EC事業に「本気で取り組む価値」とは? ECを「新しいニーズの探索」と捉えると会社を進化させることができる

「EC事業を内製化する」――それは必ずしも、「Webサイトやコンテンツの制作スキルを身につける」「リスティング広告の運用を自社内で行う」「自社サイトのシステム改修をECチーム内で解決する」ことを意味しません。ECに関係する専門的な領域は、すでにいち担当者の努力でどうにかなる時代ではなくなっています。
EC事業の内製化を目標に、ECマーケティングに関係するテーマを設定、その判断をするための「考え方」を伝える13回目の連載では、「EC事業に本気で取り組む価値」をテーマに解説します。
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- 連載第1回~7回はこちら
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- 再現性が高く「投資効果」が読みやすいネット広告戦略のポイントは? 広告代理店に依頼する時の注意点も解説
- ネット広告で獲得したいのは新規顧客ではない! “リピート顧客になり得る見込み客”だ! 「逆算のマーケティング」で効率的・効果的な広告戦略を実現しよう
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- 売れる理由を一番知っているのはお客さま、CVR評価時の注意点、情報管理の徹底――「EC事業の内製化」をめざすために必要なことを振り返り!
ECのマーケティングは「ヒト・モノ・カネ・情報といった自社のリソース」と「外部のマーケティングソリューション」を組み合わせて、「結果としての売り上げと利益を最大限に伸ばす」ことが求められます。
つまり「EC事業の内製化」とは「業務の内製化」ではなく、「判断の内製化」なのです。ECの戦略・方針、日々のアクション・行動、そしてソリューションの選択が成果につながっているか、これだけは社内のネットショップ担当者でなければ判断ができません。
「強いEC会社を支えるネットショップ担当者を作る人財育成講座」では、ECマーケティング人財育成(ECMJ)が、こうした判断を行えるEC担当者育成に向けたポイントを解説します。
EC事業に「本気で取り組む価値」とは?

石田さん、前回は「2024年の振り返り」お疲れさまでした!

いえいえ。こちらこそ最後は息切れしてしまい、申し訳ない。でも、一年間の各回のキーワードを見直せて良かったね。

やっぱり復習が大事ですよね。ネッタヌ、右から左に抜けてっちゃうから~。

「知っている」「できる」「やっている」ではまったく違うからね。ぜひ気になったときに復習して、「やっている」になってもらいたい!

それで石田さん、今日の話は?

EC事業に「本気で取り組む価値」について話していこうと思う。

本気で取り組む価値!?
EC事業に取り組むことで「会社を進化させられる」

「ネットショップ担当者フォーラム」の読者の皆さんはECの事業主の方が多いと思う。そして、このコラムを読んでくれている皆さんは、EC事業をより推進しようとしている「本気の方」が多いとも思う。

「ECの内製化」がテーマのコラムですからね。読者の皆さんが、会社として本気で取り組んでいる証拠ですよね。

今回はこれから会社としてさらにEC事業のエンジンを加速するために、知っておいてもらいたい話をしたい。
ネッタヌ君、EC事業って何のためにやると思う?

ECサイトからの売り上げを伸ばすため! 新しい販売チャネルを拡大するため!
……ですよね?

うん。間違ってないよ。売り上げも販売チャネル拡大もEC事業に取り組むことで得られる大きな成果だ。
じゃあさ、EC事業に取り組んで想定した売り上げに届かなかったとしたら、EC事業をやる意味はないのかな?

え……それは難しい質問ですね。売り上げを目的にしているならば、売り上げが目標に届かなければやる意味がないとも言えますし、このご時世、ECサイトがないのもどうかという気もしますし……。

EC事業に取り組むとさ、「会社を進化させる」ことができるんだよ。
EC事業に本気で取り組む、つまりEC事業に取り組むことで現れる課題をクリアしていくことによって、会社自体を進化させることができる。EC事業だけじゃなくてね。これが、EC事業に「本気で取り組む価値」だ。

EC事業が会社を進化させる!?

ここからは、とある事例を紹介しながら話していくね。

想定外の注文から何を感じるか?

小中学校向けに授業で使う教材を卸している会社さんがあった。あまり詳しくは書けないけれども、授業で使うキットみたいなやつね。

図工とか家庭科とか美術とかで使う教材ですね。

うん。このような教材の業界って、同業界内での「棲み分け」が進んでいて、特定のエリアでしか教材を販売できないルールになっているのね。

良く言えば「商圏が守られている」、悪く言えば「競争ができない」感じなんですね。

また、会社としての繁忙期がどうしても偏ってしまう。この会社さんの場合は、新年度がスタートして授業が少し始まったくらいの5月・6月あたりがめちゃくちゃ繁忙期だった。そしてそれ以降、7月から3月くらいまでは閑散期、みたいな。

学校の授業の教材ですから、どうしてもそうなりますよね。

経営者はこの閑散期をどうにか生かせないかと悩んでいた。「子どもの人口減少」や「IT化・オンライン化」によって、教材を卸す全体のパイ自体が減ってきていることも悩みだった。

既得権益があるとはいえ、全体のパイが減っていくことを考えたら不安ですもんね。こういう業界、今の日本にたくさんありそう……。

そこで、考えたのがECビジネスだったわけだ。自社の得意分野である小中学校に対して、「エリア規制のない」商品を販売することを考えたのね。

小中学校に向けた商材だったら、常に情報が入ってくるわけだから有利ですよね!

うん。これまでは小中学校に営業に行って注文をもらってくる、いわば「BtoB」のビジネス。そこに対象は同じとはいえ、デジタルを使った販売方式を加えたわけだ。閑散期対策のためのビジネスだから、当然スタッフは一緒。最初はかなり抵抗があったみたいね。

今までの習慣がありますから、仕方ないですよね。

それでもスタッフの皆さんに理解してもらって、ECサイトを開設した。ECサイトで販売する商品として目をつけたのは、小中学校の卒業シーズンに使うある商品(商品A)。この商品ならばエリアの規制もなく、10月から2月までの閑散期を埋めることができる。

で、売れたんですか!?

売れたんだよ。需要を満たす競合サイトが意外となかったのかもしれない。商品AのEC販売は順調なスタートを切った。卒業の時期に使う商品なのでまとまった注文が多く、客単価(カゴ単価)も高くてとても順調に。

めでたし、めでたし!!

いや、いきなり終わらせないでよ!(笑)EC事業に「本気で取り組む価値」の話でしょうが!

あ、そうだった。

でね、ECの注文を受けているとき、あることに気づいたんだ。それは、小中学校からの注文にまぎれて、時折「少年スポーツクラブ」からの注文があること。野球やサッカー、ミニバス、水泳教室などからの注文が入っていたんだよね。

小中学校だけじゃなくて、少年スポーツクラブからも注文が入っていたんですね! ラッキーじゃないですか!

ネッタヌ君……。

なんだか嫌な予感……。

喜ぶだけ?

ECを「新しいニーズの探索」と捉えることが重要

ある日、少年スポーツクラブのお客さまから直接「卒団式で使いたいのですが……」と電話があった。ここで少年スポーツクラブの皆さんが注文してくれている理由が「卒団式」であることに、はっきりと気づいたわけだ。

商品Aが少年スポーツクラブの「卒団式」でも使ってもらえたんですね!

でさ、この事実を知ったとして、普通だとどうなると思う?

「卒団式で使うんですね。少年スポーツクラブの皆さん、卒団おめでとう。商品Aを丁寧に間違いなく収めなきゃね……」ってなりそうな気がします。

そう、普通はそうなるんだよね。実はここが「マーケティングの分岐点」なんだよ。絶対に逃しちゃいけないね。

う~ん。石田さんが言いたいことがわかってきたぞぉ! ネッタヌ、散々石田さんに怒られてきましたからね!

(笑)ここで重要なのはさ、「少年スポーツクラブには『卒団式』というものがあること」、そして「その卒団式では商品Aが使われるケースがあるということ」この2つの新しいニーズを掴むことなんだ。

「1つの注文」「1件の問い合わせ」とは捉えないってことですね。

そう。ECを「売り上げを伸ばすためのチャネル」と捉えていたら、「1つの注文」「1件の問い合わせ」で終わってしまうんだよ。ECを「新しいニーズの探索」と捉えないと。

たしかに、この少年スポーツクラブからの注文を「自分たちが気づいていなかった『新しいニーズ』」と捉えると、その後のマーケティングが変わっていきそうな気がします。

この時点では、この新しいニーズが月商100万円程度の可能性なのか、月商1億円の可能性があるのかはわからない。ただ、気づかなければ月商100万円も月商1億円も生まれないよね。

まず、第一段階としては「これは何かがありそうだぞ」って「気づく」ことですね。

じゃあ、ネッタヌ君に宿題を与えよう! この「卒団式」というニーズに気づいたことで、どのような仮説が立ち、会社自体の動きがどのように変化したか? これを考えてみてほしい。

え!? 石田さん、いきなりの宿題。しかもかなりの難題。答えはネッタヌ次第。

いや、ネッタヌ君。韻を踏んでいるんじゃないよ、韻を(笑)

石田さん、どうしたんですか?

それは文字数が超過しそうだからさ!

わかりました~。ネッタヌ、次回までに頑張って考えますぅ。

皆さんもぜひイメージしてみてくださいね!
ECマーケティング人財育成は「EC事業の内製化」を支援するコンサルティング会社です。ECMJコンサルタントが社内のECチームに伴走し、EC事業を進めながらEC運営ノウハウをインプットしていきます。詳しくはECMJのホームページをご覧ください。
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