ユニクロの実店舗とネットの融合をめざす「有明プロジェクト」の進捗状況は?
ファーストリテイリングの今第1四半期(2018年9月~11月)の国内Eコマース事業は、前年同期比30%以上の増収となり好調に推移した。一方で実店舗を含めた国内事業全体で見ると季節要因を受けて秋冬衣料が低迷し、減収減益となるなど大きく落ち込んだ。打開に向けて鍵となるのは実店舗とネットの融合を目指した「有明プロジェクト」。現在の進捗状況を見てみる。
同社では17年よりEC専用の物流機能を有した有明の新拠点をベースに実店舗とネットの融合を本格化している。中でも顧客接点の改革という意味で、コミュニケーション機能を持つ公式アプリの会員数を増やすことでEC上での販売状況などを詳細に把握し、その情報を基に商品開発のサイクルを回していくことを目指している。
EC側からの視点で見ると、昨年4月に無料化した通販商品の店頭受け取りサービスの利用数が拡大。宅配値上げが進む中で送料無料で受け取りたい顧客のニーズをうまく捉え、件数ベースではECの約3分の1が同サービスを利用するほど伸長しており、リアルとの融合は着実に進行していることが伺える。
その一方で実店舗側からのECの利活用はまだ十分ではない印象を受ける。特にEC利用客のデータなどを活用した需要予測の精度については現時点では試行錯誤の段階にあるようだ。
今第1四半期の国内事業の失速の要因となったのは暖冬による秋冬衣料の低迷。背景には17年の秋冬に国内事業で防寒衣料の欠品が生じたことから、18年の秋冬はその反省として例年よりも防寒衣料に偏って多めの在庫を持って臨んだという経緯があった。「ある種(欠品を防ぐ)意思を込めて在庫を持った部分が強すぎた。持っていた商品構成と気候がマッチしなかった」(岡﨑健CFO=顔写真)と語るように、需要予測の面では有明プロジェクトの強みを十分に発揮できていない状況にある。
今後の対策としては、次の秋冬商品についてはある程度暖冬になることを想定した上で対応できる在庫の準備を行い、特に冬の防寒関連衣料については極力、シーズンはじめの動向を見ながら追加生産で手当てしていく方針に切り替えていくという。
並行して、需要予測の精緻化に向けては、データベースのもととなるアプリ会員を増やすための施策も強化する。「アプリを通してどれだけより新しく、面白い顧客体験を提供できるかが問われている。ジーユーの(ショールーミング型)原宿店舗も一つのトライアウト」(岡﨑CFO)とするなど、実店舗主導でアプリと連携するような取り組みも進め、顧客動向の見える化を図っていく。
かねてより同社が語っていた「景気より、天気」の影響をまともに受けてしまった今期の立ち上がりだが、巻き返しに向けた有明プロジェクトの今後が注目される。
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