2026年の小売業はどう変わる? GoogleのピチャイCEOが語る「エージェンティック・リテール」の新時代

新たなオープンスタンダード「ユニバーサル・コマース・プロトコル(UCP)」や、「Gemini Enterprise for Customer Experience(CX)」、配送サービス「Wing」の拡大を通じて、小売事業者がエンドツーエンドでショッピング体験を構築できるよう支援していく。

鳥栖 剛[執筆]

8:30

Googleとその親会社Alphabetのサンダー・ピチャイCEOは1月11日、全米小売業協会(NRF)で講演し、小売業界におけるAIの役割と今後の方向性について語った。同日、Googleの公式サイトに講演要旨を「A MESSAGE FROM OUR CEO」として掲載した。

2026年の小売業はどう変わる? GoogleのピチャイCEOが語る「エージェンティック・リテール」の新時代
NRFで講演するサンダー・ピチャイCEO(画像はGoogleの公式サイトからキャプチャ)

Googleは、AIエージェントが消費者に代わって買い物関連のタスクを実行する新標準プロトコル「ユニバーサル・コマース・プロトコル(UCP)」や、商品検索から購入後のサポートまでをAIエージェントが支援する基盤「Gemini Enterprise for Customer Experience(CX)」、配送サービス「Wing」の拡大を通じて、小売事業者がエンドツーエンドでショッピング体験を構築できるよう支援していく考えを示した。

小売事業者によるGoogle APIの利用量は11倍に

ピチャイCEOは、現在の小売業界を「非常にダイナミックな瞬間」にあると表現。その背景として、AIを前提とした新しいプラットフォームへの移行をあげた。Googleは20年以上にわたって小売事業者と技術変化に対応してきた。近年はAIを中核としたフルスタックの技術を強みに、新たなパートナーシップを広げているという。

実例として、小売事業者によるGoogle APIの利用量は、前年の11倍以上に増加。2024年12月の8.3兆トークンから、2025年12月には90兆トークンを超えたという。ピチャイCEOは「共に成功してこそ意味がある」と述べ、顧客がGoogleの製品を通じてシームレスに買い物でき、単発の取引にとどまらない長期的な関係を築ける未来をめざすと語った。

2026年の小売業はどう変わる? GoogleのピチャイCEOが語る「エージェンティック・リテール」の新時代
小売事業者によるGoogle APIの利用量は11倍に(画像はGoogleの公式サイトからキャプチャ)

「発見」から「意思決定」までを支えるAI

AIは、商品探しや比較、購入判断、配送、アフターサポートまで顧客体験のさまざまなステップを支援。ピチャイCEOは、特に「発見」と「意思決定」の重要性を強調した。

Google検索は、オンラインショッピングの出発点として重要な役割を担ってきた。2021年以降は「ショッピング・グラフ」により、在庫や価格、レビューなど500億件以上の商品情報をリアルタイムで提供。そのうち20億件以上は1時間ごとに更新されている。

現在は、検索の「AIモード」によって、キーワード検索から対話型のショッピング体験へと移行が進んでいる。また、AIがユーザーの意図を理解し、条件に合う商品を絞り込む役割も担う。「ショッピング・グラフ」はGeminiアプリにも統合され、チャット形式でも適切な商品提案が可能になっている。

エージェンティック・コマースを支える「UCP」

次のステップとしてGoogleが導入するのが、「ユニバーサル・コマース・プロトコル(UCP)」だ。AIエージェント主導のコマースを想定したオープンプロトコルで、小売事業者と顧客の双方に価値を提供することを目的としている。

「UCP」は商品発見から意思決定、その後の関係構築までを一貫して支えるように設計。Shopify、Etsy、Wayfair、Target、Walmartなどのプラットフォーマーや小売企業と共同で開発し、20社以上が支持している。既存の業界プロトコルとも互換性があり、幅広い業種で利用できる。

導入の第1段階として、Googleは「ネイティブ・チェックアウト(直接決済)」を提供する。Google検索のAIモードやGemini上に「購入」ボタンを表示し、その場で決済まで完了できる仕組みだ。

たとえばスーツケースを探すユーザーに対し、小売事業者はUCPを通じて新規会員向け価格やロイヤリティ登録を提案できる。既存顧客には、購入履歴に基づいた特別オファーや関連商品の提示も可能となる。ユーザーはGoogle Payを使い、画面を離れることなく購入を完了できるようにする。

2026年の小売業はどう変わる? GoogleのピチャイCEOが語る「エージェンティック・リテール」の新時代
「ネイティブ・チェックアウト(直接決済)」のイメージ(画像はGoogleの公式サイトからキャプチャ)

この仕組みでも、小売事業者は「merchant of record(登録販売者)」として顧客との直接的な関係を維持できる点が重視されている。

「Gemini Enterprise for CX」による業務変革

AIエージェントは、顧客体験だけでなく、企業の業務そのものも変えつつある。企業データや顧客データと連携し、ECと実店舗を横断した一貫した体験を提供できる。

Googleは「Gemini Enterprise for CX」を通じて、こうした取り組みを支援する。検索、コマース、カスタマーサービスといった分断されがちな接点を、エージェント型プラットフォームで統合する狙いだ。

ショッピングアシスタントやサポートボット、エージェント検索、マーチャンダイジング支援などに対応し、The Home DepotやMcDonald’sなどがすでに活用を始めている。

Krogerなどとは、自社アプリにAIモードを組み込んだ新しいショッピングエージェントの開発も進行中だ。知識豊富な販売員のように、詳細な質問への回答やパーソナライズされた提案を行うことを想定している。

なお、「Gemini Enterprise for CX」はオープンスタンダードに基づいて構築され、「UCP」とも統合されている。

配送課題に挑む「Wing」の拡大

配送は顧客体験の要である一方、小売事業者にとってはコストと運用負担の大きい領域。Alphabetはその課題への対応策として、配送サービス「Wing」を展開している。「Wing」は小売向けの配送効率化に特化したサービスで、Walmartとの連携を推進。2025年には配送件数を2倍に拡大した。

2026年からは、ヒューストンを皮切りに、オーランド、タンパ、シャーロットなど複数都市へ展開予定。「Wing」は、商品発見から購入、配送までをつなぐ、AI時代のショッピング体験を支える重要な要素と位置付けている。


ピチャイCEOは講演の締めくくりとして、小売事業者がエンドツーエンドのショッピング体験を再構築できるよう、引き続き支援していくと述べた。「UCP」、「Gemini Enterprise for CX」、「Wing」は、その中核となる取り組みだとしている。

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