリシモの企業風土が欠かせません。フェリシモは企業理念に、永続的、発展的な活動を支える「事業性」、オリジナリティを追求する「独創性」、人や社会への貢献を追求する「社会性」の3つを掲げており「この3つが交わる領域での事業活動を目指す」としています。
ただ掲げているだけではなく、松本さんも入社時に「この理念に共感できる人だけ入社してください」と念を押され、入社後も折に触れてこの理念に沿っているかどうかを確認するそうです。
継続するために利益を出すことは必要だけど、ただ儲かれば良いってわけじゃない。そして、絶対に他社の真似をしてはいけない─。このポリシーは、そのままフェリシモ猫部の商品作りに反映されているではありませんか!
今後の目標は、とにかく長く続けるということ。猫の殺処分ゼロという目標があって基金があるので「今年でやーめた」ってわけにはいきません。
もう1つ、企業が動物愛護に取り組むことがもっと当たり前になってほしいと思っているんです。
「フェリシモはペットの会社でもないのになんで愛護活動をやるんですか?」ってたまに聞かれるんですが、今、普通に家族として犬や猫と暮らす家庭が増えて、ペットとか動物愛護も一般的な暮らしのテーマの1つなので、フェリシモのように「生活」を領域にしている企業が、当たり前に取り組むテーマだと思うんです。
そういう感覚をもっと広めたいと思っています。その部分だけは真似してほしいですね、商品は真似されたらめっちゃ怒ります(笑)
フェリシモ猫部の商品には、「猫と暮らしを楽しみたい」という前向きな明るさと、「どうせだったらもっと面白くしたい」というサービス精神を感じます。「企画した商品はわりとなんでもすぐ作れる」というフェリシモだからこそできることなんですね。これからも楽しみにしています!!
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