猫好きならこんな部屋に住みたい! ヒトもネコも楽しい、横浜の「猫歓迎アパート」

猫好きネットショップ担当者の一服の清涼剤・ネコノミクス研究所。ネコブームと言われてしばらく経ちますが、まだまだ厳しい猫好きの賃貸住宅事情。「ペット可」物件が増えたと言っても、実は「犬のみ」とか「猫は1匹のみ」だったりするのです。Why? うちの猫なんてぬいぐるみのようにおとなしくて無害なのに!!……という憤りを持つ人は多いようで、最近は猫好きの賃貸事情も少しずつ変わってきました。
突然ですが問題です。
まずはこの写真をご覧ください。

ここは先日完成した賃貸アパート「Seilan Apartment(セイラン・アパートメント)」。横浜市営地下鉄・吉野町駅からほど近い場所にあります。もともとは築40年のアパートでしたが、この春、2階建て5部屋の「猫歓迎アパート」として生まれ変わりました。
さてこの玄関。猫と暮らしている人なら「おお!」と膝を打つ工夫が4つ隠されているのです。
「え、4つも?」って思うかもしれません。
わかりますか?
どうですか?
あ、スリッパは関係ありませんよ。
どうです?
しつこいですか?
しつこいですね。
では回答です。

①居室と玄関を仕切るドア
1人〜2人暮らし用のアパートにはあまり付いていないドア。宅配便を受け取っているときなど、ちょっと玄関を開けているときに猫が飛び出すのを防ぎます。冷暖房の効率もアップするし、一石二鳥です。
②玄関側からかけられる鍵
ドアノブだけだとジャンプして開けてしまう賢い猫もいるので、鍵が付いています。取り付け位置も通常とは逆で、猫がいたずらしないように、ドアノブの上に鍵が設置されている念の入れよう。
③猫を近付けたくないものを置けるスペース
猫がいたずらしそうなフード類や猫砂、壊されたくないワレモノなどを猫から守るためのスペースです。
④フローリングに見えるビニールクロスの床
猫はよく吐きます。本物のフローリングだと染み込んでしまいますが、ビニールクロスならスッキリきれいに掃除できます。
⑤猫が興味を持たない壁紙
柔らかく爪がひっかかりやすい壁だと、猫は壁を爪とぎスポットとして認定してしまいます。凹凸の少ない硬めの壁紙を採用することで、爪とぎを防止します。
猫好き目線の工夫がたくさん
もちろん工夫されているのは玄関だけではありません。

猫が三次元に移動できるよう、天井付近にキャットウォークを設置し、運動不足を防ぎます。


洗面所には猫用トイレを2つ置けます。ちなみに201号室は猫3匹までOKで、それ以外は2匹までOK。ドアの開閉に支障がないよう、スペースが工夫されています。

猫も若いうちは冒険心が旺盛なもの。不意の脱走対策もぬかりはありません。



専有面積は33.53㎡〜、家賃は90,000円〜(共益・管理費4,000円)。諸条件もありますので、気になる方はSeilan ApartmentのホームページかFacebookページからお問い合わせください。
大家さんをサポートする猫賃貸コンサルタントとは?
この「Seilan Apartment」、アドバイザーを務めるのはこの方。

木津イチロウさんです。木津さんは野良猫親子を保護したのを機に、「Gatos Apartment(ガトス・アパートメント)」という猫専用賃貸住宅を建ててしまったという筋金入りの猫好き(木津さんが猫の大家になるまでの面白い道のりはコチラをどうぞ!)。最近はその経験を活かして、猫賃貸コンサルタントとしても活躍されています。
「今回のご依頼をいただいたのが昨年の夏、施主さんがハウスメーカーさんの選定を終えられた段階からの参画でした。ハウスメーカーの方々と施主さんとの第1回目の打合せで、私の『洗面所をもっと大きくして換気扇を付けてください』とか『いっその事、ロフトを作っちゃいましょう』とか『ドアの鍵は逆に付けてください』といった、賃貸住宅の常識からは外れた発言の数々に、みなさんが始終目を丸くして驚かれていたことも今となっては良い思い出です(笑)」(木津さん)
木津さんの「Gatos Apartment」もこの「Seilan Apartment」も、巷のネコカフェのような派手な猫用装飾はほとんどありません。
それよりも猫トイレを無理なく2つ置けることや、簡単にトレイを洗える動線を考えたレイアウト、猫が脱出できない仕組みが重視されています。「人と猫が快適に共存するにはどうすれば良いか?」が最優先事項。猫が三次元に動ける工夫は飼い主さんが入居後に自分で工夫できることなので、限られた予算の中で「賃貸オーナーだからこそできること」を施した結果がSeilan Apartmentなのです。
Seilan Apartmentは、一見すると地味ですが、猫と一緒に暮らした経験をフル活用して編み出した工夫を随所に施しています。内覧会には総勢66名の方にお越しいただき、自由に見学をしていだだきましたが、いたるところで『なるほど!』と言った声を聞くことができ、猫好きの琴線に触れるお部屋ができたと自負しています。(木津さん)
木津さんがよく質問されるのは『猫って壁紙を爪でガリガリやりませんか?』ということ。Seilan Apartmentの壁紙は、最も凹凸の少ないものを選んではいますが、普通の壁紙。多くの人が誤解をしていますが、猫は爪が引っかかるところでなければ爪とぎとしてガリガリしません。
爪が引っかからないにも関わらず壁をシャカシャカ(爪が引っかからないので、こんな音がします)するとしたら、人間に何かを訴えたい時であることがほとんどです。「トイレが汚い」「ご飯が食べたい」「起きてほしい」「遊んでほしい」「ムシャクシャする」「知らない人が来て嫌だ」……訴えたいことは、猫によって様々です。
大事なのはこの時点で放置しないで原因を突き止めること。放っておくと、ある時壁紙に爪が引っ掛かるようになり、猫も「お? ここは爪が引っかかって気持ち良いぞ!」と爪とぎ行動がエスカレートして行くのです。
「飼い主はそうならないよう、定期的に爪切りをしてあげる、爪とぎを用意してあげるなど、相応の対策が必要です。そして、そもそもの住環境自体が人にも猫にも快適な空間であれば、そうした問題行動も減ってくるのです」(木津さん)
少なくとも5人のヒトと5匹の猫が幸せになるための猫歓迎アパート
もちろん施主である大家さんも大の猫好き。今回の建て替えに当たっては前からブログなどで知っていた木津さんのアパートのように、猫好きに喜ばれるアパートにしようと考え、ハウスメーカーに依頼。
でもハウスメーカーは「自宅だったら良いけど、賃貸で猫やペットはやめたほうがいい」と乗り気ではなかったそうです。それでも、「猫と暮らしたいけど部屋がない」とか「大家さんに隠れて飼ってる」という声をネットで目にするうちに、
「貸せる部屋がたった5つしかないアパートだけど、少なくとも5人のヒトと5匹の猫が幸せに暮らせるなら、猫歓迎アパートを作りたい」(大家さん)
そう決心して建て替えをスタート。しかし、工程が進むにつれて不安になり、途中から木津さんに相談したそうです。現場を見た木津さんはすぐにいくつもの修正点を発見。
「こっちは素人だから職人さんに“こういうものだ”って言われちゃうと“そうかな”って思っちゃいますけど、木津さんに言ってもらってよかったです」(大家さん)
物件のことだけではなく、ホームページやFacebook、Twitterを使った集客についてもアドバイス。取材した日は内覧会。あいにくのお天気でしたが、SNSなどで開催を知ったお客さんがたくさん詰めかけていました。
「物件を作るところから広告、宣伝、あと今後は管理についても教えてもらうので頼りにしています。トータルでアドバイスしてくれて本当に助かります」(大家さん)

ネットショップで猫砂やフードを買うと、「無地の箱でお届けします」なんて書いてあるお店を見かけることがあります。もしかしたら、猫不可物件でこっそり隠れて猫を飼っている人も多いのかもしれませんね。今はバレていなくても規約違反は思わぬトラブルに発展しかねません。人ごとながら心配です。
でも、猫OKの物件って少ないんですよね、かく言う私も5年ほど前に猫2匹と共に引っ越しましたが「この沿線で猫が2匹飼える物件」って、それしか指定していないのに、提示されたのはたったの2軒でした。
幸い、悪くはない物件に落ち着きましたが、もともとはペット不可だった物件を途中からペット可にしただけなので、床が普通のフローリングで手入れしにくかったり猫トイレの置き場がなかったりとやや不便。猫特化型賃貸はホントにうらやましいです。
空室にお悩みの大家さーん! 猫部屋、考えてみませんか〜?