ファーストリテイリングの持続可能性と事業成長を両立するビジネスモデル「LifeWear=新しい産業」への転換、その進捗は

「LifeWear=新しい産業」というビジョンのもと、持続可能性と事業成長の両立を目指し、サプライチェーン全体での温室効果ガス(GHG)排出量削減やトレーサビリティ強化など、先進的な取り組みを進めている。

鳥栖 剛[執筆]

8:30

ファーストリテイリングは11月19日、持続可能性と事業成長を両立するビジネスモデル「LifeWear=新しい産業」について、サステナビリティ推進の進捗(しんちょく)と今後の目標を発表した。

ファーストリテイリングは11月19日、持続可能性と事業成長を両立するビジネスモデル「LifeWear=新しい産業」について、サステナビリティ推進の進捗(しんちょく)と今後の目標を発表した
「LifeWear=新しい産業」の概念図(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

ファーストリテイリングは現在、「LifeWear=新しい産業」というビジョンの下、持続可能性と事業成長の両立をめざし、サプライチェーン全体での温室効果ガス(GHG)排出量削減やトレーサビリティ強化など、先進的な取り組みを進めている。

工場から店舗・ECまで、全工程で輸送効率を向上

EC関連では、工場から店舗・ECまでのすべての工程で輸送効率向上を進めている。工場から各国・地域の倉庫への船輸送において、出荷日や希望納期が近い商品を1つのコンテナに集約し、年間で約15%のコンテナ本数削減を実現した。一部の国・地域向けには船の燃料にバイオ燃料を使用するなど、環境負荷低減にも注力。また、国際NPO「Smart Freight Centre(SFC)」に加盟し、物流業界全体のGHG排出量削減にも貢献している。

国内輸送では、倉庫から各店舗やECへの配送効率を「有明プロジェクト」を通じて向上させている。店舗での荷受時間の拡大、近隣店舗向けの共同配送、配送用段ボール箱の積載効率向上などを推進している。

温室効果ガス排出量削減目標を引き上げ

ユニクロ・ジーユー商品の原材料生産から縫製までを含むスコープ3領域のGHG排出量について、2030年8月期までに2019年比で20%削減という目標に対して、2024年8月期までに18.6%を削減。これを受け、2030年の目標を「30%削減」へと引き上げた。この新目標は、国際的な「Science Based Targets」イニシアティブからも認定されている。主な施策は次の通り。

  • 石炭使用量の削減
  • 再生可能エネルギーへの切り替え加速
  • 工場のエネルギー効率改善
  • GHG排出量の少ない素材の利用拡大
ファーストリテイリングは11月19日、持続可能性と事業成長を両立するビジネスモデル「LifeWear=新しい産業」について、サステナビリティ推進の進捗(しんちょく)と今後の目標を発表した
温室効果ガス排出量削減目標を引き上げた(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

トレーサビリティ強化と指定農場ウール調達プロジェクト

サプライチェーンの透明性向上に向け、2025年からオーストラリアの指定農場でウールを調達する新プロジェクトを開始した。動物福祉・環境・人権・労働安全の観点からトライアル監査を実施し、深刻な課題がないことを確認している。この取り組みは、綿やカシミヤなど他素材でも進めてきた「原材料調達まで全工程を自社基準で管理する」方針の一環。2023年には綿商品を対象に紡績工場を特定し、定期監査を導入。2024年にはカシミヤ100%商品の生産サプライヤーを特定し、2024年秋冬商品から洗毛工場と紡績工場への定期トレーサビリティ監査を導入している。

2030年度主要サステナビリティ目標の進捗

  • 自社領域(店舗・オフィス)GHG排出量:2030年までに90%削減目標に対し、2024年時点で83.3%削減を達成
  • 再生可能エネルギー調達比率:2030年100%目標に対し、2024年で84.7%
  • リサイクル素材などの使用割合:2030年に全素材の約50%目標に対し、2025年で19.4%
  • サプライチェーンGHG排出量:2030年30%削減目標に引き上げ(2024年時点で18.6%削減)
ファーストリテイリングは11月19日、持続可能性と事業成長を両立するビジネスモデル「LifeWear=新しい産業」について、サステナビリティ推進の進捗(しんちょく)と今後の目標を発表した
2030年度主要サステナビリティ目標の進捗(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

社会貢献・ダイバーシティ推進の取り組み

社会貢献の取り組みとして2025年8月期は、社会貢献活動に123億円を拠出し、594万着の衣料支援を実施した(受益者485万人)。「PEACE FOR ALL」チャリティTシャツプロジェクトでは累計862万枚を販売し、寄付総額は25億円を超えた。難民支援では「Displacement Film Fund」への支援も開始している。

「LifeWear」を生かし続ける主な取り組みとして、服のリペア・リメイクサービス「RE.UNIQLO STUDIO」を22か国・63店舗に拡大。2023年に始動した古着プロジェクトは、日本の3店舗でトライアル販売を継続している。

ダイバーシティ&インクルージョン推進では、女性管理職比率が2030年50%目標に対し、2025年で45.5%に到達。日本国籍以外の管理職比率は2030年80%目標に対し、2025年で53.6%となった。

この記事をシェアしてほしいタヌ!

人気記事トップ10

人気記事ランキングをもっと見る

企画広告も役立つ情報バッチリ! Sponsored

「サムソナイト」「グレゴリー」のEC改善事例。CVR改善+購入完了率が最大45%増の成果をあげたアプローチとは 11月12日 7:00 スマホゲーム「モンスト」ファンがお得にアイテムを購入できる「モンストWebショップ」はなぜ「Amazon Pay」を選んだのか。導入効果+UI/UX向上に向けた取り組みを聞いた 10月30日 7:00 アンドエスティが「3Dセキュア2.0」の超効率的運用に成功したワケ。オーソリ承認率大幅改善、売上アップにつながった不正対策アプローチとは? 10月28日 7:00 EC業界で市場価値を最大化する――「全体を見渡せる人材」になるためのキャリア設計 10月27日 7:00 転売ヤーが引き起こすEC市場の混乱に立ち向かう! Shopifyパートナー・フラッグシップが提案する最新対策 9月29日 8:00 14か月で累計売上30億円超え。 韓国のネイルブランド「ohora」の急成長を支えたEC戦略とは 9月22日 8:00 生成AI検索が変える消費者の購買行動。UGC活用でサイト流入を最大化する 9月10日 8:00 ほしい商品が見つからないイライラを解消し、CVRを向上! 検索機能強化と顧客満足度アップを実現するBtoB-ECサイト改善のポイントとは? 9月9日 7:00 B向けEC担当者必見。BtoBビジネスを成功に導くサイト内検索の最適化戦略 9月3日 8:00 クリック率3倍、セッション数2.3倍を実現したECサイトの取り組みとは? リアル店舗のような“ワクワク感”を再現するPLAZAの事例 9月2日 7:00