スピード配送の取りやめが加速――楽天ブックスも当日配送を終了、配送会社の要請受け
楽天ブックスは7月18日、オンライン書店「楽天ブックス」で提供しているスピード配送サービスを終了する。提携先の配送会社から配送業務見直しの要請を受けたのが理由。
午前中までに注文を受けると、送料・サービス手数料無料で翌日中に商品を届ける「あす楽」配送サービスは継続する。
終了するスピード配送サービスは、注文当日に配送する「あす楽 当日便」(利用料金は税込498円)、午後11時59分までに注文を受けると翌日中に商品を届ける「あす楽 翌日便」(同350円)。
一部地域を対象に2015年からサービスを展開していた。
楽天ブックスのECサイトを見ると、配送会社はヤマト運輸と提携していると見られ、「宅急便」または「ポスト投函配送」で配送している。
配送を取り巻く環境を巡っては、EC市場の拡大により物量が増加している一方で、物流業界は労働人口減少による労働需給の逼迫など、厳しい経営環境が続いているという。
ヤマト運輸は労働力確保に向けて職場環境を改善、社員の新しい働き方を創造するために、「働き方改革室」を本社内に新設するなど働き方改革を推進している。スピード配送の対応見直しをクライアントに要請しているのはその一環。
増えるスピード配送を取りやめる企業
当日配送といったスピード配送を取りやめる動きが相次いでいる。
アスクルは「LOHACO」で提供していた当日配送サービス(AIを活用した独自の配送サービス「Happy On Time」は除く)を5月に休止。スタートトゥデイは6月12日、関東エリアで展開していた受注当日に商品を配送する当日配送の受付、および配送を停止した。
アパレル通販などのクルーズも5月、アパレルECモール「SHOPLIST」での当日配送サービスを廃止している。
オルビスも6月17日に一部地域で展開していた当日配送サービスを取りやめた。
ある通販・EC会社は「ECの拡大による運送業界の疲弊は、自社も関与する社会的な問題と捉えなければならない」と指摘。配送キャリアの要請に応える形で、当日配送の取りやめに足並みをそろえ始めている。
スピード配送に関しては、消費者庁が2016年に発表した資料が興味深い。「2015年度消費者意識基本調査」によると、「追加料金が掛かるなら、最速のタイミングで受け取らなくてもよい」と回答した人の割合が60.8%にのぼった。
「確実に最速のタイミングで受け取るための追加料金の支払は、品目や状況によって使い分けたい」と回答した人は32.8%。
「追加料金が掛かっても、確実に最速のタイミングで受け取りたい」と回答した人の割合は5.4%にとどまっている。