瀧川 正実 10:00

EC支援のマージェリックが新規事業として立ち上げた、「野球普及」を通じてナイジェリアの「産業創出」「雇用創出」をめざすプロジェクト「MERGERICK NIGERIA」。「アフリカから世界に野球グローブを!」というミッションを掲げ、「Japanese quality」「Made in Nigeria」というコンセプトのグローブブランドの開発・製造を進めている。このプロジェクトを主導するのはマージェリックの嶋社長。広島カープでは「赤ゴジラ」の愛称で活躍し、その後は西武ライオンズ一軍打撃コーチを務めた嶋重宣氏を兄に持つ。そんな嶋社長が主導するマージェリックの新たな挑戦を追った。

マージェリックの嶋社長
ナイジェリアの子どもたちと触れ合う嶋社長(左上から2人目)。ナイジェリアたちとのふれあいを重ね、「この地に、新規産業・雇用創出、野球で生活ができる環境を作り上げたい」という思いを実現するため、日々奔走している

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多くのEC事業者を支援してきたマージェリックが、ナイジェリアの「野球普及」、それを通じた「産業創出」「雇用創出」をめざすプロジェクト「MERGERICK NIGERIA」を立ち上げた
瀧川 正実2023/12/13 9:3015440

「野球で楽しい時間を過ごしてほしい!」をテーマにプロジェクトを推進

野球をするために必要不可欠な道具であるバット、ボール、グローブ。アフリカの多くの国では「お金が足りない」といった経済的な理由で、野球を諦める子どもたちが少なくない。

マージェリックが拠点を置くナイジェリアの人口は約2億1800万人。メジャースポーツはサッカー、バスケットボールで、野球を楽しむ人は数百人程度という。祖業であるECビジネスとは大きく異なるビジネスで、かつ野球に親しむ人も少ないという下地が“ゼロ”といった状況下でプロジェクトを進めている。

「野球で楽しい時間を過ごしてほしい!」をテーマに、「Japanese quality」「Made in Nigeria」というコンセプトのグローブブランドを立ち上げるため準備を進めてきた。グローブ技術習得のためのスタッフ採用や研修、プロジェクトを推進するための現地駐在員の採用、製品製造のための機器および原材料調達など、すでに「人」「物」「時間」へ大きな資金を投じている。

EC支援のマージェリックが新規事業として立ち上げた、「野球普及」を通じてナイジェリアの「産業創出」「雇用創出」をめざすプロジェクト「MERGERICK NIGERIA」
ナイジェリア現地にグローブ製造のための工房を作った

日本では数万円の価格帯が当たり前の野球用グローブ。しかし、平均月収が1万2000円~2万円のアフリカ諸国において購入できる国民はごく少数。ただ、多くの国民が手に入られる価格帯にするには価格を抑えるしかない。「どんなに原価を抑えて製造しても、提供価格は2万円を超えてしまう」(マージェリック)。この問題をどう解決したのか?

EC支援のマージェリックが新規事業として立ち上げた、「野球普及」を通じてナイジェリアの「産業創出」「雇用創出」をめざすプロジェクト「MERGERICK NIGERIA」
マージェリックでは現在、ナイジェリアでの野球普及に向けて、READYFOR」を活用した賛同者を募っている(画像をクリックすると「 READYFOR」のサイトにジャンプします)

ナイジェリア現地で原材料調達、加工、製造を実現。そして野球グローブが完成

プロジェクトスタート当初、「日本の伝統縫製技術×傷などがある規格外の革×ナイジェリア製造」をコンセプトに、グローブ製造の準備を進めていた。しかし、ナイジェリア国民が手軽に購入できる販売価格まで、牛革の仕入れ価格などの原価を下げることが難しいとうい問題に直面。野球グローブの素材である牛革は現地で調達することに。そして、アフリカ牛革を探すために多くの州に足を運んだ。

そこで出会ったのが、 Globus Enterprises Nig Ltdという現地企業。質の高い野球グローブのための牛革加工というマージェリックの要求を快く受け入れ、現地での牛革加工が始まった。「日本の牛と違い、人間も栄養が足りないように、牛も栄養が足りません。
痩せ細っており、完璧な理想の牛革とは言えないが、何度も加工を繰り返し、妥協ではなく、磨き上げた完成形」(マージェリック)の野球グローブ用牛革が完成した。

そして、野球グローブを製造するためのミシンや牛革購入の資金を集めるクラウドファンディングを実施。その支援を通じ、グローブ製造の工房が完成した。現在、その工房では5人ものスタッフが働く。

EC支援のマージェリックが新規事業として立ち上げた、「野球普及」を通じてナイジェリアの「産業創出」「雇用創出」をめざすプロジェクト「MERGERICK NIGERIA」
ナイジェリアで調達、加工した牛革を裁断する様子

この製造現場で責任者として現地に駐在しているアミールさん。過去に日本の独立リーグである北海道ベースボールリーグ(HBL)の「HBL富良野ブルーリッジ」でプレーした経験を持つ。野球を始めた9歳の時、周囲から「野球なんてお腹が減るだけ!やめなさい」と言われた。アミールさんの出身は世界の貧困国に数えられるブルキナファソ。幼少期から就労するのは当たり前で、1日1食を食べるのがやっとの環境だったという。

アミールさんのメッセージ

野球をプレーすること自体が否定されてしまう環境下、アミールさんは歯を食いしばり野球を続けた。ブルキナファソ代表キャプテンとして2019年春の「東京五輪 アフリカ予選」で過去最高順位のベスト4進出。現在は、グローブ製造に従事する傍ら、アフリカ野球振興を通じて、新品の野球グローブをアフリカ全土へ流通させるための取り組みも行っているという。

このような経緯、環境、人物らが携わり、「Japanese quality」「Made in Nigeria」というコンセプトのグローブが完成。日本で初披露する機会を得た。埼玉西武ライオンズ主催のファンイベント「LIONS THANKS FESTA 2024」(11月23日)にブース出展できることが決まったのだ。

マージェリックは製品をただ披露するのではなく、ナイジェリア現地でグローブ製造に携わるアミールさんともう1人のスタッフを日本に招き、「野球グローブの製造/提供への思い」「苦労話」なども共有し、作り手としての思いを直接、日本の“野球ファン”に届けたいという。ブースにおいて、直接触り、使うことができる体験会を実施するという。

EC支援のマージェリックが新規事業として立ち上げた、「野球普及」を通じてナイジェリアの「産業創出」「雇用創出」をめざすプロジェクト「MERGERICK NIGERIA」
写真中央のTシャツを着ている男性がアミールさん。写真左がもう1人の責任者であるマナトさん

「MERGERICK NIGERIA」のプロジェクトでは、工房の立ち上げなどグローブ製造に関わる費用の一部をクラウドファンディングで募った。その第1弾に続き、2弾のクラウドファンディングをスタート。アミールさんともう1人のスタッフが日本に渡航するための費用、宿泊費(約130万円)の一部を、クラウドファンディングで募っている。

EC支援のマージェリックが新規事業として立ち上げた、「野球普及」を通じてナイジェリアの「産業創出」「雇用創出」をめざすプロジェクト「MERGERICK NIGERIA」
READYFOR」を活用し賛同者を募っている(画像をクリックすると「 READYFOR」のサイトにジャンプします)
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