通販新聞 2016/12/15 7:00

ディー・エヌ・エー(DeNA)がキュレーションメディアの記事の信憑性を疑われ、全10メディアを非公開にしたいわゆる“DeNAショック”を受け、ほかのキュレーションメディアも軒並み非公開に踏み切る事態に陥っている。「東京都が同様の他サイトへの対応も検討」という報道の影響もあり、多くの運営者が安全策を取っているためだろう。ただ、キュレーションメディアを介した広告手法の問題は複雑。都のみで解決できる問題でもない。着地点はどこにあるのか。

東京都は11月28日、DeNAが運営する「WELQ(ウェルク)」の記事を問題視し、来庁を依頼した。都議会議員の音喜多駿氏の指摘を受けたものだ。

都によると、ある化粧品に「アトピー性皮膚炎に効果のある」といった記載があり、記事から販売サイトへの誘導が行われていたためだという。記載は薬機法(旧薬事法)に触れる可能性があり、記事と広告主の関係性など「ウェルク」の仕組みを聞くためだ。

ただ、キュレーションメディアの運用は、企業によってさまざま。「ウェルク」も会員登録した一般のライターや社員、企業が依頼した外部ライターが書くケースもある。一般人が純粋なくちコミとして書くことも考えられる。

薬機法上、広告とみなす要件は3つ。「顧客を誘引する意図」「特定の商品名の表示」「一般人が認知できる」があることだ。その上で医薬品的効果の暗示があれば違反(未承認医薬品の広告の禁止)となる。特定の商品名、販売サイトへのリンクなど3要件を満たした上で「アトピーに効く」といえば、当然、薬機法違反の疑いは濃くなる。通販企業が自社サイトへの誘導を目的に運営していた場合もそう判断される可能性が高い。

ただ、違反とならないケースもある。純粋なくちコミとして購買意欲をそそる意図がない場合だ。これは広告と判断されない。「表現の自由」があるためだ。これを無視してまで、なんでも取り締まることは難しい。あくまで記事の掲載者の意図、広告の判断や金の流れなど個別に判断する必要がある。来庁依頼も、仕組みを知り、違法性があるかを判断するため。都も「キュレーションメディア自体を否定するつもりはない」とする。こうしたビジネスモデル全体のあり方に関する議論となれば、総務省などとの協議も必要になる。

とはいえ、多くのキュレーションメディアで薬機法上、問題となる記載が氾濫しているのも事実。運営も媒体社だけでなく、通販企業が独自に立ち上げるケースもある広告主として関わり、新規獲得を進める通販企業もいる。世の中のキュレーションメディアに対する見方が変わる中、業界として、ガイドライン作成など自主規制を行う必要性に迫られそうだ。

※記事内容は紙面掲載時の情報です。
※画像、サイトURLなどをネットショップ担当者フォーラム編集部が追加している場合もあります。
※見出しはネットショップ担当者フォーラム編集部が編集している場合もあります。

「通販新聞」について

「通販新聞」は、通信販売・ネット通販業界に関連する宅配(オフィス配)をメインとしたニュース情報紙です。物品からサービス商品全般にわたる通販実施企業の最新動向をもとに、各社のマーチャンダイジング、媒体戦略、フルフィルメント動向など、成長を続ける通販・EC業界の情報をわかりやすく伝え、ビジネスのヒントを提供しています。

このコーナーでは、通販新聞編集部の協力により、毎週発行している「通販新聞」からピックアップした通販・ECのニュースや記事などをお届けしていきます。

→ 年間購読を申し込む(通販新聞のサイト)
通販新聞の過去記事を読む(通販新聞のサイト)
→ 通販新聞についてもっと詳しく知りたい

この記事が役に立ったらシェア!
これは広告です

ネットショップ担当者フォーラムを応援して支えてくださっている企業さま [各サービス/製品の紹介はこちらから]

[ゴールドスポンサー]
ecbeing.
[スポンサー]