最強ニトリの物流を支える「ホームロジ」が取り組む衝撃の“流通革命”とは。キーマンが全容を語る
33期連続で増収増益、今期(2021年2月期)は34期連続達成をもくろむニトリ。好調な全体業績のなかでも際立つのが、600店舗を超える実店舗とネット連動により、400億円超えに達したEC売上だ。その成長の背景には、多様化する消費者ニーズに対応するフルフィルメント体制があげられる。それを担うのがニトリのグループ会社で、物流関連事業を行うホームロジスティクス(ホームロジ)。
デジタル活用と物流面でグループを支えるホームロジの深作康太氏(最高情報責任者、ソリューション事業本部本部長)にインタビューし、ニトリの強さの源を探るとともに、ホームロジが水面下で進める“流通革命”について紹介する。
急成長のニトリを物流面から支えるホームロジとは
右肩上がりの成長を続けるニトリの2020年2月期の連結売上高は、前期比5.6%増の6422億円。EC売上高は、同14.6%の443億円と、全体業績のみならずEC売上も好調に推移している。
急成長中のニトリを物流面から支えるのが、ニトリの物流部門を分社化して2010年に設立したホームロジだ。自動ロボットなど最先端の技術を導入し、コスト削減と作業の効率化を実現している。
ホームロジは自社のリソースを他社にも提供し、ラストワンマイル配送を支援する外販事業(EC事業者などの物流・配送支援)も行う。会社全体の事業規模は約800億円。そのうち外販事業売上は約20億円となっている。
国内47都道府県を網羅し、人口カバー率は98%にも上る日本最大級の物流ネットワークを保有するホームロジは、小さな日用雑貨から大型の家具まで年間810万件を超える配送を請け負う。また高騰する物流コストを抑制するため、最新技術の導入によって現地での生産性向上にも注力している。
ニトリのO2Oマーケティングをサポート
近年ニトリはO2Oに力を入れており、店舗とネットを連動したマーケティング面においてもホームロジの存在は欠かせない。
たとえば、約350万人(※2019年2月時点)が利用する「手ぶらdeショッピング」。これは、ニトリのスマートフォンアプリに内蔵された機能で、アプリを利用して店舗で商品バーコードを読み取ると、買い物リストが作成されるというもの。買い物リストはECと連動しており、そのままECで購入するか、店頭で精算し自宅に配送するか選択できる。
また、ECで購入した商品を店頭で受け取る「店頭受取サービス」は、2019年2月時点で約16万件利用されている。
個人宅への配送はもちろん、このような店頭での柔軟な受取対応が成り立つのは、ホームロジの“物流力”あってこそだ。
さらなる成長に向けたニトリグループの“流通改革”
ホームロジは今、2020年秋のローンチを目処にしたITプロジェクトに乗り出している。“流通革命”とも言えるその大型プロジェクトを先導するのがホームロジの深作氏。ITやマーケティングに精通する深作氏がプロジェクトに採用しているのが「ブロックチェーン技術」だ。
「関わる人全員でデータを管理・監視するため、情報を改ざんできない」「安全にデータを記録できる」などから注目を集めるブロックチェーン。その最先端技術をニトリグループで活用する背景には、ステークホルダーの多さと電子化非対応という課題がある。
深作氏は次のように言う。
ニトリはトラックを所有していないので、配送は全て提携先の運送会社約150社に委託している。約150社の傘下に、二次請け、三次請けがいるという構造で、物流関連のステークホルダーが非常に多い。
外販事業においてはいかに車両を確保し、有効活用できるかがビジネスを回す上で重要になるが、必要な各種データを電子化できていないという課題がある。そこで当社だけでなく、関わる全ての企業がメリットを享受しながら安全に電子化プロジェクトを推進できるよう、ブロックチェーンに目をつけた。(深作氏)
深作氏が言う「車両の有効活用に必要なデータ」とは大きく、①車両データと、②特殊技能/スキルの2点。
①車両データ
(例)
- 荷主から預かった荷物を運べるサイズの車両か
- 業種・業態に適した車格か(※アパレルの場合はハンガーがかけられる車格が必要)
②特殊技能/スキル
(例)
- ドライバーが案件ごとに必要な特殊技能を持っているか(※荷主から預かった商品が大型の場合、基本は、2人が配送にあたる「2マン配送(場合によって3人が配送にあたる3マン配送)」が必要となる。さらに、配送先がマンションで階段がない場合や商品の形状によっては、外から釣り上げなければならない)
- ドライバーが商品の配送に必要な許認可を取得しているか(※家電配送は商品によって許認可が必要)
ホームロジで扱う案件はニトリの物流・配送に関するものだけではなく、他社(外販)事業もあることから、細かなニーズが数え切れないほどある。配送に必要な、細かくかつ膨大なデータを電子化することで、「(関係する企業が)シームレスに情報を扱えるだろう」と深作氏は期待を寄せる。
ブロックチェーンは関わる全ての企業が同じ情報にアクセスできるだけでなく、技術の特性上、配送に関するものなど重要なデータが改ざんされるリスクが低い。関わる全社がリスクを負うが、その分、平等にメリットを享受できるというのがこのプロジェクトのポイントだ。
後編は、2020年秋にローンチを予定する、プロジェクト第1弾の詳細について紹介する。