2025年度の設備投資計画、予定ありの企業は57.4%で1.3pt減、「コスト高」「トランプ関税」に対し懸念
帝国データバンクが5月27日に公表した「2025年度の設備投資に関する企業の意識調査」の結果によると、2025年度に設備投資計画がある企業は前年比1.3ポイント減の57.4%で、2年連続で低下した。「コスト高」「トランプ関税」に対する懸念が広がっているという。

設備投資計画のあるなかでも「大企業」における割合は48.1%と半数近くにのぼり、「中小企業」(29.4%)を18.7ポイント上回った。資金余力が比較的乏しい中小企業は、「設備投資は継続かつ積極的に行っていきたいが、PCやソフトウェアなどすべてにおいて価格改定があるので中小企業には難しい一面もある」(専門サービス)など、設備の価格上昇が投資の足かせとなっている。
設備投資計画がある企業の動向
設備投資の内容
2025年度に設備投資計画がある企業が予定している設備投資の内容は「設備の代替」が6割で最多。次いで、「既存設備の維持・補修」(30.7%)や省人化なども含む「省力化・合理化」(25.8%)、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」(20.9%)、AIなど「情報化(IT化)関連」(20.3%)が続いた。「DX」「情報化(IT化)関連」のいずれかを選択したデジタル投資を検討している企業は32.8%となった。
設備投資の資金調達法
主な資金調達方法は「自己資金」が5割超で最も高く、金融機関からの借り入れは3割だった。「補助金・助成金」は5.5%とわずかであるが、「中小企業」は6.4%、うち「小規模企業」は8.5%と規模の小さな企業での活用が目立つ。
企業からは「地方の中小企業においては、補助金ありきの設備投資となっている。最近は補助率が低下していて、自己資金の負担が大きいため、どうしても消極的にならざるを得ない」(機械製造)といった補助率や対象範囲について厳しい声が複数寄せられた。
予定投資額
設備投資予定額は平均で1億2429万円となり、前年の1億2705万円から276万円減少した。設備投資の予定あり企業の割合を規模別にみると、「大企業」は70.6%と7割台を維持した一方で、「中小企業」は55.0%、うち「小規模企業」は44.6%となっており、規模が小さくなるほどその割合が小さい傾向が続いた。
設備投資の予定がある企業からは、「人材不足を補うために、勤怠管理や業務日報のデジタル化を進めている。また、システム導入による作業の標準化で属人化を防ぎ、効率化と品質維持の両立をめざしている」(メンテナンス・警備・検査)といったコメントがあがった。
設備投資を予定していない企業の動向
設備投資を「予定していない」企業は前年比1.3ポイント増の34.4%に達した。設備投資をしない理由を尋ねたところ、「先行きが見通せない」が47.9%で最も高く、前年からの上昇幅(+3.8ポイント)が最も大きい。次いで「現状で設備は適正水準である」(25.2%)、「投資に見合う収益を確保できない(コスト上昇は含まない)」(15.4%)、「借り入れ負担が大きい」(15.0%)、「手持ち現金が少ない」(14.2%)、「設備投資にかかるコストの上昇」(12.1%)、「自社に合う設備が見つからない」(11.9%)、「人件費の高騰による利益率の低下」(11.2%)と続いた。
回答企業からのコメントでは「今後の見通しが立てづらい状況では零細企業にとって設備投資は行えるものではない。一歩間違えれば倒産につながる」(建設)といった厳しい声のほか、「2024年度に業務用PCやサーバーなどの入れ替えを行ったため、今年度は投資する予定はない」(機械・器具卸売)などの声が寄せられた。
規模別に比較すると、「中小企業」では、「先行きが見通せない」が「大企業」より15.7ポイント高いほか、「借り入れ負担が大きい」「手持ち現金が少ない」も5ポイント以上上回っており、先行きと資金面に対する強い不安がうかがえる。
「コスト高」「トランプ関税」に対する懸念が多く
企業からは設備投資予定の有無にかかわらず、原材料価格の高止まりなどを背景とした設備投資にかかるコストの上昇や金利の上昇傾向などに対する懸念の声が多く寄せられた。
また「米国の関税問題が解決しなければ、計画ができない」(鉄鋼・非鉄・鉱業)のほか、「新規工場用地の購入並びに既存工場の改築を予定しているが、米国関税の動向次第では投資時期を延期する可能性もある」(メンテナンス・警備・検査)など、「トランプ関税」が設備投資の足かせとなった様子や、今後の設備投資に影響を与えることを懸念するコメントも多数あがっていたという。
帝国データバンクでは「設備投資を取り巻く環境が良好といえない状況が続くなか、補助金の補助率や対象範囲の拡大など、制度の充実を希望する声は少なくない。設備投資に対する慎重な姿勢の影響が景気の動向に強く表れる前に、国には多岐にわたる支援策・促進策の強化が求められる」と調査を総括している。
調査概要
TDBでは、全国2万6590社を対象に「設備投資」に関するアンケート調査を実施。設備投資に関する調査は2017年4月以降、毎年4月に実施、今回で9回目
- 調査期間:2025年4月16日~4月30日(インターネット調査)
- 調査対象:全国2万6590社、有効回答企業数は1万735社