家電量販店のヤマダホールディングスはこのほど、AIの設計・開発・利用に関する基本姿勢を定めた「AI倫理方針」を制定した。AI活用を本格化するなかで、人間中心、安全性、公平性、プライバシー保護、知的財産権の尊重、透明性、教育、ガバナンスといった原則を明文化。現在、顧客の生活全体を支援する「くらしまるごとAIエージェント」の開発も進めており、AI活用の拡大に合わせて運用方針の整備を進める。

AI活用の基本原則を明文化
ヤマダHDによると、「AI倫理方針」はAI技術を積極的に活用しながらも、社会から信頼される企業として責任あるAI利用を推進するための指針として策定した。
基本理念では、経営理念である「創造と挑戦」のもと、新たな価値の創出と社会課題の解決に取り組む姿勢を示している。
方針の中核となるのは、「人間が主役となるAI活用」だ。AIを人間の多様な幸せの実現を支えるツールと位置付け、AIによる提案や判断を無条件に受け入れるのではなく、人間が主体的に意思決定し、最終的な責任を負うとしている。
また、安全性の確保では、誤情報の生成や予期しない挙動といったAI特有のリスクを認識し、役職員や顧客の生命・身体・財産・精神に悪影響を及ぼさないよう継続的な検証を実施する方針を示した。
公平性の観点では、学習データやアルゴリズムに含まれる偏りに配慮し、人種、国籍、性別、年齢、政治的信条、宗教などによる不当な差別や排除を助長しないよう努めるとしている。
このほか、個人情報保護方針に基づくプライバシー保護とセキュリティ確保、第三者の著作権や特許権などを尊重する知的財産権への配慮、AI利用に関する透明性と説明責任の確保、役職員への教育・リテラシー向上、AIガバナンスの構築と継続的な改善なども盛り込んだ。
「くらしまるごとAIエージェント」の開発を推進
こうした方針整備と並行して、ヤマダHDはAIを活用した新たな顧客接点の構築を進めている。2月にANAホールディングス発のスタートアップであるavatarinと共同で、「くらしまるごとAIエージェント」の開発を開始したと発表している。
これはヤマダHDが掲げる「くらしまるごと」戦略を発展させる取り組みで、接客・販売だけでなく、購入前の情報収集から購入後のサポート、さらには日常生活までを一貫して支援するAIエージェントの実現をめざしている。
開発には、avatarinが提供する接客・販売プラットフォーム「a-commerce」を活用。AIエージェントには、テキストと音声の両方を理解・処理できるマルチモーダルAIを採用。言葉だけでなく会話の文脈や状況も踏まえて対応することで、従来のチャットボットでは難しかった複雑な問い合わせへの対応を可能にするという。
「チャット」ではなく「接客」に近い体験をめざす
ヤマダHDによると、このAIエージェントの特長は、ヤマダデンキの販売スタッフの接客ノウハウを学習させている点にある。
単に質問へ回答するだけでなく、顧客の要望を把握しながら先回りして提案を行い、最適な商品選びへ導くことで、実店舗での接客に近い購買体験の提供をめざす。
対応チャネルは音声とテキストの両方に対応し、24時間利用可能。多言語対応も予定している。商品選びの相談から購入判断までを支援する想定で、パソコンやスマートフォン、タブレットなどから利用できる。
なお、3月には「ヤマダウェブコム」内の専用ページで体験プロモーションを実施していた。

