強いEC会社を支えるネットショップ担当者を作る人財育成講座

データを見て変化を捉え、要因を考える――データ活用で本当に大切なこと

EC事業の内製化を目標に、ECマーケティングに関連するテーマを設定し、判断をするための考え方を解説します【連載21回目】

石田 麻琴[執筆]

8:00

「EC事業を内製化する」――それは必ずしも、「Webサイトやコンテンツの制作スキルを身につける」「リスティング広告の運用を自社内で行う」「自社サイトのシステム改修をECチーム内で解決する」ことを意味しません。ECに関係する専門的な領域は、すでにいち担当者の努力でどうにかなる時代ではなくなっています。

EC事業の内製化を目標に、ECマーケティングに関係するテーマを設定、その判断をするための「考え方」を伝えていきます。21回目の連載は「データ活用の核心」をテーマに解説します。

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強いEC会社を支えるネットショップ担当者を作る人財育成講座

ECのマーケティングは「ヒト・モノ・カネ・情報といった自社のリソース」と「外部のマーケティングソリューション」を組み合わせて、「結果としての売り上げと利益を最大限に伸ばす」ことが求められます。

つまり「EC事業の内製化」とは「業務の内製化」ではなく、「判断の内製化」なのです。ECの戦略・方針、日々のアクション・行動、そしてソリューションの選択が成果につながっているか、これだけは社内のネットショップ担当者でなければ判断ができません。

「強いEC会社を支えるネットショップ担当者を作る人財育成講座」では、ECマーケティング人財育成(ECMJ)が、こうした判断を行えるEC担当者育成に向けたポイントを解説します。

毎日数字を確認することで、気付いたこととは?

ネッタヌネッタヌ

石田さん、こんにちは!

前回の連載から1か月、ボク、真面目に数値管理表を運用してみました! 今日はその成果を石田さんに聞いてもらいたくて。

石田

ネッタヌ君、こんにちは~。

お、いいねぇ。その表情を見る感じ、1か月けっこう頑張ったみたいだね。

ネッタヌネッタヌ

ボクが携わっている「きつねグッズ」のネットショップで運用してみたんです。

石田

(たぬきなのに、きつねグッズって……)1か月間、数値管理表をやってみてどうだった?

ネッタヌネッタヌ

前回まで「やり方」は石田さんに教えてもらっていたんですけど、習慣化できなかったんですよね……。だから今回は、石田さんが言ってくれた通り「数値管理表を入力する時間」を毎朝きっちり確保したんです。

石田

やっぱり時間を設定するかどうかで、まったく違ったんじゃない?

ネッタヌネッタヌ

たしかに違いました。今までは「1日のどこかでやればいいや」と思っていたから、そもそも思い出さなかったり、後回しになって忘れたり……。でも毎朝15分の「入力タイム」を設定したことで、忘れずに続けられたんです。

石田

そうそう。「いつやるか」が決まっていないことは、絶対に習慣にならないから。で、実際に毎日データを入れてみて気付いたことはあった?

ネッタヌネッタヌ

最初に気付いたのは、「毎日、入力する数字が違う」ってことです。当たり前と言えば当たり前なんですけれど、実際に毎日見てみると、けっこう幅があるんですよね。

たとえば、「きつねグッズ」ショップのセッション数でも、

  • 1000セッションの日(通常)
  • 1300セッションの日(高め)
  • 逆に800や900に落ち込む日(低め)

通常の日でも上下で30~40%くらい違うんですよ。

石田

「数字は毎日動くもの」っていう感覚がつかめてきたんだね。

ネッタヌネッタヌ

はい。データって、なんだか「生きている」んですね。前までは、まとまった月次の数字しか見ていなかったので、もっと静かなものだと思っていました。

石田

毎日見ていると、やっぱり原因が気になるでしょ?

ネッタヌネッタヌ

そうなんです。毎日見ていると「なんで今日は上がっているんだ?」「なんで昨日より落ちているんだ?」っていうのが気になって。「何が原因なんだろう」って、自然と考えるようになりました

石田

お、「マーケティングの思考」の始まりだね。

ネッタヌネッタヌ

で、疑問が出ると理由を知りたくなるじゃないですか?

そこでもう一歩踏み込んで、

  • セッションの新規・リピーター比率を見てみたり
  • どんな検索ワードで流入しているのか見てみたり

いろいろな角度からデータを掘ってみました。

石田

まず「大きい数字」を見て変化に疑問を持ち、そのうえで「細かい内訳」や「別の角度のデータ」を見にいく。まさに正しいプロセスだよ。

EC内製化 大きい数字から細かい内訳を見に行く
大きい数字から細かい内訳を見に行く

「理由/特記事項」から得られた気付きを改善につなげよう

ネッタヌネッタヌ

ただ、やっぱり難しいところもあって。

石田

どこが難しかった?

ネッタヌネッタヌ

「改善/施策」と「理由/特筆事項」のテキスト部分の入力ですね。「改善/施策」の方は、毎日チームのみんなに「昨日どんなことをやった?」って確認しながら入力できたんですけれど、「理由/特筆事項」の方が……。

石田

だよね~。

ネッタヌネッタヌ

ここは「何を入力すればいいのか」最初よくわからなくて。データが変化していても、その背後に何があったのか、探し当てるのがすごく難しかったんです。

石田

そうそう。「理由/特筆事項」は、「見えない要因」を探す欄だからね。全部のデータの理由がわかるわけじゃないし、むしろわからない日の方が多いんだ。ここは今後の連載でもしっかり伝えていくね。探し方や気付き方、よくあるパターンも含めて。

お客さまからの問い合わせが、ネットショップの改善につながった

ネッタヌネッタヌ

ありがとうございます。でも石田さん、そんななかでも、すごく良い「理由/特筆事項」が1つあったんですよ。

石田

え? ネッタヌ君、それってどういうこと?

ネッタヌネッタヌ

お客さまからメールで問い合わせがあったんですよ。「ハロウィンの仮装で使いたいんだけれど、サイズがいまいちわからないので詳しく教えてください」って。

石田

えっ、そうなんだ。

ネッタヌネッタヌ

で、その問い合わせをきっかけに、ネッタヌなりに「ネットショップとして、もっとできたことがあったんじゃないか?」って考えたんですよ。

石田

ネッタヌ君、その思考はめちゃくちゃ大事だよ。まさに「想定外の情報」から改善に気付く――「理由/特筆事項」を生かす思考そのものだね。

で、どんなことを考えたの?

ネッタヌネッタヌ

まず、商品ページのサイズ表記が細かく書けていなかったというか……。お客さまにサイズ感が十分伝わっていなかったんだろうな、と気付きました。

石田

うんうん。他には?

ネッタヌネッタヌ

それから、「ハロウィンで使いたい」っていう問い合わせ自体が意外だったんです。「あ、ハロウィンの仮装にも使われるんだ!」という気付きがあって。

ハロウィンの前に「ハロウィン特集」みたいな企画を組んで、「きつねグッズは仮装にも使えますよ!」って提案すればよかったんじゃないかな、って。少し後悔しました。

石田

それ、めちゃくちゃいい気付きだよ。お客さまの「使い方」って、自分たちが思っている以上にヒントの宝庫だからね。

じゃあ、ネッタヌ君さ。その気付きを踏まえて、今後そのお客さまからの問い合わせをどう生かしていくか、具体的に何が考えられる?

ネッタヌネッタヌ

今後のイベントでいうと、次はクリスマスがあるじゃないですか。クリスマスでも仮装イベントがあるので、「きつねグッズでクリスマスを楽しもう!」みたいな特集ページを作ってみるといいのかなって考えています。

それから、元々問い合わせのきっかけは「サイズがわからない」だったので、

  • もっと細かいサイズ表記を追加する
  • 着用画像を増やす
  • モデルさんの身長・体重・着用サイズを表示する

みたいな改善も進めていこうと思いました。

石田

ネッタヌ君、めちゃくちゃいいね。まさに僕が伝えたい「データ活用=変化の背景を読み、次の行動へつなげる」っていう考え方を、ネッタヌ君の体験のなかからちゃんと実践してくれている。

EC内製化 ひとつの問い合わせを改善につなげる
ひとつの問い合わせを改善につなげる

データ活用で重要なのは「次にどんなアクションを起こせばいいのか」を考えること

ネッタヌネッタヌ

でへへへ……。石田さんにそんな褒められたことないから、ネッタヌめちゃくちゃうれしいです。

石田

本当に素晴らしいよ。データ活用っていうと、どうしても「数字を見ること」ばかりに目が行きがちなんだけれど、大事なのはそこじゃないんだよね。

ネッタヌネッタヌ

石田さんが言いたいこと、わかります。

石田

BIツールなどデータ可視化ツールって、この10年・15年で爆発的に増えたんだけど、多くの会社が「あること」に困っているんだ。わかる?

ネッタヌネッタヌ

今までの話からすると、「次にどんなアクションを起こせばいいのか」じゃないですか?

石田

ネッタヌ君、その通り。そこがまさに「核心」なんだよ。

多くの会社が「データは見られる」ようになった。でも、そこから「何をすればいいの?」ここがまったくわからない。理由は単純で、「データを見るだけで終わっている」から。本当に大切なのは、「データを見る→変化を捉える→要因を考える」。ここまで行けるかどうかなんだよね。

要因を考えれば、「じゃあ、これを改善すると良いんじゃないか」「次こういう施策をやってみよう」という「次の一手」が生まれる。

ネッタヌネッタヌ

つまり、ヒントはデータの裏側、要因のなかに埋まっている。

石田

ってことなんだ。

ここまでデータ活用について話してきたけれど、大切なことはすごくシンプルで、「なぜそうなったのかがわかれば、どうすればそうなるのかがわかる」、これなんだよ。

売り上げが伸びた理由がわかれば、「じゃあ同じことを再現するにはどうすれば良いか」が見える。セッション数が増えた理由がわかれば、「じゃあどうやってまた増やすか」のヒントが出てくる。

ネッタヌネッタヌ

実はネッタヌ、石田さんに最初その言葉を言われたとき、意味がちっともわかんなかったんですよ……。でも今回、1か月間まじめに数値管理表の運用をしてみて、「こういうことか!」というのが、ちょっと腹落ちした気がします。

石田

結局、ネットショップをより良くしていくコツって、すでに毎日そこに存在している「定量データ」と、お客さまの声・レビュー・問い合わせみたいな「定性データ」、この2つを読み解いて、「じゃあ次に何をやる?」を考え続けること。まずはこの土台を作ることなんだよね。

ネッタヌネッタヌ

確かにネッタヌも1か月やってみて、データ活用って難しいロジックじゃなくて、どちらかというと「どこに疑問を持つか」「どこに気付けるか」が大事だってことがわかりました。

石田

そうそう。そして、その「気付き力」を育てるツールとして、数値管理表はめちゃくちゃ相性が良いってわけ。

毎日数字を見ることで、「お、この数字なんか変だぞ」「なんで客単価が上がったんだ?」みたいな疑問が自然と生まれる。この「疑問が湧く状態」こそ、データ活用のスタートラインなんだ。

ここが身につけば、マーケティングチームの内製化は一気に前へ進むよ。

ネッタヌネッタヌ

ネッタヌ、引き続き「きつねショップ」で、毎日コツコツ、数値管理表の運用を続けていきます!

ECマーケティング人財育成は「マーケティングチームの内製化」を支援するコンサルティング会社です。ECMJコンサルタントが社内のECチームに伴走し、EC事業を進めながらEC運営ノウハウをインプットしていきます。詳しくはECMJのホームページをご覧ください。

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