カタログ通販大手「ベルーナ」が好調な理由&「衰退産業」を攻める成長戦略
ベルーナの業績が好調に推移している。2021年3月期連結業績は、売上高が前期比14.8%増の2064億9900万円、営業利益は同52.6%増の157億3400万円。当期利益は同88.3%増の110億3600万円。同社の第4次経営計画は22年3月期を最終年度としているが、コロナ禍による“巣ごもり需要”もあり、当初の売り上げ目標を上回って推移している。コロナ禍収束以降を見据えた成長戦略とは。
男性ユーザーが増加、今後はスーツを強化していく方針
主力の総合通販事業では、雑貨類やホームウエアを中心に、巣ごもり消費などの通販需要が高まったことに加え、積極的な広告展開により、売上高は同22.2%増の896億7500万円、セグメント利益は同3.1倍の53億900万円と好調に推移した。紙媒体が好調だったことに加え、ネットシフトが進んだ。新規獲得効率が大幅に改善したほか、原価率低減と在庫回転数改善に成果が出ている。
中でも、成長分野といえるのがインナーとメンズ。近年強化を進めているインナーに関しては前期売上高が75億円に達しており、100億円を視野に入れている。若年層向けに関しては単価が低くなっているものの、高年齢層向けはセット販売などで単価が維持できているという。
また、メンズについても「もともとは女性が夫のために買うケースが目立っていたが、最近は男性の購入者も増えている。これまでは商品が揃っていなかったが、ラインアップを拡大しており、買いやすくなったのではないか」(安野清社長)。
これまでメンズ商品購入者の年齢層は高めだった、現在は年齢層別に3カタログを取り扱っており、幅広い層にアピールしている。今後はスーツを強化していく計画だ。「スーツ市場は縮小傾向にはあるが、まだまだマーケットは大きいので成長の余地はあると思っているが、メンズは顧客の年齢層が高い。もっと60~70代より下の層を取り込まないといけないと考えている。試行錯誤しながらチャレンジしていきたい」(同)。
その他には、シューズや家電にも力を入れている。家電とベルーナというと意外な組み合わせにも思えるが、安野社長は「アパレルは単価が下落しており、10年前の半分、20年前の3分の1程度になっている。安売り競争だけでは疲弊するので、高単価な家電を販売することで注文単価を上げていきたい」と意図を説明する。掃除機や電子レンジなど、設置サービスが不要な白物家電を中心に取り扱っている。
若年層向けアパレルブランド「ジーラ」は好調に推移した一方、30~40代向けアパレルブランド「ラナン」の前期売上高は微減となった。ラナンに関しては、新規顧客の取り込みがうまくいっていないという。ジーラに関しては、ネットへのシフトに成功。今年の秋冬号をもってカタログを廃止し、ネット専門ブランドへと転換する。安野社長は「紙からネットへのシフトがうまくいったのがジーラで、うまくいっていないのがラナン。ラナンの場合、商品は良いし、カタログの出来も素晴らしいので、いきなりカタログをやめることは考えていない。ネットが主でカタログが従という形に持っていきたい」と話す。
ネット販売売上高は、前期比約38%増の146億円と大きく伸びた(リュリュモールは除く)。コロナ禍が追い風となったほか、コンテンツ強化やメリハリをつけた在庫管理などが奏功したという。主力のミセス層向けでは、「暖かい」「ひんやり」といった機能性を若年層よりも求める傾向が強いことから、こうした視点から商品開発を行い、特集ページを制作することでレスポンス率が向上した。在庫管理については、「売れている商品は欠品させない」「それほどでもない商品は売り切ってしまう」というメリハリを重視。従来は、商品発注は企画本部が行っていたが、通販サイトの発注はEC事業部が主導することで成果を挙げた。
これまでは、「一番売れる商品」を中心として新規顧客を獲得してきたが、需要が一巡すると集客力は落ちてしまう。今後は「品揃えを見せる」ことで、ブランドに愛着を持って買い続けてくれる「ファン」を育成する方向に舵を切る。「ブランドらしさ」を見せるために、特集コンテンツを工夫したり、ブランドごとにメールマガジンを発行したりするなど、それぞれのブランドにおいて品揃えやコンテンツを磨いていくことで、集客力を強化する。
他社ブランド商品も取り扱う仮想モール「リュリュモール」の流通金額は、前期比約72%増の55億円だった。目標としていていた50億円は超えたものの、安野社長は「各アパレルブランドは自社サイトに注力しはじめており、仮想モールという形態自体が厳しくなっている。集客力のないモールの場合、注文が来ても在庫がないということがありがち。早めに100億円には乗せないと採算が合わないが、なかなか難しいだろう」と厳しく評価する。
リュリュモールは、テナントであるアパレルブランドの商品をベルーナの物流センターが預かり、顧客に配送する仕組みだ。他の大手仮想モールに商品を多く預け、リュリュモールにはあまり数を置かないようなブランドの商品は、せっかく多くの注文が来ても在庫切れとなり、結果的に売り逃しとなってしまう。現在、出店するブランドは約70だが、テナントに対し「集客力」を示せていないわけだ。早期の100億円達成に向けて、テレビCMの放映など、広告予算を投下していきたい考えだ。
同社では5月、2025年3月期を最終年度とする3カ年の中期経営計画を発表した。その中で、コロナ禍収束後を見据え、安野社長が大きな期待を寄せているのが「呉服関連事業」だ。これまで呉服販売といえば、芸能人を招いての大規模な催事が中心だったが、「儲からないので大規模な催事は行わず、店舗で販売する」(安野社長)という。
「着物を着たいと思っている」若い女性にアプローチするためのエントリー商品を開発、顧客育成を図る。安野社長は「『着物は持っていない』という若い女性をいかに顧客にできるか。まずは浴衣を買ってもらい、さらには洗える着物や無地小紋など、7、8万円までの着物を買ってもらうことで、興味・関心を惹く。次の段階では本格的な着物を勧めていく」と戦略を説明する。同社の「BANKANわものや」においては、こうした販売手法がうまくいっているという。このモデルを、18年に子会社化した「さが美」でも横展開していく。
呉服業界は超縮小市場だが、安野社長は「マーケット自体はまだあるのに、撤退する事業者ばかり。まだまだ当社が成長できる余地はあるのではないか。これまでの呉服業界は、着物を何枚も持っているような70~80代女性に勧める商売をしていたが、持っていない人にどう勧めるかを軸にする。多くの若い女性は着物を持っていないだろうが、興味がある人はかなりいるはずだ」とみる。
来年5月には呉服事業のブランド名を統一する予定。ショッピングセンターに入っている同社店舗を拠点とし、若年層の女性に着物を試着してもらうことで新規顧客開拓へとつなげる。安野社長は「呉服業界はサンセット・インダストリー(衰退産業)なので、参入企業がない。逆に言えば伸ばす余地はあるわけで、面白い市場ともいえる」と腕をぶす。
同社25年3月期の連結業績は、売上高3100億円、営業利益280億円を目指している。このうち、呉服関連事業の売上高は335億1000万円、営業利益は21億2000万円を見込んでおり、大きなウエイトを占める。
ただ、さが美は前期営業赤字を計上しており、目標達成に向けては、成功モデルの「横展開」がどれだけうまくいくかがカギになりそうだ。
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