石田 麻琴 2020/10/1 9:00

ECというビジネスが他のビジネスと異なるのは、インターネットを通じて世界中の消費者に情報を伝えることができ、オンライン上で決済までしてもらえるということだけではありません。日々のECの運営業務がすべて「データ」として蓄積でき、そのデータを元に次の戦略や施策の選択と判断を下していく、いわゆる「データ活用」ができる点が大きな違いです。

EC事業の成長、そして「組織」「人材」「仕組み」の成長ポイントになるのが「データ活用」です。「データ活用」は、EC事業と組織の成長の両方に寄与していくのです。

データは「宝の地図」ではなく「コンパス」

私の会社(ECMJ)では「データは宝の地図ではなく、コンパス」だと伝えています。「データ分析」「データ活用」というと、「データ分析さえ行えば、次にどんな施策をやれば良いのかハッキリわかる」というイメージを持っている方がいますが、そうではありません。データには必ずその裏側に「原因」や「要因」が存在します。データはさまざまな現象の「結果」が数字として現れたものに他なりまりません

言い換えればデータは、日々自分たちが行っているマーケティング活動の成果を、数字という形で判断するための「コンパス」です。ECMJではよく「なぜ売れたかがわかれば、どうすれば売れるのかがわかる」と言いますが、この「なぜ」と「どうすれば」を探すためにデータを活用するのです。これこそがECというビジネスのマーケティングの原則です。

ECMJでは「組織」「人材」「仕組み」にこの考え方を浸透させていきます。データや数字という「結果」と、施策や改善策という「原因」との因果関係を探す習慣を付けることによって、EC事業の担当メンバー全員が「自らデータを活用し、自らの行動を判断し、自ら仮説を立て、自ら実践」する組織を作り上げるのです。

ECコンサルタントがクライアントに伝えたいこと

前回、「組織成長と事業成長の連動性」の具体事例としてご紹介したA社についても、ECMJのコンサルタントが伝えているのは、ECの知識やテクニックだけでなく、データを活用した「EC事業の成長のための仮説・施策立案・成果検証のルーチンの作り方」です。

日々漫然とECの運営業務を続けるのではなく、本当の意味でデータを活用したPDCAサイクルを回すことが、EC事業の担当メンバー各自の判断力を向上させ、「組織」「人材」「仕組み」が内発的かつ持続的に改善される環境を作ります。

A社だけでなくそれ以外のクライアント企業においても、ECMJが重要視しているのは「数値管理表」という、日々の業務の因果関係とニーズの変化を探すためのフレームワークです。これは、

 
  • 前日のデータ(売り上げ、アクセス人数など5項目)
  • 自分たちが行った施策・改善策
  • 消費者の購買行動や問い合わせなどでの気づき(理由・特筆事項)

などを毎朝入力していくという、非常にシンプルな仕事なのですが、日々入力を続けていると面白いニーズに気づくことができます。

これはA社の事例ではありませんが、あるECサイトである特定の商品に注文が殺到する事態が起こりました。その商品は元々「死に在庫」になっていた商品。突然売れた理由がまったくわかりませんでした。お客さまの1人に伺ったところ、あるアーティストの名前と商品名が似ていたため、ファンのお守りグッズとして流行っているということがわかりました。もちろん、このアーティストの登場より前に発売された商品です。

ニーズの所在がつかめたため、メーカーに問い合わせて在庫を確保。また、自社OEM商品をメーカーと共に企画し、シリーズ合計で数千万円を売り上げることができました。

小さなチャンスを見逃さないための習慣を付ける

日常には「小さなニーズの変化」が常に転がっています。消費者は必ず用途や目的をもって商品を購入しています。そして用途や目的は常に変化します。大きな変化はもちろんのこと、こういった「小さなニーズの変化」に気付き続けられるかどうかは、中小企業のEC事業が成長するか否かのカギです。そのためにも「数値管理表」のような「変化に気付くためのフレームワーク」を組織に浸透させることが重要なのです。

A社のマーケティングの定例会議では、先にご紹介した日々の業務の因果関係とニーズの変化を探す「数値管理表」、販売の予実管理と施策を決定する「販売実績管理表」、月次予算と各月の施策の実践状況と成果を確認する「BtoCスケジュール管理表」など、7つの管理表でデータ分析やデータ活用を行いながら、事業の成長と組織の成長の両面を実現しています。

A社と共にECMJが歩み始めてから5年で、EC事業の年商は4倍に成長しました。今期はさらに倍を目指して爆進中です。A社のD2C-EC事業は、既存のBtoBビジネスの利益を補完する立ち位置から、新しい「事業の柱」に成長し始めました。

A社のEC事業担当チームによくお伝えしていることがあります。「EC事業の年商が4倍になったとしても、5年前より実力が4倍になったわけではない」と。逆に言えば、5年前の実力が4分の1だったわけでもありません。EC事業への取り組み方や、自己流による勘違い、データによる資源の最適化ができていないことなどが、4倍の差を生んでいると思うのです。そしてそれを実現するのは「組織」「人材」「仕組み」です。

おそらくどの会社でも、これから何十年もEC事業は続きます。ぜひ「組織づくり」「人材づくり」「仕組みづくり」から、しっかりとしたEC事業の土台を作っていっていただければ幸いです。

ECマーケティング人財育成は「EC事業の内製化」を支援するコンサルティング会社です。ECMJコンサルタントが社内のECチームに伴走し、EC事業を進めながらEC運営ノウハウをインプットしていきます。詳しくはECMJのホームページをご覧ください。

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