通販新聞 2021/7/29 8:30

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安野清社長(=写真)に今後の戦略などを聞いた。

コロナ禍で通販で買うことへのハードルが大きく下がった

――コロナ禍に見舞われた2021年3月期を振り返って。

「期初は新型コロナウイルスの影響が出始めた時期で、全く見通しが立たなかった。ところが、政府から『接触を避けるために通販を活用してほしい』というメッセージが発せられた頃から風が吹き始めた。通販で買うことへのハードルが大きく下がったように思う。実力で売れているのか、追い風のおかげなのかが良く分からなかったが、実力で伸びた部分も大きいと思っている。通販などでプラスが100、コロナ禍で休業を余儀なくされた店舗関連やホテルなどでマイナスが50というところだろう。柱をたくさん作る『ポートフォリオ経営』が機能したのではないか。通期では過去最高益を更新したので、良い1年だったといえる」

ベルーナが好調の理由&成長戦略 ベルーナの2021年3月期業績
ベルーナの2021年3月期業績(画像はベルーナのIR資料から編集部がキャプチャし追加)

――今期からセグメントを再編した。

「『化粧品健康食品事業』『グルメ事業』『ナース関連事業』のように、競合他社と比較しやすいような区分にした。『カタログ通販だけではない』ということを世の中に知らしめるためだが、浸透させるのがこれからの課題だ」

ベルーナ安野社長が語る「2021年3月期の振り返り」「今後の成長戦略」
セグメントの再編について

――総合通販事業では、インナーが伸びている。強みは。

「月並みだが、PDCAサイクルをきちんと回せていることだ。また、顧客に支持されるベンダー開拓をしていることも大きい。時代の流れについていくための商品開発ができている

ベルーナ安野社長が語る「2021年3月期の振り返り」「今後の成長戦略」 ベルーナの安野清社長
ベルーナの安野清社長

――30~40代向けアパレルブランド「ラナン」はやや苦戦した。

「ラナンはミセス層向け『ベルーナ』の既存顧客リストを活用してきたが、新規顧客リストの供給がうまくいっていない。『ジーラ』を卒業した顧客を取り込むシナリオだったが、目論見どおりには進んでいない」

――前期のネット販売売上高は。

「『ベルーナネット』の受注金額は146億円だ。『ラナン』は含まれるが、『ジーラ』の売上高は『リュリュモール』の流通額に計上している」

――「リュリュモール」の成長戦略について。

各ブランドが自社サイトに注力していることもあり、仮想モールは受難の時代だと思うブランドはコロナ禍でネットを強化しないと立ち行かないことを身にしみて感じているのではないか。集客力がないと在庫確保が難しいので、早期に流通額100億円を達成しなければいけないと思っている。通販会社は媒体費のコントロールが生命線。使える媒体費に限りがある中で、どれだけ流通額が拡大できるか。ハンドルさばきが腕の見せどころだろう」

ベルーナが好調の理由&成長戦略 総合通販事業のEC受注金額と「リュリュモール」の流通総額
総合通販事業のEC受注金額と「リュリュモール」の流通総額(画像はベルーナのIR資料から編集部がキャプチャし追加)

――5月21日の決算説明会では、「前期は新規顧客がかなり増えているので、今期は顧客リストを活用することで引き続き伸びるのではないか」と予測していた。

「前期は顧客リストが増えたので、収益性が良くなるのではないかと思っていたが、期待していたほどではないようだ」

ベルーナ安野社長が語る「2021年3月期の振り返り」「今後の成長戦略」 新規獲得効率について
新規獲得効率について

SNSも積極活用する今期の戦略

――ネット販売関連の今期戦略は。

「前期はコロナ禍が追い風となったほか、コンテンツ強化やメリハリをつけた在庫管理などが奏功した。ただ、昨年ほどの勢いはなくなってきているので、同じ戦略の延長線上では厳しいと思う。これまでは売れる商品を集中的に売っていくやり方だったが、それだと同じ商品がネット広告に出続けることになる。マス媒体での宣伝と同様に、これまでは一番売れる商品を新規顧客獲得に活用してきたが、需要が一巡すると集客力は落ちてしまう」

「今後は“面”で戦う形にシフトしていく。ブランド軸で、しっかりと品揃えを見せる形で販売していく。実店舗中心のアパレルブランドがネットで展開している戦略を取り入れていきたいブランドごとにテイストや世界観を表現し、同じブランドで買い続けてもらえるようにする。ブランドに愛着を抱いて買い続けてくれるファンをいかに作るかが課題だ」

――SNSも活用していく。

「他社の事例を研究しているところだが、ブランディングができていないと機能させるのが難しいと考えている。単品を大量に売っていくやり方ではSNSはうまくいかない。インスタグラムなどで世界観を表現したとしても、通販サイトに来たら安売りしているだけで、イメージとかけ離れているというのではつじつまが合わないブランドごとに魅力的なサイトを構築することで、はじめてSNSとリンクしてくるのではないか。サイトにきちんと受け口を用意し、SNSとつなげていきたい」

――化粧品のオージオは好調だった。今後の海外戦略は。

「中国向けは越境ECで展開している。マーケットが大きいので、中国市場の開拓が勝負どころだ。シンガポール、香港にも力を入れていきたい。また、売り上げが一番大きい台湾については、新商品を投入していく」

――中国以外もネット販売が中心なのか。

「半分がドラッグストアなどの店舗で半分がネット販売だ。店舗で知名度を上げていく必要があるので、ネットだけでは難しい」

ベルーナ安野社長が語る「2021年3月期の振り返り」「今後の成長戦略」 オージオについて
オージオについて

――化粧品事業全体では、ネット広告規制の影響を受け、今期売上高は横ばいとなる見通しだ。

「アフィリエイト広告規制の影響が大きい。今後はアフィリエイトに頼って販売するのは難しくなるのではないか。テレビCMの放映でブランドイメージを向上させていきたい」

――健康食品のリフレは横ばいが続いている。

「大手の参入が続き、競争が激しくなっているのが伸び悩みの要因だ。やはり商品力の強化に尽きるだろう。オージオとリフレの合計で売上高200億円を早期に達成したい」

――ナース関連事業では介護士向けの通販に本格参入する。

「病院に併設された介護施設に商品を提供していく」

――ナース向け通販海外展開も検討しているとのことだが。

「子会社化した、シンガポールのジョブスタジオと連携して、シンガポールやマレーシアでの物販をしたいと考えていたが、コロナ禍で進んでいない」

ベルーナ安野社長が語る「2021年3月期の振り返り」「今後の成長戦略」 ナース関連事業について
ナース関連事業について

――呉服関連事業を強化する。

若い女性は着物を持っていないだろうが、興味がある人はかなりいるはずだマーケットはあるのに参入はない、サンセット・インダストリーなので逆に面白いと思っている。高年齢層だけではなく、若年層にも着物を売っていきたい。将来的には呉服関連事業で売上高1000億円、市場の半分を占めたい」

ベルーナ安野社長が語る「2021年3月期の振り返り」「今後の成長戦略」 呉服関連事業
呉服関連事業
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