突然、セッション数が爆増&売上もUP! こんな「異変」を教えてくれるのがデータです。継続確認してないとチャンスを逃すかも?

「EC事業を内製化する」――それは必ずしも、「Webサイトやコンテンツの制作スキルを身につける」「リスティング広告の運用を自社内で行う」「自社サイトのシステム改修をECチーム内で解決する」ことを意味しません。ECに関係する専門的な領域は、すでにいち担当者の努力でどうにかなる時代ではなくなっています。
EC事業の内製化を目標に、ECマーケティングに関係するテーマを設定、その判断をするための「考え方」を伝えていきます。16回目の連載も「データ活用」をテーマに解説します。
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- 連載第1回~10回はこちら
- ECは「比較のビジネス」である。競合との「比較管理」で選ばれる理由、勝てるポイントを見つけよう
- 売れる理由を一番知っているのはお客さま、CVR評価時の注意点、情報管理の徹底――「EC事業の内製化」をめざすために必要なことを振り返り!
- EC事業に「本気で取り組む価値」とは? ECを「新しいニーズの探索」と捉えると会社を進化させることができる
- ECに取り組むことで会社のDXを促進できる! いつもアンテナを張って会社の動きを変える「新しいニーズ」に気づけるようにしよう
- 売上UPにつながる要素を探すためには、日々の行動とデータをつなげることが大切!
ECのマーケティングは「ヒト・モノ・カネ・情報といった自社のリソース」と「外部のマーケティングソリューション」を組み合わせて、「結果としての売り上げと利益を最大限に伸ばす」ことが求められます。
つまり「EC事業の内製化」とは「業務の内製化」ではなく、「判断の内製化」なのです。ECの戦略・方針、日々のアクション・行動、そしてソリューションの選択が成果につながっているか、これだけは社内のネットショップ担当者でなければ判断ができません。
「強いEC会社を支えるネットショップ担当者を作る人財育成講座」では、ECマーケティング人財育成(ECMJ)が、こうした判断を行えるEC担当者育成に向けたポイントを解説します。
データ活用を理解するために「成果に効いている要因を探す」

さて早速だが、前回の続きの話をしようか。

石田さん、展開が早い! これまでのコラムで最速の本題投入ですね。

そうだね(キラッ)。「時は金なり」だからね。

(いつも余計な話をするくせに)

ECのマーケティングにおける本丸「データ活用」を理解するために、前回は「成果に効いている要因を探せ」という話をした。今回は、例の事件の4か月後に起こった出来事を伝えたい。

また石田さん、社長に怒られる感じですか?

いや、今回は怒られない(笑)
毎日データを記録していたら、あることに気付いて……?

定例会議で社長から指摘を受けて、「商品登録」を徹底し「Yahoo!」店の売り上げを伸ばして以降、普段の仕事でも常に「売り上げに効いている要因は何か」を意識するようになった。

石田さんの仕事の仕方自体も変わってきたんですね。

商品登録を徹底して行ってからの4か月間で、月商は当時の4倍ほどに成長していたんだけれど、次の「売り上げに効く要因」を探していた。

商品登録での売上アップが頭打ちになっていたんですね。

そうだね。これは本当にたまたまなんだけれど、「Yahoo!」店を社長に任されてから、前日のデータを毎日エクセルに記録していたんだ。

へぇ。どんなデータなんですか?

いわゆる「売上の公式」のデータ項目だね。売上・セッション数(アクセス人数)・転換率(コンバージョン率)・客単価、それと受注件数もエクセルに記録していたかな。

へぇ~。ショップの店長を始めたときからデータを活用していたなんて、石田さん意識が高い!

いや、それが本当にたまたまなんだ。どちらかというと、当初は売り上げが乏しかったので、毎日の励みとして売り上げ以外のデータを見ていたところがあった。

前回のコラムでも、「データを見ていたから変化がわかった」と言っていましたもんね。

そう。それでね、4か月目のある日、あることが起こったんだ。

あること??

「Yahoo!JAPAN」からの導線でセッション数・注文数が増えた

いつものように会社に出勤して、「Yahoo!ショッピング」の管理画面を見ながら前日のデータを入力していると、セッション数が異常に高いことに気がついた。当然、注文の数も多かったし、売り上げもいつもより高かった。

それ、気になりますね。

やっぱり気になるじゃない。前日に新商品を発売したわけじゃないし、メルマガを流したわけでもない。広告戦略はその後から展開していくんだけど、当時はまだ広告を使っていなかった。

考えられる要因がなかったわけですね。普通だと「まあ、何かあったのかな?」で終わりそうなものですけど……。

思い切って「Yahoo!ショッピング」の担当さんに電話をしてみた。実はこのとき初めて担当さんに連絡をしたので、少し緊張したのだけれど(笑)

「昨日、セッション数が異常に高かったんですけど、何故かわかりますか?」ってですね。

「Yahoo!ショッピング」の担当さんもわからないんだろうなぁと思いながら、ダメ元で。そうしたら、明確な、今考えればわかりやすい回答が返ってきた。

ななな、なんと!!

当時、「Yahoo!JAPAN」のトップページに「おすすめセレクション」というコーナーがあった。PC版のファーストビューに入るくらいの場所だったので、それなりにPVがあったと思う。なにせ「Yahoo!JAPAN」だからね。

「Yahoo!ショッピング」じゃなくて、「Yahoo!JAPAN」なんですね。「Yahoo!JAPAN」といえば、過去にはトップページPV数世界最多とも言われていたような……。

その「『Yahoo!JAPAN』の『おすすめセレクション』から導線があったようです」ってYahoo!の担当さんは言うんだよ。
どうやら、「おすすめセレクション」に「おすすめジュエリー」みたいなバナーが出ていて、そこをクリックすると「Yahoo!ショッピング」の「ジュエリー」などの検索結果に飛んでいたようなんだ。

随分とアッサリ教えてくれましたね。そんな重要な情報を。

ね。でも、得てしてこういうことってあるんだよ。自分にとっては重要な情報でも、他の人からするとそれほど重要な情報ではないってことが。こういうことを探すのが商売の本質だったりするよね。
ちなみに、とっくの昔に「おすすめセレクション」はなくなっているからね。

でもさ、石田さん。「Yahoo!JAPAN」の「おすすめセレクション」からの導線って、Yahoo!JAPANが決めることで、石田さんがコントロールできることじゃないですよね?

前回のコラムのような、「商品登録」みたいな施策に落とせないんじゃないか? って意味だよね?

そうです。そうです。

いやところがさ、施策化できる糸口がいくつかあったんだよ。

自分たちでコントロール不可能そうなものも、掘り下げてみると対策できる可能性がある

当然、最初は自分でどうこうできることではないと思っていた。まあ、「おすすめセレクション攻略法」が今回のテーマではないから、あまり詳しく話しても仕方ないんだけど、まず「おすすめセレクション」の更新タイミングを掴んだ。

なんと! 見張っていたんですか!?

うん。PCの前で1日張った。だってさ、「おすすめセレクション」からの導線があるかないかで、売り上げやセッション数が何倍も違うんだよ。成果に大いに効いている要因なんだから、見張るでしょ!

若かりしころの石田さん、頑張るなぁ。

1日見張ったら、1日のなかで4回更新のタイミングがあることがわかった。もう1つ、「おすすめセレクション」からの誘導のルールを分析した。ざっくりいえば検索対策ではあるんだけれど、これで自社の商品をよりお客さまに見てもらえるようになった。

「おすすめセレクション」が更新されたタイミングで、誘導の対策ができればその効果を最大限生かせるというわけですか……ある意味のチートですね。

たしかにある意味のチートだね。ただ、これは「卑怯」とは言えないよね。ネットの世界に限らず、リアルの世界だってこの類の「ルールを上手く使う」はありふれているじゃない。

はい、言っていることよーくわかります。成果に対する執念でもありますよね。

さっきも言ったとおり「おすすめセレクション」の攻略方法を伝えたいんじゃなくて、今回の話で伝えたいことは2つあるんだ。1つは「データを継続的にみることの大切さ」だよね。ここは前回と同じく。

石田さん的には「たまたま」だったけれども、毎日同じデータ項目を見ていたからこそ、セッション数が異常値になったことに気づいた。そして「なぜ異常値になったのか?」に対して疑問を持つことができた。

そこだよね。もう1つは「一見コントロール不可能そうなものでも、掘り下げてみると自分たちで対策できる可能性がある」ってことなんだよ。

「Yahoo!JAPAN」のトップページにどんな導線が入るのか、なんて自分たちではコントロールできないことですもんね。普通だったら「あー、今回はラッキーだったなぁ」で終わっちゃう気がします。

前回のコラムは、データ活用を「商品登録」っていう「自分たちがコントロールできる要因」に落とせたわけじゃない。今回は「『Yahoo!JAPAN』の導線」っていう「自分たちがコントロールできない要因」だったわけだけども、頑張って掘り下げたら多少「施策化」できるところまで行きつくことができた。

データを見ていなければ、「Yahoo!JAPAN」のトップページから導線が入ったことに気づきさえもしなかった。

その通り。データというのは、自分たちの日々の行動の成果を数字で教えてくれるものでもあるし、また自分たちの行動では起こらない「異変」を数字で教えてくれるものでもあるんだ。

じゃあ、継続的にデータを見ていないネットショップって……。

知らぬ間にチャンスを逃している可能性がある。

チャンスがあったのかすら、気づいていない可能性も。

「データ見なきゃ! データを見て、要因に気づかなきゃ!」って思ったでしょ。

思いました。ネッタヌが思っていた「大量のデータをあれこれ分析してグラフにしてウンヌン」みたいな話じゃないことがよくわかりました。

じゃあ、次回は前回と今回の事例を踏まえて、体系的なデータ活用の考え方を伝えていくね。

よろしくお願いします!!
ECマーケティング人財育成は「EC事業の内製化」を支援するコンサルティング会社です。ECMJコンサルタントが社内のECチームに伴走し、EC事業を進めながらEC運営ノウハウをインプットしていきます。詳しくはECMJのホームページをご覧ください。
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