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スクロールの前期業績は、売上高が前期比2・1%増の726億3400万円、経常利益が同62・3%増の22億9600万円となった。創業80周年記念企画商品がヒットした通販事業や、ナチュラムが好調だったeコマース事業、決済代行サービスなどが伸びたソリューション事業は堅調に推移したものの、化粧品や健康食品の健粧品事業や、旅行事業は苦戦した。今期は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けることは必至だが、今後の成長戦略をどう描くのか。鶴見知久社長に聞いた。

増税やポイント還元の影響を受けた上半期

――前期を振り返って。

「事業セグメントごとにでこぼこはあるが、グループ全体としての収益は確保できた。物流関連の投資についても計画通りに進んでいる。

一方、健粧品事業や旅行事業については、ブレークイーブン以上の計画を立てていたが、赤字に終わったため、実質的には立て直しが1年遅れたということになる。ただ、子会社における、のれん減損など、在庫関連も含めて負の遺産を整理できたということで、将来に向けてポジティブに捉えている」

――昨年10月の消費税増税や、暖冬の影響は。

増税の影響はあった。月次売り上げでは、10月は前年同月比5・9%減となった。11月は少し揺り戻したものの、同3・2%増にとどまり、12月は同0・7%減だった。ただ、2014年4月の増税時ほどの影響は出ていない

暖冬については、毎年のことなので、影響があったかどうかが定かでないくらいだ。『冬は暖かくなる』ということをある程度前提に、カタログの発行計画や品揃えを考えている

――増税に関しては、特にどの事業が影響を受けたか。

「高額な商品を扱っている子会社が影響を受けた。また、当社グループは『キャッシュレス・ポイント還元事業』の対象外だったが、eコマース事業においては、事業の対象となる競合会社がポイント還元を武器に仕掛けてきた。どうしてもポイント還元を含めた価格で競り負けることが多く、eコマース事業に属する子会社については、一様に価格対応に苦慮した面がある

――生協事業を中心とした通販事業においては、グループの商品やノウハウを活用し、地域の生協(単協)ごとのニーズにマッチした商品やサービスの提供を行う「ソリューションベンダービジネス(SVB)」を推進した。

「昨年度は仕込みの段階で、OTC医薬品のほか、子会社が扱っている商材、具体的にはAXESのブランド品、ミヨシの防災用品、豆腐の盛田屋の化粧品を扱いはじめた。これは例えばブランドバッグであれば、商品を掲載したチラシをユーザーに配るというものだ。ある程度実績が出てきており、今期から本格展開する予定だったが、ブランドバッグなどは商材的に厳しい状況だ。また、旅行関連も生協向け商品をテストしていたが、新型コロナの影響でサービス系の商談については完全にストップしている」

スクロール AXES ブランド 企業戦略 新型コロナウイルスの影響 ブランドバッグ
ブランドバッグなどを扱う「AXES」(画像は「AXES」サイトから編集部がキャプチャし追加)
スクロール 豆腐の盛田屋 化粧品 新型コロナウイルスの影響
スキンケア用品などを扱う「豆腐の盛田屋」(画像は「豆腐の盛田屋」サイトから編集部がキャプチャし追加)

オリジナリティーのある商品で差別化を図る

――eコマース事業では、アウトドア商品を手掛けるナチュラムにおいて、オリジナルブランド『ハイランダー』が好調に推移したとのことだが、他の事業会社ではどんなオリジナル商品を展開していくのか。

「ハイランダー規模のオリジナルブランドはまだ展開できていないが、家具・雑貨などのスクロールR&Dにおいては、『姫系商材』を扱う通販サイト『ロマンティックプリンセス』で、布団カバーや敷物、ルームウエアなどオリジナル商品を展開している」

スクロール スクロールR&D ロマンティックプリンセス 姫系商材 ROMANTIC PRINCESS
お姫様をイメージさせるインテリアなどを扱う「Romantic Princess」(画像は「Romantic Princess」サイトから編集部がキャプチャし追加)

――ハイランダーがヒットした要因をどう分析する。

「既存メーカーが販売する商品とは違う切り口で商品開発を行うブランドなので、アイデアや価格面で受け入れられたのではないか。アウトドアは裾野が広がっており、しっかりとした商品を開発すれば、機能がきちんと認識されて”売り”につながったということだろう」

スクロール ナチュラム アウトドア用品 ハイランダー オリジナルブランド 商品開発
オリジナルアウトドアブランド「ハイランダー」の商品一覧(画像は「ナチュラム」サイトから編集部がキャプチャし追加)

――ナチュラム以外の子会社はどう推移したか。

「AXESは健闘した。スクロールR&Dもまずまずだったが、ナショナルブランド化粧品のイノベートは競合との価格競争で苦労した。ただ、新型コロナの感染拡大後は若干良くなってきている。百貨店が営業を休止しているため、ナショナルブランドの化粧品を求める人がネット販売で購入しているようだ

――ネット販売は競合も多いが、どう差別化するか。

「eコマース事業は売り上げ的にも2番目にあたるセグメントなので、今後も拡大していく。ただ、競争が激しい市場であり、特に当社でネット販売を手掛ける子会社は、仮想モールの中でも売り上げ的にトップクラスで注目されている。そのため、競合から同じような企画や商品をぶつけられることが多く、価格面でも当社の値付けをくぐってくる。ストアのブランドは確立してきたと思っているので、オリジナリティーのある商品を投入しながら差別化していきたい

コロナの影響で化粧品は厳しい

スクロール 代表取締役社長 鶴見 知久 スクロールR&D スクロール360 ナチュラム 豆腐の盛田屋 AXES
スクロール代表取締役社長の鶴見 知久氏

――化粧品、健康食品の「健粧品事業」は厳しい数字だった。

「これまで、化粧品に関しては広告費を投入してマスプロモーションを行ってきたわけだが、去年1年はそれを抑えて既存顧客に注力してきた。これに関しては計画通りに進んでいるが、一方で大々的に広告を展開していた際に大量に仕込んだ商品が在庫として滞留しており、そこが悩みのタネだった。これを期末に一掃したので、態勢は整ったのではないか」

――豆腐の盛田屋は中国人向けのインバウンド需要で売り上げを伸ばしてきたが、需要が落ち着いてきた中で新型コロナウイルス問題が発生した。また、店舗向け卸に関しても厳しい状況だ。

「インバウンドが新型コロナ以前から伸び悩んでいた中で、こういう事態となった。インバウンド需要は、この先1年か1年半は元に戻ることは無いだろうから、当面は注力することはない。しばらくはネット販売を通じ、既存顧客向け販促を強化していきたい

店舗向けに関しては、一部で再開した店舗はあるが、緊急事態宣言が出る前から、店頭でのタッチアップができなくなっていたほか、商品のテスターも撤去されており、お試しをしてから買える状態ではなかった。緊急事態宣言が出てからは売り場自体が無くなってしまったが、店舗が再開されてもすぐには需要は戻らないだろう。やはりネットでのプロモーションを強化せざるを得ない」

――今期の化粧品子会社の売上高はかなり落ちそうだ。

「そうなるだろう。特に上半期は厳しい」

――現状の新規顧客開拓策は。

「ネットでのプロモーションは行っているが、新聞やテレビを使った販促はほぼやっていない

物流はトータルサポートでクライアントに貢献

――ソリューション事業では、茨城県つくばみらい市に「スクロールロジスティクスセンター(SLC)みらい」を新設した。今後の成長戦略は。

「ここ数年は浜松市を中心とした物流センターの充足率が高く、”売れるスペース”があまり無かった。安定的な事業運営をしていたということではあるが、新センターの開業で事業を拡大する余地ができた。主に関東圏の企業を対象として営業を強化していく」

スクロール スクロール360 物流倉庫 スクロールロジスティクスセンター(SLC)みらい
新設された「スクロールロジスティクスセンター(SLC)みらい」(画像は「スクロール360」サイトから編集部がキャプチャし追加)

――コロナ禍を受けて、ネット販売へのシフトが加速するとの見方もある。スクロール360が展開するサービスの強みをどう打ち出していくか。

「当然、物流代行は強みとなるわけだが、これからはクライアントの売り上げに貢献できるようなメニューや、コスト低減・効率化ができるメニューを強化し、受注から出荷までをサポートする。ウェブを主軸としている通販企業に対し、スクロールが持っている単品系通販のノウハウを提供したり、既存客向けのリテンションマーケティングを支援したり、といったメニューも加えながら、トータルソリューションを提供していく。

コンサルティング関連のサービスも立ち上がっているし、BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)サービスも踏まえているほか、マーケティング・オートメーションツールを開発している。ネット販売と同じく競争の激しい分野なので、当社の強みをより打ち出す形の営業戦略をとっていくことになるだろう」

――新規事業として展開してきた旅行事業は新型コロナの影響が直撃している。

「いつか春が来ると信じて耐えるしかない。やはり1年か1年半は需要が元に戻ることはないだろう。消費者の行動がどう変わるかという部分は現時点では予想しにくいが、コンテンツを強化していきたい。

海外旅行は当分ニーズが無いだろうし、外国人の日本への旅行もしばらくは無いだろうから、日本人が安心して動ける範囲での観光、つまり在住地域近隣での観光から始まっていくと思われるので、そういった需要に対応したコンテンツを準備している

――旅行など体験型の”コト消費”に関する事業を強化していくとのことだったが、今後の方針は。

「当社は物販が強かったわけだが、旅行や保険などのサービスが提供できるようになれば、提案力の厚みが増す。買収したトラベックスツアーズのような会社の機能を活かしながら、既存事業とのシナジーで伸ばしていきたい」

「アフターコロナ」は消費行動の変化に合わせて対応

――今後のM&A戦略は。

「引き続き積極的に進めていく方針だ。ただ、これまでは”事業の塊”を作るための会社を傘下に入れてきたが。一通り事業セグメントが固まったので、今後は各セグメントの機能を強化するような会社をターゲットにしたい。典型的なのは、2018年にスクロール360が買収した、もしもだ。ウェブ広告代理業やドロップシッピング事業など、ソリューション周辺の多様な機能を持った会社だが、傘下に加えたことで、ソリューション事業全体が厚みを増している」

――消費動向など、今下期の見通しは。

「かなり厳しくなると予想している。緊急事態宣言が解除されたことによる『リベンジ消費』は一時的には起きる可能性はあるが、コロナ禍前には届かないだろうし、3月からの落ち込みはカバーできないと思う。特にアパレルは春夏ものの在庫処分に各社苦労しており、秋冬ものも発注遅れや発注減が起きている。供給側としても良い状態ではないので、今年いっぱいは厳しいだろう」

――今期業績予想に関して、コロナ禍をどの程度盛り込んでいるのか。

「業績予想は緊急事態宣言や世界情勢を踏まえたものだ。当社はアジアに生産拠点を構えており、供給に関する不安もあり、営業減益を見込んでいる。多くの会社が今期の業績予想を出さない中であえて出したわけだが、何か動きがあれば、当然計画を修正する可能性はある」

「アパレルやアウトドア用品、ブランド品、化粧品、旅行など厳しいジャンルもあるが、雑貨やインナーウエア、インテリア、家具などは比較的好調だ。ただ、通販ということで販売機会が減少しているわけではないので、店舗ほどの影響はない

――2021年3月期~23年3月期の3カ年計画を公表した。23年3月期の連結業績は、売上高が850億円、営業利益は26億円、経常利益は27億円、当期純利益は20億円を計画している。

「以前は大胆な事業成長の絵を描いており、21年3月期に売上高1000億円を目指していた。自然災害や消費税増税などは計画に盛り込んではいたものの、国内マーケットが予想以上に回復しなかった。もちろん、計画通りに進捗していない事業もある。

今後は年度ごとに目標を見直していくようにしたため、より直近の情勢を盛り込んだ形で将来が見通せるようになり、『アズイズ・トゥービー(現状と目指すべき姿)』が明確になったと思う。売上高1000億円を目指すという方針に変わりはないが、到達までの速度を現実的に見積もった」

スクロール 3か年計画 IR情報 バリュークリエイションブック2020
2020年5月に発表された3か年計画(画像はスクロールの資料から編集部がキャプチャし追加)

――「アフターコロナ」に向けて。

「『新しい生活様式』と言われているように、私も完全にコロナ禍以前に戻るとは思っていない。ただ、どう変わるかというのは現時点では予測し得ないので、当社としては消費行動の変化をウオッチしながら対応していくということにつきる」

「例えば、テレワークは今後も定着すると思う。なぜなら、メリットがあるということが皆分かったから。

一方、現状はネット販売が好調というが、利便性自体は以前から皆が感じており、コロナ禍において『ネット販売ってこんなに便利なんだ』とは、世間で騒がれているほどはならないと思う。もちろん、EC化率は高まっていくだろうが、消費行動が完全にネット販売に傾くということはないのでは。こうした点も踏まえて、消費者の行動様式の変化が見えてきたときにしっかりと対応していきたい」

――4月1日付で、鶴見氏が代表取締役社長となり、堀田守会長との代表取締役2人体制となった。

「全体的な方向性に変化はない。堀田会長はグループ全般に関わる戦略や意思決定を行い、私は既存事業の業務執行とそれに関わる意思決定を行う」

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