AI学習コミュニティ「SHIFT AI」を運営するSHIFT AIは12月19日、2025年のAI業界の動向を振り返り、2026年に向けたAI技術およびビジネスの進化に関する展望を発表した。

2025年は生成AIが現場の実務を担い始める
SHIFT AIによると、2025年は生成AIが「単なるチャットボット」の枠を超え、自ら考え、現場で実務を担い始めた1年だったと指摘。年初には中国企業による価格競争が激化し、OpenAI一強の構図が崩れた。Googleの「Gemini 3」や「Nano Banana Pro」、DeepSeekの無料オープンウェイトモデルなど、多様なAIが台頭し、急速な進化を遂げた年でもあった。
特に2025年は、次の3つの転換点を迎えたとしている。
「反射的な回答」から「熟考」へ
「DeepSeek-R1」「Claude 3.7」「OpenAI o1」シリーズの登場により、AIは回答前に検算や確認を行う能力を獲得。これにより、数学や科学、複雑なプログラミング分野における実用性が大きく向上した。
「対話」から「PC操作の代行」へ
Anthropicの「Computer Use」やOpenAIの「Atlas(Operator)」によって、AIはチャット画面上の対話だけでなく、人間のようにブラウザを操作し、複数ステップの業務を自律的に実行する「エージェント」へと進化した。
物理的・国家規模のインフラ産業へ
AI開発はソフトウェア領域を超え、巨大なハードウェア産業や電力インフラと結び付く段階に入った。最大5000億ドル規模とされる「Stargateプロジェクト」や、Microsoftによる原子力発電所の再稼働支援などは、AIが「電気と場所を取り合う物理産業」になったことを象徴する動きだとしている。
2026年は「自律実装」の時代へ
2026年に向けては、AIの性能向上の軸が「事前学習」から「強化学習(事後学習)」へと移行し、次のような進化のスピードがさらに加速すると予測している。
自律稼働時間の飛躍的向上
現在、AIが自律的に実行できるタスク時間は約2.5時間とされているが、2026年末には20時間以上、数日間にわたって連続稼働できるようになる見通し。設計、バグ修正、資料作成といった複雑な工程も、AIが単独で完遂できるようになる可能性がある。
マウス・キーボード操作の標準化
AIが画面情報を取得し、マウスやキーボードを使って操作する能力が、人間と同等、もしくはそれ以上に達すると予測。PowerPoint資料の作成やWeb会議の要約・タスク整理といった高度な事務作業も、AIが担う時代が到来すると見ている。
AIによる科学的発見とR&Dの加速
汎用AIが自律的に研究調査を行い、材料科学や医学分野などで新たな科学的発見を生み出す可能性も指摘。企業の競争力は、「AI研究アシスタント」をいかに活用できるかによって左右されるようになるという。
2025年は生成AIの「お試し期間」の終わり
SHIFT AIは、2025年を生成AIの「お試し期間」の終わりと位置付け、2026年にはAIが主体的に業務を完遂する「自律実装」の時代に突入するとまとめている。今後、AIは電気や水道のような「知的インフラ」となり、ビジネス現場では単にAIを使うだけでなく、複数のAIを指揮してワークフローを完遂させる「オーケストレーター(指揮者)」としての能力が人材に求められるようになるとしている。
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