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スマホの普及によりシーンを選ばず買い物や情報収集するという消費者行動の変化は有店舗企業の意識を大きく変えた。売り場のチャネルごとに境界線を引いて、リアルだけが独立したような販売戦略を練る企業も減り、「ネットはリアルの顧客を奪う」という認識からも徐々に脱却しつつある。今や双方を融合させることで企業価値を高め、具体的な販売成果として数字に反映させている企業も現れた。今回は大手の有店舗企業を中心に先行するオムニチャネルの事例を見てみる。

青山商事、ネットで見せて、店で試着

紳士服販売などを手がける青山商事ではいち早くからネットとリアルの融合に目をつけていた。同社は2006年に通販サイトの前身である実店舗での「試着予約」を受け付ける専用サイトを開設。顧客が希望する商品を選択して最寄りの実店舗に当該商品を取り寄せると店員の案内による試着サービスを受けられることができる。その場で購入するケースもあれば、帰宅後に熟考して改めて通販サイトで購入するなど様々な形で利用が広がっているという。

全国に700店舗以上を展開する同社の場合、素材の手配の都合などから商品によっては地方の店舗まで十分に行きわたらないものもある。そのため通販サイトで漏れなく商品を掲載して試着予約サービスと組み合わせることで、地域ごとに品ぞろえの格差が生じないよう配慮しているのだ。「実店舗の品ぞろえをネットで補うという考え方。とにかくECで一番大事になるのは実店舗との関係性に尽きると思う」(EC事業部部長代理の石矢浩氏)とする。

また、もう一つ実店舗と連携しているのが通販サイトの「マイサイズ」機能だ。同機能は会員登録により利用できるもので、専用ページから「体型」「号数」「ウエスト」「首周り」「股下」などの各寸法を入力すると、適合するサイズのスーツ商品が画面上に表示される仕組み。実店舗で発行された顧客番号を入力することでも、過去に店頭で受けた採寸結果が自動で画面上に反映されるため、自分でサイズが計れない顧客でも利用することができる。

以前はドレスシャツやスラックスがネットでの売れ筋だったが、同機能を導入してからは比較的高額商品の多いスーツ商品の販売比率が上昇し、今ではネットの一番人気アイテムとなっている。「実店舗とネットは同じ顧客データベースで管理しているので実店舗での購買行動もある程度分析できる。その仕組みをここでも活用した。試着予約と合わせて自分のサイズが理解できるサービスができたことでネットでのスーツの購入ハードルが緩和されたのでは」(同)と分析する。

アパレル小売店は試着予約サービスなどをオムニチャネルの一環で提供している

店頭の意識改革に腐心

前述の各種ツールもさることながら、O2Oを実践する上で最も欠かせないと言えるのがネット販売に対する現場スタッフの協力姿勢だ。そのため現場経験もある石矢氏はネット販売の担当になるに当たり、まず実店舗側の意識改革に取り組んでいったという。「(実店舗の)“ショールミング”という言葉もあるが、昔はネットの売り上げを伸ばすことに対して実店舗側が素直に喜べない部分があったかもしれない」(石矢氏)と説明。そこで担当就任後は全国各地域を回り、時には社内放送も活用しながらネット販売の意義を現場に説いていった

その時に非常に有効な説得材料となったのが顧客の購買データだ。同社で調べたところ実店舗と通販サイトの併用者は実店舗だけの利用者と比べて1年間の購入金額が2・08倍高く、購入回数でも1・71倍高いことが判明。そういったデータを元に通販サイトの利用者がいかに実店舗や会社全体にとって顧客価値が高いかを現場に訴えていき、O2O施策への理解を深めていったのだ。「おかげでかなりその意識が浸透し、やりやすい環境ができた。今では実店舗でネットに誘導するキャンペーンなども行っている」(同)としている。

パルコショップ、ブログにEC機能

ファッションビルを運営するパルコは、自社では商品、在庫を持たないデベロッパーとして、出店するすべてのテナントにオムニチャネルのプラットフォームを提供することで、他の商業施設との差別化を図る。

一環として、リアル店舗との連動性が低かった既存の通販モール「パルコ・シティ」を1月19日に閉鎖。今後は、テナントショップのブログで紹介した商品をウェブ上で取り置き予約したり、そのまま通販購入できる「カエルパルコ」を軸に、オムニチャネル時代のプラットフォーム戦略を推進する。

同サービスは、スタートトゥデイ子会社のブラケットが提供する簡単通販サイト開設サービス「ストアーズ・ドット・ジェーピー」と連携して昨年5月にテスト運用を開始。11月には本格展開しており、現在はパルコ8館(札幌、池袋、渋谷、吉祥寺、静岡、名古屋、広島、福岡)に入居する約100ショップが活用している。

ブログ機能がメーンのため、ショップスタッフによる商品着用写真と、接客トークを織り交ぜた親近感のある文章で消費者の興味を喚起し、購入へのストーリーを演出する流れは普段の店頭接客のウェブ版で、販売スタッフによるキュレーションECそのもの。

「カエルパルコ」では店頭在庫を販売し、売り上げも店舗に計上されるほか、ウェブ接客を通じた来店も期待できるという。

店頭売り上げへの貢献度はショップによって異なるが、「カエルパルコ」経由の売り上げシェアが10%を超えるショップも出てきており、店舗売り上げの底上げが販売スタッフのモチベーション向上につながっているという。

ショップによっては、店頭では陳列スペースの関係で売りづらいカラーやイレギュラーサイズの商品を「カエルパルコ」で提案したり、売れ筋アイテムの在庫を多めに積んで同サイトでも販売するなど、活用方法はさまざまだが、こうした「カエルパルコ」の成功事例をテナントショップが集まる講習会で共有しているようだ。

パルコでは、アパレルが事業として手がけるECではなく、店頭販売員が備えている知識や接客技術、発信力を最大限に活用したショップブログをベースにマインドシェア(ブランドの想起率)を高め、店舗の力を引き出すオムニチャネルプラットフォームとしてテナントを支えていく考えという。

カエルパルコのサイトイメージ
カエルパルコのサイトイメージ

メガネスーパー、通販サイトと店舗網を連携

メガネスーパーは自社通販サイトと全国300以上の実店舗とを連携させた取り組みを進めている。自社通販サイトは昨年12月に月商で過去最高を記録し、今年1月にはその記録を塗り替えるなど好調に推移。拡大する通販サイトを軸に店舗網の活用を強化している。

例えば店舗が持つ顧客の度数情報を通販サイト購入時にも反映できるようにしたほか、昨年4月にはサイトで眼鏡フレームを購入し店頭でレンズを作ることにも対応した。

10月には通販サイト内で店頭在庫を表示する機能を設けた。サイトで商品を閲覧してユーザーを店舗に送客することができるだけでなく、店頭の接客時に在庫がなければ他店の在庫を調べて案内することも可能となる。

店頭在庫表示ではユーザーが在庫を確認する際には、自動的にクーポンを発行する仕組みも導入。同クーポンを店頭で見せると割引価格で眼鏡が購入できる。同社EC・WEBグループジェネラルマネジャーの川添隆氏によると、実際に店頭でクーポンを利用して購入しているのは新規顧客だという。気に入った眼鏡の在庫表示を閲覧するという購買意欲の高いユーザーに対して割引クーポンを配布し購入への後押しをするというわけだ。

今後はネットで購入した商品の店頭受け取りも始める。早ければ4月から全店で本格導入する計画で、全国の店舗網を活用した受取サービスにより、顧客の利便性を高めていく方針だ。

メガネスーパーのECサイトイメージ
メガネスーパーのECサイト
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