強いEC会社を支えるネットショップ担当者を作る人財育成講座

「EC売上が伸びない!」メーカー直販の課題を解決した「組織」「人材」「仕組み」づくりのアプローチ【事例で解説】

あるアパレルメーカーがD2C事業を通して組織と事業を成長させるまでにやったことと【基礎からはじめるEC事業 ②】

石田 麻琴

2020年9月28日 9:00

ECに関する知識やテクニック、新しいマーケティング手法の情報にうんざりしている経営者や責任者の方も多いでしょう。ECのマーケティングは、「自社サイトに訪問してもらうにはどうすれば良いか」「広告運用におけるCPAとLTVの関係性」など、手段としての知識やテクニックなどが必要だと思われがち。ですが、インターネット上の事業であっても、持続的な成長のために大切なのは、皆さんの現在の事業と同じく「組織」「人材」「仕組み」です。

あくまで土台に「組織」「人材」「仕組み」がある上での、知識やテクニックそして新しいマーケティング手法の活用なのです。

組織の成長と事業の成長は連動します。EC事業を通して組織成長と事業成長を実現している弊社ECMJのクライアント企業・A社の事例をもとに、A社が実際に行った「組織づくり」「人材づくり」「仕組みづくり」のアプローチを紹介します。

A社のECを推進するための「組織づくり」とマインドセット

A社の商材はレディースアパレル。これまで数十年、大手アパレルブランドのOEMメーカーとして事業を継続してきました。しかし、年々取引額が縮小していることや条件が厳しくなることから、8年ほど前、既存事業と並行して自社オリジナルのブランドを立ち上げ、ECでお客さまに直販するD2C事業をスタートしました。

まず、営業部にEC担当チームを置いて運営を始めてみたものの、当時は既存の業務と兼務だったため、どうしても片手間でのEC運営に。行き当たりばったりで自己流のEC運営だったことなどから、ECの売り上げは伸び悩んでいました

しかし、会社として直販の売り上げを伸ばしていくことは待ったなしの課題です。共通の知人を経由して紹介いただき、ECMJのサポートがスタートしました。これが5年前のことでした。

ECMJというコンサルティング会社のサービスを導入したことが、EC事業担当チームに対して「本気でEC事業に取り組んでいく」というメッセージ、そして「事業を伸ばすために全社的な協力をお願いしたい」という全社へのメッセージになりました。「組織づくり」のポイントとして紹介した「責任の所在」が、図らずも設定されたわけです。

A社と月2回のECマーケティングの定例会議が始まりました。印象に残っているのは最初のミーティングのことです。ECモールにおける消費者の導線について解説をしたところ、

これまで自分たちが良かれと思って更新してきたことは、まったく的外れだった。

という声が上がりました。ECモールの消費者は、

  1. 検索
  2. 検索結果
  3. 商品ページ

の順番でサイトを閲覧し、ECモール内の店舗に訪問してきます。そのため、サイト内の全ページに共通で表示される「サイドナビ」が重要な役割を果たすわけですが、A社では日々、トップページの更新を頑張っていたというのです。

慣れている方ならご存じのとおり、ECモールでトップページを頻繁に更新してもはあまり効果がありません。ECへの入口は実店舗のように1つではないため、集客と回遊を強化するためには、検索結果やサイドナビに気を配ることが重要になるのです。

今となっては笑い話の1つですが、こうした「努力の方向の勘違い」は往々にして起こるものです。消費者の導線をイチから説明したことで、チームメンバー自身が「改善すべきポイント」に自分たちで気付くようになりました。

「人材づくり」「仕組みづくり」のための自社サイト停止

当初、A社では「楽天市場」と自社ECサイトを運営していました。しかし、3か月ほどマーケティングの定例会議を行った末、自社ECサイトを一旦停止してもらうことにしました。理由は、運営チームのリソースが分散していたため2店舗とも共倒れになると考えたこと、運営チーム以外の社内スタッフが、「楽天市場」と自社ECサイトの違いがわからず、在庫管理のトラブルが多発していたからです。

まずは、「楽天市場」1店舗に絞って、EC運営の土台をしっかり構築していこうということになりました。EC事業の「人材づくり」と「仕組みづくり」の根っこからの立て直しです。多店舗展開が必ずしもEC事業の成長につながるわけではありません。

「楽天市場」だけに絞ったEC運営を2年間継続し、EC事業の売り上げは倍にアップしました。EC事業に取り組む自社の「組織づくり」「人材づくり」「仕組みづくり」を理解し、EC事業の土台をイチから作り直した結果です。

3年目にはオリジナルD2Cブランド商品のみを販売する自社ECサイトを再び立ち上げました。以降、A社ではECモールの担当者、自社サイトの担当者という2人のマーケティング担当者を中心に、ECモールと自社サイトの両面からEC事業を成長させています。

◇◇◇

次回のテーマは「データ活用」です。私がEC事業の通常業務を組み立てる上で、重要と位置付けているのが「データ活用」です。「組織づくり」「人材づくり」「仕組みづくり」が自然に加速していく「データ活用」について説明します。

ECマーケティング人財育成は「マーケティングチームの内製化」を支援するコンサルティング会社です。ECMJコンサルタントが社内のECチームに伴走し、EC事業を進めながらEC運営ノウハウをインプットしていきます。詳しくはECMJのホームページをご覧ください。

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