通販新聞[転載元] 2023/11/21 7:00

さくらフォレスト事件に端を発した消費者庁の届出根拠「確認」は、88件全製品が撤回となる可能性が高い(※編注:消費者庁食品表示企画課は、さくらフォレストの機能性表示食品に対する措置命令を踏まえ、同一根拠で届出を行う88件の「確認」を行った)。ただ、企業には不満がくすぶっている。

編注:「さくらフォレスト事件」とその余波とは

消費者庁が2023年6月に、さくらフォレストの機能性表示食品「きなり匠」「きなり極」の2商品について、消費者庁は「科学的根拠に合理性が欠く」として届出表示を景表法違反とみなす処分を実施したこと。これを受けて、さくらフォレストは2商品について機能性表示食品の届出を撤回した。機能性表示食品の届出表示そのものを不当表示と判断した消費者庁に対し、この処分は業界内で混乱と反発を招いている。

通販新聞ダイジェスト

【さくらフォレスト事件の余波】機能性表示の根拠めぐる問題、基準の不明確さに波紋

消費者庁の食品表示対策課がさくらフォレストに対し、機能性表示の届け出に「科学的根拠に欠ける」とみなした処分から端を発した、機能性表示の「根拠」をめぐる問題。現況と業界への波紋はどのようなものか
通販新聞[転載元]2023/8/31 8:00340

機能性表示食品の届け撤回 or 撤回申し出は80件

処分の余波を受けた各社の対応は、一気に収束の動きを見せている。8月17日、消費者庁が公表した対応状況は、根拠がある旨の主張が前回公表(7月27日)の73件からわずか8件に減少。80件が、撤回もしくは撤回意向の申し出を行った

根拠がある旨の主張は、「DHA・EPA」で三生医薬の2製品(いずれも販売休止中)、「モノグルコシルヘスペリジン」は、明治製薬(販売状況不明)、興和(販売休止中)の2製品、「オリーブ由来ヒドロキシチロソール」は、東洋カプセル(販売中)、ヘルシープラス(同)、新日本ウェルネス(同)、四季乃舎(販売休止中)の4製品だ。

食品表示法に基づく確認結果の概要(8月16日時点)
食品表示法に基づく確認結果の概要(8月16日時点)

ただ残る製品も「問い合わせと前後して撤回届を出した」(興和)、「撤回の意思は伝えた。販売中止の手続きを取り次第撤回する」(ヘルシープラス)、「17日の公表後、撤回の意向を伝えた」(新日本ウェルネス)、「科学的根拠に問題がないという主張を通したい意図はなく、当局に相談した後に撤回届出を提出する予定」(三生医薬)と多くは撤回の意思を固める(※編注:この記事は8月24日、9月7日に「通販新聞」が配信した記事を転載しており、記事中の状況は配信時点のままで掲載しています)。

四季乃舎は「申し訳ないが方針として取材は受けていない」と対応は不明。明治製薬、東洋カプセルは本紙(※編注:「通販新聞」)掲載までに回答は得られなかった。

三生医薬は現時点で撤回の申し出に至っていなかった理由について、「受託製造として多くの販売会社の機能性表示食品の開発や届出に関わる立場にある。今回の問題を真摯に受け止め、今後、科学的根拠について適切な評価ができるよう3成分のSR(※編注:機能性表示食品に申請するための文献調査)の問題点の詳細を正しく理解したいと考えている。消費者庁からの照会に対する当社回答内容についてやりとりをした上できちんと意図を理解し対応したい」と説明する。

消費者庁に不満蓄積

リスク回避のためやむなく「撤回」した企業も

一方、撤回の申し出後も販売を続ける企業はある。健康食品通販を行う和漢はすでに撤回の申し出を行った企業リストに掲載されているが、その後も対象製品である「オリーブ&ギャバの恵み」のウェブ広告の露出が多くみられた。

これに同社は「撤回の意向は示したが、成立までの期間は販売が認められている期間との判断から。新たな製造は行っておらず、在庫がなくなり次第終売する」とする。今後の再販は、「原料、エビデンスの内容によって切り替えて販売する可能性はある」としている。

撤回が進んだ背景には、食品表示法に基づく撤回の指示、景品表示法処分のリスクがある。消費者庁の判断に沿えば、さくらフォレストと同一根拠で届出を行う88件は、常時、違反状態といえる。このため、根拠の是非に疑問を持つ企業もリスク回避に向けいち早く撤回の意向を示す必要があると判断したとみられる。

一方的な制度運用に疑問、不満の声

今回のリスト公表を前に、業界団体が撤回を促したことも影響している。ある事業者は、「消費者庁が17日に撤回意向の企業リストを公表予定との連絡を受け、撤回をしたほうがよいと促す内容だった。申し出先の案内もあった」とする。ただ、「撤回したほうがよい理由」は言及がなかったという。

なかには確認を受けて消費者庁に根拠に対する考え方を示したものの、その後一向に同庁(食品表示企画課)から回答が得られていない事業者もいる。このため、「問題視する理由の当たりはつくが、本当に悪いのか、よいのかわからない」、「DHA・EPAは低容量であっても一応の機能がある判断。やり方に問題があるのかジャッジの理由が知りたい」、「問題とする詳細の理由がわからなければ、今後どのように対応すればよいのか基準を持てない」など、消費者庁による一方的な制度運用に企業の不満が蓄積している。

広告表現、違反認定のポイントを考察

さくらフォレストの違反表現は「血圧をグーンと下げる」

さくらフォレスト事件に端を発した届出根拠の確認は、「88件全品の撤回」で収束しそうだ。事件は、プロセスの課題とともに、事業者が注意すべきポイントを示唆している。一つが“抽象的表現”の是非だ。

通販新聞ダイジェスト

【機能性表示食品で初】にさくらフォレスト措置命令を下した背景+変わる消費者庁の調査体制

消費者庁はさくらフォレストが展開する機能性表示食品に対し、景表法の優良誤認があるとして措置命令を下した。機能性表示食品の届出表示そのものを不当表示と判断した消費者庁。この処分は業界内で混乱と反発を招いている
通販新聞[転載元]2023/8/7 7:003150

さくらフォレストに対する景品表示法の措置命令で指摘された表現の問題は、(1)届出表示からのいわゆる「広告表示」の逸脱、(2)「届出表示そのもの」と根拠のかい離――の二つに分かれる。根拠に踏み込む後者の違法判断は、他社を巻き込む騒動に発展した。

前者は、機能性表示食品を対象に初めて景表法を発動した17年の「葛の花事件」と同じ問題だ。違反認定は、「血圧をグーンと下げる」という表現。ただ、“グーンと”という表現は人により受け取り方が異なる表現だ。境界はどこにあるか。

過去に「脂肪にドーン」が違反認定された事例も

「脂肪にドーン」。12年、消費者庁は特定保健用食品「黒烏龍茶」を販売するサントリー食品インターナショナルにテレビCMの改善を求める書面を送った。

問題のCMは、アニメ「笑ゥせぇるすまん」のキャラクターが「脂肪にドーン」と人差し指を突き出し、「食べながら脂肪対策」とのコピーとともに「黒烏龍茶」を紹介する。これに消費者委員会「新開発食品調査部会」の委員がクレームをつけ、消費者庁食品表示課(現・食品表示企画課)が「先生方から意見を頂いたので注意を促したい」と応じた

業界団体への通達は、「広告においてあたかも『当該食品を使用すれば、バランスの取れた食生活を考慮しなくてよい』旨を示唆するような表現が用いられているものがある。許可文言を逸脱するので改善が望まれる」というもの。ただ、部会で遡上にあがったサントリー食品という個別企業にも送られ、一般紙報道で明るみに出たことで対応を迫られる事態に発展した。

部会では「ドーン」の是非も議論されている。健康増進法における誇大広告の判断基準を「消費者を著しく誤認させるもの」と説明。基準の一つに「消費者から問い合わせや指摘が多く集まっている案件」をあげた。だが、CMには「そういった意見は入ってきていない」(部会の議論より)。

「脂肪にドーン」という表現も「個人の捉え方によって、学術的に判断できない表現を行っているものは、正直なところ判断しにくい」(同)としている。だが、法的根拠なく、違反箇所を明確にすることもないまま要望は出された。委員の主観が消費者庁を動かしたわけだ。

重要な判断要素の一つに「言葉の定義」

以降も、抽象的表現は、度々、争点になる。訴訟に発展したのは、17年、消費者庁がだいにち堂が販売するアイケアの健食に関するものだ。「ボンヤリ・にごった感じに」という表現を対象に措置命令を下した。だいにち堂は、抽象的表現に不実証広告規制を適用するのは問題として国を提訴するが、22年、最高裁で請求は棄却されている。

だいにち堂は「ボンヤリ・にごった感じに」と表現した商品が措置命令の対象となった(画像は消費者庁の発表資料から編集部がキャプチャ)
だいにち堂は「ボンヤリ・にごった感じに」と表現した商品が措置命令の対象となった(画像は消費者庁の発表資料から編集部がキャプチャ)

境界を見極めるポイントの一つは、言葉の定義だろう。訴訟において、消費者庁は「ボンヤリ」の意味について「ものの形や色がぼやけてはっきりしないようす」と説明。「タワーがぼんやりと見える」といった用例があるように「一般的に目の見え方が不良である状態を意味しうるもの」と指摘した。

消費者認識を問うアンケート調査を用いてこれを示し、「目によい」という優良性を示す表現であり、不実証広告規制の適用要件を満たすとした。裁判所もその主張を容れた。訴訟からも「言葉の定義」は重要な判断要素になっていることがわかる。

行政の対応は主観に依存?

「グーンと(ぐんと)」は、「思い切って力を入れるさま」、「他のものや今までの状態と大きく変わるさま」「急に程度の変わるさま」などの意味合いがある。血圧の数値が「大きく変わる」のは、根拠からみて妥当かが判断されたとみられる。さくらフォレストは、「過去の広告に近しい表現があり、なんとなく使っていた」とし、今後について、「一つひとつの表現の理由も根拠をもって説明できるようにする」としている。

ちなみに、「ドーン」は「物同士が衝突する様子、またはその音」「物事が立派で盛大な様子」。言葉の定義から、行政の対応が主観に依存していたことが推察される。

ただ、健増法の誇大広告の判断基準の一つである消費者の指摘などの視点でみると、今回、処分対象になった2製品の相談は4年で38件。内容も取引関連が32件で、優良性につながる可能性のある効果に関する苦情はわずか4件だ。言葉の定義は、あくまで一つの判断要素。社会に許容される誇張の範囲だったか、慎重な判断が必要だろう。

※次回(第3回)に続く

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