公文 紫都 2020/7/17 9:00

ECサイトを作らずに、LINEを通じてD2Cをすぐに始めることができるメーカー向けの新サービスを、オンライン接客ツールの空色が提供する。現在、大手メーカーとともに実現に向けた準備を進めている。主に新型コロナで影響を受け、ECでの新規販路開拓をめざすメーカーなどが対象。「ECサイト要らずD2C」と言えるそのスキームの概要とは? 空色の中嶋洋巳代表自ら、ネットショップ担当者フォーラム編集部に語った。

LINEアカウントがあればすぐにD2Cを開始できる

空色が新たに提案するスキームは、LINEアカウントがあれば、空色のオンライン接客ツールと組み合わせることで、D2Cをスタートできるというもの。ECサイトを開設しなくても、ECが担う商品情報の提示やレコメンド、また決済を、LINEを利用したオンライン接客の中でまかなう。

そのため、ECサイト開設に必要な初期投資がかからない。決済方法はクレジットカード決済、もしくは代引き決済で対応するため、ECサイトをスタートするために必要となる様々な手続きや準備などを省くことができる。

この仕組みはLINEアカウントのリッチメニューと、空色のオンライン接客ツールを組み合わせて実現する。

中嶋氏は、新サービスのポイントとして、以下の4つをあげる。

1. LINEアカウントを作る(または既存アカウントを利用)

新規、または既存のLINEアカウントを利用する。流通会社を通じて間接的に顧客と向き合うメーカーにおいても、店頭販売に注力しているスタッフを抱えているケースは多い。そういった販売スタッフの知見を生かし、LINE上で顧客の悩みや商品に関する相談を受け付け、販売につなげる

顧客情報はLINEのチャット内で確認。クレジットカード払いや代引きサービスを提供する決済会社と組み合わせることで決済を行い、既存の物流を通じて配送する。商品購入後のアフターフォローもチャットで行うことで、顧客との継続的な関係を構築する。

LINEを利用したオンライン接客イメージ(画像:空色提供)

2. 空色のオンライン接客ツールと連携(AIを活用した一部応対の自動化)

LINEと空色のオンライン接客ツールを連携し、LINEを簡易なデジタルチャネルにする。すでに空色では、様々な業界でのチャット接客実績がある。これまでに空色が蓄積した 「顧客のさまざまな悩みと、悩みに応対する接客ログデータ」を活用し、一部応対をAIで自動化する。

AIで対応が難しい会話は有人接客と組み合わせることで顧客満足を高め、購買の意思決定を支援。販売スタッフの接客キャパシティを拡大し、24時間接客可能な体制を実現する。継続的なオンライン接客の品質向上と、会話ログデータのマーケティング活用は空色が支援を行う。

AIチャットボットによる接客自動化を行った場合のイメージなど(画像:空色提供)

3.  販売スタッフに接客してもらう(必要であればオンライン接客トレーニングからオンラインチャネルの運営支援を空色でサポート)

LINEを活用することで、サイトがなくても、商品画像や使い方動画など、メーカーが持つさまざまなコンテンツを接客の延長で紹介できる。

4. クレジットカード払いか代引き払いで決済

LINE接客では、クレジットカードか代引きにて決済を行う。ユーザー企業が、他のモバイルペイメントやコンビニ受け取りなどを希望する場合は、拡張も可能。なお空色が決済サービスを提供するのではなく、既存の決済サービス等を利用する。

すでに、顧客宅にフライヤーを送っている企業であれば、LINEアカウントを紹介するQRコードをつけるだけでプロモーションすることもできる。

中嶋氏はサービス開始の背景について、次のように説明する。

「D2C」という言葉が広がるなかで、いざメーカーが始めるにはハードルが高いと思われがちだ。しかしこの仕組みであれば、LINEアカウントさえあればサイトがなくても、すぐに始められる。LINEアカウントを開設し、たくさんの「友だち」を抱えているものの、そのメリットを生かしきれていない企業も多い。そうした企業にもぜひ活用してもらいたい(中嶋氏)。

コロナ禍でリアルの販売チャネルが縮小し、ECで直販を模索するメーカーらが対象

コロナ禍でリアルの販売チャネルが縮小し、急遽、新たな販路としてEC参入を検討せざるを得ない状況に追い込まれたメーカーは少なくない。しかし、ある程度本格的なECサイト開設をめざすのであれば、時間もコストもかかることから、「すぐにスタート」とはいかないのが実状だ。

また、秋から冬にかけて新型コロナウイルス第2波、第3波が襲う可能性もあり、再び緊急事態宣言発令による、リアル店舗閉鎖といった状況に陥ることも考えられる。そうした状況下でも、サイトを開設せずにD2Cが始められ、さらに休業中の店舗スタッフがデジタル接客にあたれる空色の新サービスは活躍する可能性が高い。

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