酒匂 雄二[執筆] 2023/6/5 8:00

目まぐるしく状況が変化する環境下で、ECを実施している事業者はSEO施策として何に取り組むべきなのか。Googleの発表やヤッホーブルーイングの事例を踏まえながら、解説していきます。

Googleの「ヘルプフルコンテンツアップデート」と「E-E-A-T」

人工知能(AI)ツール「ChatGPT」の話題が高まっていた2022年12月。Googleは矢継ぎ早に複数のアップデートを発表しました。

1つ目は2022年12月7日(日本時間)にツイートがあった「ヘルプフルコンテンツアップデート」です。

概要はGoogleのブログにある通りですが、「有用で信頼できるユーザー第一のコンテンツを作成すること」とあります。検索順位だけを取りに行くようなGoogleを意識したコンテンツではなく、ユーザーが見て役立つ情報を提供してほしい旨が書かれています。

ユーザーにとって有益ではないと判断されたコンテンツだけではなく、そのようなページが多く含まれたサイトもマイナスの影響を受けてしまいます。年末年始から検索順位が下落傾向にある事業者は、コンテンツ内容をぜひ見直してください。(【参考】Google検索セントラルブログ:Googleヘルプフルコンテンツシステムとウェブサイト

2つ目は、2022年12月16日(日本時間)にTwitterで発表された、これまでの「検索品質評価ガイドライン」に「E-E-A-T」という新しい概念の追加です。

General Guidelines(Google検索結果評価ガイドライン)」によると、これまで並列関係だった「E-A-T」から、「E:Expertise(専門性)」「A:Authoritativeness(権威性)」「E:Experience(経験)」の上に「T:Trust(信頼性)」が成り立つという関係図が示されています。

  • Expertise(専門性)
  • Authoritativeness(権威性)
  • Trustworthiness(信頼性)→ Trust(信頼性)
  • Experience(経験)
SEO Google 検索品質評価ガイドラインに追加された「E-E-A-T」の概念図
検索品質評価ガイドラインに追加された「E-E-A-T」の概念図

「誰が、どのように、なぜ」を示すことが重要

2つの発表と「E-E-A-T」の図解を見て感じたことは、これは先述のAIを活用したチャットボットのようなツールを意識したものではないかということです。

検索エンジン「Bing」に搭載されたAIや「ChatGPT」はとても優秀だと感じることが多々ありますが、AIツールと人間の作成するコンテンツの大きな違いは、「経験」だと考えています。

「YouTube」でよく見かける「やってみた系」動画はその典型でしょう。「食べてみた」「作ってみた」「着てみた」「行ってみた」など、動画作成者の経験に基づくコンテンツは、「ヘルプフル」「お役立ちコンテンツ」と言えます

コンテンツ作成の効率化といった面ではAIツールが便利だと言えますが、誰もが気軽に使えるツールの氾濫によって、「コンテンツのどんぐりの背比べ」状態を招きかねません。一定レベルのコンテンツが増えていくと、ユーザーは自ずと「E-E-A-T」を求めるようになるのではないでしょうか

Googleも「AI 生成コンテンツに関する Google 検索のガイダンス」「有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成」を立て続けに公開し、今後のコンテンツ作成の指針を示しています。

コンテンツの作り手であるEC事業者と、買い手であるユーザー双方において、「誰が」「どのように」「なぜ」そのコンテンツを作成したのかが、これからのSEO施策、コンテンツマーケティングで心がけていきたいポイントです。

ヤッホーブルーイングに学ぶ“ちょっとだけ先回り”の最適化

私が代表を務めるユウキノインのオフィスがある大阪は「食い倒れの街」とも言われますが、飲食店街はコロナ禍で相当のダメージを受けました。食材卸しを主業としている企業からのEC参入の相談もとても多かったです。

2025年に万博が行われる大阪では、2022年12月に「大阪フードビジネスの反撃!」と題したイベントが実施されました。

初回は、筆者が“エア社員”としてSEOやコンテンツマーケティングを支援しているヤッホーブルーイングと、大阪府のクラフトビールの知名度向上および需要拡大を図ることを目的として立ち上げられた「大阪ブルワーズアソシエーション(OBA)」と、コロナ禍以降を見据えたトークセッションを行いました。

SEO Googleトレンド 大阪で行われたイベント「大阪フードビジネスの反撃」のようす
大阪で行われたイベントのようす

質疑応答も盛んに行われ、「受け身ではなく攻めの姿勢で臨まないと未来はやって来ない」という危機感、決意、希望、熱気を感じる会になりました。そんなイベントのなかで、筆者がとても印象に残っている事例をご紹介します。

先駆けた取り組み・コンテンツが自社の認知につながる

19年連続増収を果たすなど、熱量の高いファンに支持されるヤッホーブルーイングは、ファンマーケティングで成功した企業として取り上げられることも多くあります。その一例を見てみましょう。

2020年3月18日、ヤッホーブルーイングはスタッフでオンライン飲み会を行ったことをツイートしています。その実験的試みを経て、同年3月27日にファンとのオンライン飲み会を実施。その取り組みはニュース番組でも何度か取り上げられました。

下の図は「オンライン飲み」「ZOOM飲み」「リモート飲み」のGoogleトレンドです。ヤッホーブルーイングがオンライン飲み会を実施した直後の3月最終週に、検索数が急増しています。

SEO Googleトレンド 予測 推移 オンライン飲み ZOOM飲み リモート飲み
「Googleトレンド」における「オンライン飲み」「Zoom飲み」「リモート飲み」の推移

このイベントを告知したブログは「オンライン飲み会」という検索ワードで、しばらくの間検索1位になっていました。

SEO Googleトレンド 予測 推移 オンライン飲み ヤッホーブルーイング
ヤッホーブルーイングが告知したオンライン飲み会(画像は「よなよなの里」サイトより)

その後オンライン飲み会が定着していくなかでコンテンツも激増していき、1位の座を明け渡すことになります。しかし、世になかったもの、一般的ではないものを先駆けてコンテンツ化していくことで、企業や商品の認知拡大にもつながる、という重要さを感じた取り組みでした。

今後のSEOのポイントは、「ちょっと先回り」「唯一無二」のコンテンツ

これまでの3年間と、これからの何年かはまるで別物になっていくことでしょう。もはや「元に戻る」ではなく「新しくなる」と捉えていくことが必要ではないでしょうか。

「かもしれない」という考えを持ち、商品ラインアップの変更、仕入れの強化などを想定した施策の重要性が増していくのではないかと考えています。ざっと思い当たるだけでも、

  • 音楽、スポーツイベントが増えていくことによる観覧・観戦グッズ、各種スポーツ用品
  • 冠婚葬祭の通常開催による贈答用品やブライダル、フォーマル用品
  • 旅行・観光の増加によるトラベルグッズ・携行品

などは需要が高まりそうだと予測しています。

新しく生まれるあらゆるシーンで、「自社の商品・サービスはどのようにユーザーの役に立つのか」を考えていくことが必要です。

まだ見ぬ未来と、そこで出会うユーザーに向けて少しだけ先回りをする。「こういうものを探している」と検索の旅に出たユーザーが見つけやすいように、みなさんのお店の売り場を最適化しておくことこそ、これからのSEO施策では重要になるのではないかと思っています。

また、自社の商材やサービスの経験や知識に基づいた、独創的で唯一無二経験のコンテンツを提供していくこと、それこそがECサイトを健やかに運営していくカギになるのではないでしょうか。みなさんのお店の商売繁盛を心から祈念しています。

※記載内容に一部誤りがありました。お詫びして訂正致します。(2023/6/7 15:25)
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