ECに取り組むことで会社のDXを促進できる! いつもアンテナを張って会社の動きを変える「新しいニーズ」に気づけるようにしよう

「EC事業を内製化する」――それは必ずしも、「Webサイトやコンテンツの制作スキルを身につける」「リスティング広告の運用を自社内で行う」「自社サイトのシステム改修をECチーム内で解決する」ことを意味しません。ECに関係する専門的な領域は、すでにいち担当者の努力でどうにかなる時代ではなくなっています。
EC事業の内製化を目標に、ECマーケティングに関係するテーマを設定、その判断をするための「考え方」を伝える14回目の連載も「EC事業に本気で取り組む価値」をテーマに解説します。
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- 連載第1回~8回はこちら
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ECのマーケティングは「ヒト・モノ・カネ・情報といった自社のリソース」と「外部のマーケティングソリューション」を組み合わせて、「結果としての売り上げと利益を最大限に伸ばす」ことが求められます。
つまり「EC事業の内製化」とは「業務の内製化」ではなく、「判断の内製化」なのです。ECの戦略・方針、日々のアクション・行動、そしてソリューションの選択が成果につながっているか、これだけは社内のネットショップ担当者でなければ判断ができません。
「強いEC会社を支えるネットショップ担当者を作る人財育成講座」では、ECマーケティング人財育成(ECMJ)が、こうした判断を行えるEC担当者育成に向けたポイントを解説します。
新たなニーズに気づいた企業の動きはどう変わった?

石田さん、こんにちは!

ネッタヌ君、こんにちは~。早速だけど、前回のコラムでお願いした宿題、考えてみた?

う~ん、う~ん……。石田さん、宿題って何でしたっけ?

(おやおや、予想通りだな)小中学校向けの教材を販売している会社がEC事業をスタートして、卒業シーズンに使う商品Aを販売した。小中学校からの注文のなかに少年スポーツクラブの「卒団式」の注文が入っていることに気づいた。

あーーー! 思い出してきました。「『卒団式』のニーズを発見したことで、どのように会社の動きが変化したか?」そんな宿題でしたよね。

当たり~。で、考えてきたの?

忘れました……。

じゃあ、一緒に考えていこう!

石田さんって、優しい~。
ニーズに気づくためには「アンテナを張る」ことが重要!

前回も話した通り、少年スポーツクラブからの注文のような「自分たちが今まで想定していなかった注文」があったとき、その「新しいニーズ」の可能性を見逃しちゃいけない。

まだ自分たちが気づいていない「新しいニーズ」の可能性があるわけですよね。

いつだって、新しい可能性はお客さまが教えてくれるからね。
ECのマーケティングで重要なのは「情報管理」であり、日々の情報からどのような仮説を立て、次の改善施策につなげていくか、なんだ。まあ、実際はどのビジネスでも「情報管理」の重要性は一緒だよね。変化の早い時代だから。

今回の場合は、「卒団式」というニーズに気づくことができた。実は過去にも「卒団式」らしい注文が入っていたとしても、「なんで注文がきたのだろう?」ってアンテナを張っていないと、見逃しちゃいますよね。

まさに、その「アンテナを張る」ってことが大事だよね。「卒団式」のニーズに気づき、そして過去にも「卒団式」らしき注文があった。この事実から、どんな仮説が立てられると思う?

普通に考えると……「もっと『卒団式』の需要があるんじゃないか?」って考えますよね。

その通り!! ECサイトで「卒団式」のために商品Aを購入している少年スポーツクラブはごくごく一部で、実は世の中に需要が溢れているんじゃないかって考えられるよね。
ちなみに経済産業省のデータによると、令和3年度のスポーツ少年団数は2万8582団体だったらしい。

おお! 公的なデータまで石田さんが持ち出してきた! そう考えると需要はまだまだありそうですよね。

そうなると、マーケティングの動きはどう変化すると思う?

う~、あ、わかった! 自分たちから少年スポーツクラブにアプローチできるようになるのか!

そうなんだ。需要がわかれば、自分たちからそのニーズにアプローチできるようになる。
これまで商品Aについて、「小中学校」や「卒業」関連のキーワードでネット広告をかけていたところに、「スポーツクラブ」や「卒団式」関連のキーワードを加えることができる。

会社自体が閑散期ならば、少年スポーツクラブに直接営業に行くこともできますよね!

うん、実際に営業メンバーはその営業活動を考え始めた。
既存事業である小中学校の教材の卸には商圏の制限があるけれど、少年スポーツクラブであればエリアの制限はないからね。

もしかして、小中学校に直接行って飛び込み営業をしたとか?

まあ、それも1つの手ではあるんだけれど、飛び込み営業は遠方には行けないじゃない。時間もお金もかかる。だから、連絡を取ってサンプルを送った。「もしよければ『卒団式』に使っていただけませんか?」と。

あーそうか。少年スポーツクラブのホームページや、ホームページがなくてもX(旧Twitter)、InstagramなどのSNSを開設しているところも多いですもんね。ネットを窓口に営業アプローチができますね。

新しい可能性はお客さまが教えてくれる

ECという「受動的」にお客さまから注文をいただくだけではなく、「能動的」にお客さまにアプローチをするようになったわけだけど、ここでまた新しいニーズを得た。

少年スポーツクラブのお客さまから、ですか?

そう。いつだって、新しい可能性はお客さまが教えてくれる。お客さまから商品Aに「野球のボールのワッペンを付けられないか?」という要望があったんだ。

つまり、「少年野球」のスポーツクラブの「卒団式」だったわけですね。

今までのお客さまは小中学校の卒業に使う商品Aを「卒団式」に使っていた。でも、今回は「『卒団式』用の商品を作ってほしい」そんな要望がきたんだよね。

わかった。「『卒団式』専用の商品企画」という新しいニーズに気づいたんですね。

そうなんだよ。やっぱり少年スポーツクラブの皆さんは自分たちの競技に合った商品が欲しかったわけだ。
野球だけじゃなくて、サッカー、ミニバス(バスケットボール)、水泳、テニス――いろいろな少年スポーツクラブがあるよね。

それぞれで使うスポーツ用品をワッペンにしたら、よりお客さまのニーズに応えられそう!

あとは、少年スポーツクラブのマークをワッペンにしたりしたら、よりお客さまが喜んでくれそうだよね。
「卒団式」専用の商品企画をすることで、もしかしたらこれまで商品Aでの購入を控えていたお客さまの購入も期待できるかもしれない。

専用の商品企画をすることで、商品単価を上げられそうですし、利益率も高くできそうですなぁ(悪い顔)

ま、まあ、利益とはお客さまに提供した付加価値の表れだからね……良いんじゃないかな。

ECに取り組む=会社のDX化につながる

少年スポーツクラブに能動的にアプローチし、少年スポーツクラブ専用の商品企画をする。そしてまた、専用の商品をもって少年スポーツクラブに能動的な提案をする。会社全体の動きが変わってきたわけだ。

EC運営が会社全体の動きを変えていっているわけですね。

EC運営から発見したニーズを、会社全体の戦略につなげているんだよね。ECに本気で取り組む価値、あるでしょ?

ECというものをもう少し小さく考えていました。

ECのマーケティングを展開するためには、マーケティングデータの取得や集計、分析の土台が必要になる。そのためには自社のシステムやデータベースを見直さなきゃいけないし、場合によっては書類のデータ化から必要になるかもしれない。また、社内で情報の流れをスムーズにするための組織体制の変更もポイントになってくるよね。
そして、一番重要なことだ。ECのみならず、インターネットやデータ、システムの知識がある「デジタル人材(組織・チーム)」を育てなければいけない。

あ、石田さんが「EC事業に本気で取り組む価値」として言いたいことがわかった! ECに取り組むことで、「会社をデジタル化していきましょう」ってことなんだ!

ネッタヌ君、よくわかったね! 単に「EC=売り上げ」ではなく、「EC=会社のデジタル化(DX化)」なんだ。EC事業を「基軸」として、会社を変えていくことができるわけなんだ。

なんか、ネッタヌの視野も広がりました。

ECって面白いでしょ。
EC事業を進めながら会社をデジタル化させることができる。EC事業を進めながらだから、必ず成果に「必要な」デジタル化を施すことができる。多くの企業にありがちな、成果のために「本当に必要なのか」わからないままツールやシステムを導入することはない。目的として成果に目が向いている限りはね。

うん。ECって面白い!

ちなみにだけど、先の小中学校の教材を販売している会社。「卒団式」の他にも、次の新しいニーズに気づくことができた。

え? なんだろう。

ヒントは小学生や中学生の多くが通っているところ。スポーツよりも多いんじゃないかな。何だと思う?

わかった。塾だ。学習塾!

学習塾もさ、中学受験・高校受験が終わった後に、卒塾式的なものがあるんだよ。ここに何か提案できないか。そこに目を付けたわけだ。

なるほどー! でもこれって、「卒団式」の可能性に目を付けなかったら行きつかなかったことですよね。

日常のちょっとしたことに「なぜ?」と疑問を持つこと。ちょっとしたことで未来は変わるんだよ。フッ

石田さん、俳優みたい!

次回も名言、期待してね。
ECマーケティング人財育成は「EC事業の内製化」を支援するコンサルティング会社です。ECMJコンサルタントが社内のECチームに伴走し、EC事業を進めながらEC運営ノウハウをインプットしていきます。詳しくはECMJのホームページをご覧ください。
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