公文 紫都 2020/5/18 8:00

ニトリの物流を始め、他社向けにも物流事業を外販するニトリグループのホームロジスティクス(ホームロジ)・深作康太氏(最高情報責任者、ソリューション事業本部本部長)へのインタビュー。前編に続き、後編ではホームロジが注力する、最新技術を流通に活用した大型プロジェクトの中身を紹介する。

深作氏は、ホームロジの提携先である運送会社約150社を中心に、二次請け、三次請け、荷主、各種ベンダーを巻き込む壮大な構想を描く。プロジェクトは何段階かに分かれる予定だが、第一弾として「配車システム」を整備。まずは自社利用からスタートする形で、2020年秋のローンチをめざす。

データの電子化が生み出す2つの事業

ニトリグループは、物流・配送関連データの電子化により何を始めようとしているのか。深作氏によると、考えている事業が2つあるという。1つは共同配送事業。もう1つは配車システムの整備だ。

運送会社の「年間稼働率100」をコミットするための共同配送

ドライバーのスキルや車格などのデータを電子化できると、繁忙期など車両が足りなくなる時期においては運送会社を経由しなくても、ホームロジとドライバーとの「直接契約」が可能になる。

近年は物流費の高騰が社会問題となっており、「日々対応を模索しているニトリとしては、自社でなんとかしたいという思いがある」(深作氏)。

加えて、「現在、二次請け、三次請けは運送会社さん任せになってしまっている。契約の価値を平等に連鎖させることをしないと取り組みが前に進まない」(深作氏)と、「価値の平等の連鎖」という表現を用いて変革を起こしていきたいとする。

ホームロジスティクス 深作康太氏(最高情報責任者、ソリューション事業本部本部長)
ホームロジスティクス 深作康太氏(最高情報責任者、ソリューション事業本部本部長)

しかしドライバーとの直接契約を無理に進めると、運送会社の反感を買ってしまう恐れがある。ホームロジの外販事業は、提携先の運送会社の協力なしでは推進できない。ホームロジとしても運送会社とぶつかり合うような事態は避けたいところだ。

そこで双方にとって「Win-Win」の関係を維持するために深作氏が考えたのが、「共同配送」モデル。

ホームロジの年間の稼働車両台数を数値化したところ、引っ越しシーズンの4月の稼働率が高いが、夏は稼働が落ちていることがわかった。

ピークの4月の稼働率を100とすると、夏は80に物量が落ちる。つまり車両の稼働率も80に落ちることになる。ニトリグループとして実現したいのは、運送会社に対し、年間を通して車両の稼働率を100にするというコミットだ。(深作氏)

4月を標準とした場合、他の月でどのくらいの活用余地が出るか。ホームロジの試算では、4月以外すべての月で活用余地があるという。

深作氏は、「この波動を意識し、たとえば夏場であればその時期に需要があるアパレル、飲料、スポーツ用品などの他の企業と組み、共同配送を実現していきたい」(深作氏)と息巻く。

車両の安定供給を実現することで、ドライバーとの直接契約についても理解を得たい考えだ。

ホームロジが描くビジョン
ホームロジが描くビジョン(画像はホームロジが提供)

ニトリグループ独自開発の配送システム

もう1つ、深作氏が考えているのが「配車システム」だ。配車システムには、主に以下2つの役割がある。

  1. トラックがどういう順番で配送先を回ったら、効率化するかを計算する機能
  2. トラックが今どこにいるのかを動態管理する機能

すでに国内外合わせて配車システムは複数あるが、「ニッチな業界」ならではの課題がある。それは、パッケージ販売されているケースがほとんどということだ。

パッケージによるメリットは大きいものの、機能の重複、高額化しやすい、導入企業がすべての機能を使いこなせないといったデメリットもある。

そこで深作氏が進めているのが、「機能の切り売り」だ。

パッケージ販売している各社の得意な機能を組み合わせて、1つのソリューションにする。(深作氏)

ホームロジが開発を進める配車ソリューションの特徴
ホームロジが開発を進める配車ソリューションの特徴(画像はホームロジが提供)

ホームロジは現在、宅配ルート作成、測量、継走経路など、それぞれの分野で強みを発揮する数社と共同でサービス開発を進めている。

まずは各社が得意とする機能を組み合わせたり、実際の利用を見込む荷主からの要望をヒアリングしたりするなどして、システムに必要な500機能を洗い出した。一部はこれから開発予定の機能も含まれる。

「誰でも使いやすいUIをめざす」(深作氏)と、深作氏がシステム作りにおいて一番こだわるポイントはUIだ。

まずは2020年秋頃にローンチし、ニトリが社内で利用を開始した後に、他の荷主にも順次提供していく考え。また機能は拡充していく予定で、労務管理や請求管理のクラウドサービスを提供する会社とも話を進めている。

「APIを公開しているサービスであれば、どんどんつないでいける」(深作氏)と、物流事業に関わるすべてのソリューションを同システムに組み込んでいくという。同システムの開発にもブロックチェーンを活用していく考えだ。

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