2025年のECとSEOは「圧倒的なリアルとライブ感」がカギ! ありのまま発信で顧客との結びつきを強化する【ネッ担まとめ】
2024年が下半期に差しかかったころ、多くの事業者から2024年のECは「しんどい」「逆風」「踊り場」「試される時」といった声を聞きました。皆さんの2024年はいかがでしたか。
2024年はECにとって逆風だったのか!?
「2024年の小売事業者向けSEO対策は「体験に基づく」「役立つ」コンテンツがカギ! ローカルSEOにも商機あり」 | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/11934
2024年の展望で「旅行や観光などレジャー需要の『コト消費』に向かうのではないか」と触れました。下の図は「Googleトレンド」の過去5年の「お取り寄せ」や「通販」の推移ですが、コロナ禍の巣ごもり需要以降、緩やかに右肩下がりになっていることがうかがえます。初めての緊急事態宣言下のスパイクは言わずもがなですが、2021年と比較してみても2024年はほぼ半減していることがわかります。
ECのかき入れ時となるバレンタインデー、ホワイトデーなどのギフト系イベントをいくつか比較してみても「通販」が入るものは減少傾向にありましたが、筆者のクライアントで最も変化を感じたのはバレンタインデーの通販に関するものでした。2020年のバレンタイン商戦は感染拡大直前で、2021年にピークを迎え、2024年には1/4まで減少しています。
他にも母の日、父の日でも下の図のような推移を辿っており、ECを後押しする波が低くなっていくようなようすがうかがえます。
お取り寄せや通販の指標が右肩下がりになる一方で、「楽天市場」の出店数は8000店舗ほど増えたと言われています。EC化率は右肩上がりで伸び続けていますので、検索ニーズが減少する一方、店舗数と流通額が増え、競争激化が進んでいるようにも思われます。
【参考】令和5年度電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました | 経済産業省
https://www.meti.go.jp/press/2024/09/20240925001/20240925001.html
2025年は連休少なめでEC回帰? 経済展望は?
では2025年はどのような年になるのでしょうか。暦を確認してみると、2024年は3連休以上が11回と連休の当たり年でしたが、2025年は3連休以上が8回、ゴールデンウィークやお盆は平日を挟むため、営業日が暦通りの人は飛び石連休となりそうです。
2025年の年末年始は2024年同様9連休になる人が多いと思いますが、連休が少ないこともあり、2025年はやや「コト消費」から「モノ消費」へ回帰するのではないかと、EC事業に伴走する者としては淡い期待を寄せています。
「Googleトレンド」で旅行関連の5年の指標を見てみると、2022年10月の全国旅行支援をピークに2023年以降は微減で推移しています。2024年より3連休以上が3回少ない2025年は、レジャーの消費も抑えられる動きが出てくるのではないでしょうか。
多くのエコノミストは「2025年の世界経済は緩やかな成長を続ける」と予測していますが、インフレや地政学的リスクなどの不確実な要因は依然としてくすぶっており、成長が抑制される恐れはあります。日本経済についても、世界経済と同様に緩やかな成長が予想されますが、プラス・マイナス要因も念頭に置いておく必要があるでしょう。
- プラス要因
- 「大阪・関西万博」を軸にインバウンド需要の回復
- 訪日客向けの設備拡充や、AIツールなど最新技術導入に対する投資の増加
- 賃上げの動き
- マイナス要因
- 海外経済の減速
- 円安による輸入物価の上昇
- 人口減少による労働力不足
考えられるシナリオとして、次の3つを想定しておきたいところです。
- ソフトランディングシナリオ:インフレは徐々に低下し、経済は緩やかな成長を維持
- ハードランディングシナリオ:インフレ抑制のための急激な金融引き締めから景気後退となり、失業率が上昇、企業収益が悪化
- スタグフレーションシナリオ:高インフレと低成長が同時に進行する。金融政策の対応が難しく、経済が長期的に停滞する
一方、懸念が続く地政学的リスクがいくつか緩和されることで、経済成長が加速する予想外の好転シナリオも残されます。しかし、上記のいずれの流れになっても対応できるように意識したいところです。
特に2024年の人手不足倒産は過去最多ペース(帝国データバンク調べ)を記録していましたので、2025年も人材確保に苦心する企業が増えることも想像に難くありません。賃上げも加速しており、企業側も「この会社・店舗で働きたい」と人材に思ってもらえるような発信を能動的に行っていくことが重要になってくるのではないでしょうか。
こうした点から、求人分野でのSNS活用も避けて通れなくなると考えて行動するのが良いかと思います。動画で企業やスタッフの人となりを伝えていくことはぜひ取り組んでいきたいですね。
2025年の成長には「圧倒的なリアルとライブ感」がカギ
コロナ禍以降、年始から行動制限なしで迎えた2024年、Webだけではなくリアルの活動による「ライブ感」で顧客とのつながりを強化した企業もありました。その好事例をいくつかご紹介します。
根強いファンに支えられている「IKEUCHI ORGANIC」
テーマは圧倒的なライブ感。『IKEUCHI ORGANIC OPEN HOUSE -LIVE TOUR 2024-』を開催 | IKEUCHI ORGANIC
https://www.ikeuchi.org/magazine/openhouse2024/
どん底から再生したタオル業界の風雲児。今治から最高のタオルを届けるチーム「IKEUCHI」の裏側 | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/5076
1つ目は、今治タオルのD2Cブランド「IKEUCHI ORGANIC(イケウチオーガニック)」のイベント。「オープンハウス」と題して開催しており、愛媛県今治市にある工場に全国からファンが集い、ランチ会・工場見学・会社の歴史やタオルの洗濯方法を学ぶ講座まで濃密なプログラムです。コロナ禍で中止していましたが2023年から再開、2024年からはサブタイトルに「ライブツアー」が付け加えられました。
テレビで取り上げられることも増え、世界で活躍する一流アストリート、人気俳優、お笑い芸人までファンを公言する人も多い「IKEUCHI ORGANIC」。しかしその歩みは順風満帆ではなく、2003年には取引先の倒産の煽りを受けて連鎖倒産を経験しています。
しかし、「がんばれ池内タオル」というファンサイトができるほど根強いファンに支えられ、会社の売り上げの1%に過ぎなかった自社ブランドを主軸に据え、民事再生法で復活を果たして今日に至ります。
絶体絶命の危機に瀕した際に手を差し伸べてくれたのは熱狂的なファンだったからこそ、今も顧客とのつながりや交流を大切にしているようすが伺えます。製造現場を公開しても恥ずかしくない、真摯なもの作りをしていることも愛されている証かもしれません。
ファンマーケティングのパイオニア「ヤッホーブルーイング」
もう1つの事例は、長野県のクラフトビールメーカー「ヤッホーブルーイング」です。
大小さまざまなファンとの飲み会「宴(うたげ)」で熱狂的なファンを生み出してきたヤッホーブルーイングですが、コロナ禍での数年間、リアルでのイベントがほぼ実施できなくなっていました。
5年ぶりに復活したファンイベント「超宴」は2024年5月24日~26日に北軽井沢のキャンプ場で行われました。約1000人分のチケットは、一般抽選での倍率が2.4倍。先着販売の日帰りチケットは僅か2分で完売しました。
5年ぶり復活のヤッホーブルーイング「超宴」に潜入 熱狂を生むわけ | 日経クロストレンド
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/casestudy/00012/01482/
よなよなエールの超宴2024 in 新緑の北軽井沢 after movie | よなよなの里(YouTube)
https://www.youtube.com/watch?v=fgd5HLXHfUE
当日は好天に恵まれ、イベントを待ちわびたファン1000人での乾杯は圧巻でした。ヤッホーブルーイングの「エア社員」(外部スタッフ)である筆者も、当日はビールブースでビールを注がせてもらうなど多くのファンと交流することができ、とても楽しい1日でした。
ヤッホーブルーイングも1990年代後半の「地ビールブーム」の山あり谷ありを経験しましたが、そんな窮地を救ってくれたのも、やはり熱狂的なファンでした。
これは仮説ですが、もしチケットを倍額にして倍率が1倍を切ったとしても、その収益によってイベント内容をさらに充実させることができ、多くのファンのロイヤルティ向上につながれば、それは双方にとって良いことだとも言えるのではないでしょうか。
単に値上げをすれば良いわけではない。テーマパークの事例に学ぶ
コンビニのおにぎりでも1個300円に迫る価格帯のモノも増えているような原材料・物価高騰のなか、中小企業にとって安売り路線を続けることが健やかであるとは到底思えません。「何を安く買うか」よりも「誰から・どこから良いものを手にするか」という、良い購買体験に価値を見出している消費者も増えてきているのではないでしょうか。
客が減るディズニーリゾート…でも売り上げは過去最高。新エリアだけじゃない「強さ」徹底分析 | Business Insider
https://www.businessinsider.jp/post-296388
コロナ禍で大打撃を受けた「ディズニーリゾート」も、コロナ禍以降の売り上げは好調ですが、来場者数は減少傾向にあります。しかし、客単価は2020年以前と比較して5000円ほど上昇しており、入場料の値上げ、有料「ファストパス」が大きな要因だとわかります。
ユニバーサル VIP エクスペリエンス・プライベート・ツアー | ユニバーサル・スタジオ・ジャパン
https://www.usj.co.jp/ticket/guidetour/vip-experience.html
「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)」でも、VIP体験でパークを楽しむことができる約30万円~40万円の「ユニバーサル VIP エクスペリエンス・プライベート・ツアー」が好調で、1月時点で予約可能な8月分が既に完売しています。
これらの事例から、単に値上げをすれば良い話ではないことがわかります。自社にしかできない唯一無二の価値を創造し、より良い体験を提供することでお店と顧客の結びつきを強化していくべきではないでしょうか。
「amazon.co.jp」に代表されるような「安く買い、早く届く」サービスが成長著しかったEC業界でしたが、物流の「2024年問題」、人材不足の「2025年問題」も浮き彫りになるなか、その舞台で戦いを挑めない中小企業が取り組めることは、顧客と向き合うことではないかと思います。
コロナ禍で人の交流が一度分断され、ECは確かに追い風を受けました。しかし、リアル回帰が進むなか、ECでもエンドユーザーは人であることを再認識していきたいところです。
あなたの会社・店舗が危機を迎えた時、「潰してなるものか」と手を差し伸べてくれる顧客がどれだけいますか? そこへ思いを馳せると、ファンミーティングやオフ会イベント、カスタマーサポート、CRMの施策も2025年に見直したいポイントかもしれません。
次回は2025年の展望について、お話しします。
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