通販新聞[転載元] 3/26 7:00

本紙(※編注:通販新聞)が2月~3月にかけて実施した「主要通販各社の新卒採用調査」によると、2025年春に入社予定の新入社員の採用に関して、ほとんどの企業が前年度に引き続き学生側が有利となる「売り手」市場を感じていたことがわかった。それに伴い、従来型の「待ち」の姿勢ではなく、企業側が積極的に学生側に働きかけていくスカウト型の採用手法が広がっている傾向も見られた。主要通販実施企業各社の新卒採用活動を見てみる。

スカウト型の獲得が拡大

主要20社では増加8社、減少7社

本紙が主要な通販実施企業約20社を対象に調査を実施し、有効回答を得られた各社の今春の新卒採用の状況は表の通りとなった。前年との採用人数の比較について増減数を回答した企業の内、「増加」したのが8社、「減少」したのが7社となった。また、「前年と同数」とした企業は1社となっている。

通販実施企業20社の採用人数状況
通販実施企業20社の採用人数状況

増加数最多は前年比61人増のファンケル

採用人数の前年比を見てみると、2~3人前後で増減した企業が中心となっており、最も増加幅が大きかったのはファンケルで前年比61人増。「エリア限定販売職の採用が増えたため」と回答。

次いで、タンスのゲンが同12人増で、「ナビサイトだけでなく、スカウトサービスの活用等、採用予算を上げ、母集団形成に注力しつつ、学生に刺さる内容を全面に打ち出していくなどの改善策を実行」したことを理由にあげた。また、同11人増のライズクリエイションは「事業拡大による採用人数の増加。新卒採用を今年より本格的に始めたため」などとしている。

減少幅最大はZOZOの前年比17人減

一方で、最も減少幅の大きかったのがZOZOで、同17人減。次いで、アスクルとゴルフダイジェスト・オンラインが同8人減となっている。

女性採用比率が高い傾向

また、男女比率に関しては回答企業13社中、11社が男性よりも女性の入社人数が多くなり、男性の方が多かったのは2社となった。

2026年度採用計画は前年並みの見通し

そして、次年度の2026年度採用計画については、回答企業15社のうちほとんどで前年度並みを予定。

その内、前年度比5人増を予定しているアスクルは「2025卒は21名と少なかったため」と回答。前年度の2倍近い30人を予定しているライズクリエイションは「事業拡大、会社目標の上昇」とした。

そのほか、ジュピターショップチャンネルは「当年度事業企画に合わせた人員計画のため」、タンスのゲンは「事業拡大に伴う増員」としている。

さまざまなチャネルで学生とのタッチポイントを創出

採用告知に当たって活用した手段(複数回答)としては、最も多かったのが合同説明会などのイベントをはじめ、自社サイト告知スカウト型(ダイレクト)の採用、「マイナビ」。

次いで、SNSインターン、人材紹介、大学訪問などとなっている。少数回答としてはファッション特化型サイト、採用動画、エンジニア1オン1イベント、オフィスツアーなどがあった。

おおむねどの企業も共通して、4~5種類以上の告知チャネルを活用。引き続き、従来からある定番のナビサイトを利用しながらも、スカウト型や人材紹介など、企業側が求める人材にピンポイントで自らアプローチできる手法が徐々に人気となっている。

インターンシップ、マイナビサイト、自社イベントなどで母集団形成

また、特に効果が高かった手法やその流れについて、主な企業の回答は、ファンケルが「インターンシップが選考に直結することが学生にも認識されているため」、ベルーナが「マイナビサイトでの母集団形成は、マス向け母集団形成のツールとして活用。学校訪問は、特に高卒採用にて強化。学校との関係性構築・学内イベントの紹介等」、DINOS CORPORATIONが「スカウト型採用(ダイレクトリクルーティング)は、ターゲット人材となる学生プロフィールを閲覧し適性を評価した上でスカウトメッセージを送付。承諾学生との個別コンタクトを通じて自社イベント(オープンカンパニー、説明会)および選考へ誘導した。ES・履歴書提出を待たず、初回接触段階で学生の適性やマッチ度をある程度判断できることで、有効母集団形成が可能になった」、日本生活協同組合連合会は「マイナビへの掲載は自組織と親和性の高い学生が多く、エントリー・選考参加・内定につながる人数が多い。内製イベントは、内製イベント参加者が選考参加につながることが多い」と回答。

大学と連携した応募者獲得方法も

また、アスクルは「上位校の含有率が高い媒体に変更し、自社インターンシップやオープンカンパニーに誘致。そこからのつなぎ止め施策として自社座談会イベントを継続的に行い、選考に移行させるパターンが有効」、パレンテが「大学訪問は、ナビ媒体では埋もれてしまい見つけてもらうことができないため、こちらから訪問することで応募者を獲得することができた」、QVCジャパンは「大学キャリアセンターと連携した説明会やオフィスツアーが特に効果的だったと思う。オフィスツアーでは生放送を行っているスタジオやライブコントロールルームに入って見学することができる。実際にそこで働く社員の様子を見て第一志望に決めたという内定者もいた。またオンライン説明会ではすべての募集部門の業務内容、求める人物像、働く魅力の3点について、企業研究で役立ててもらえるよう詳しく話している。また、エントリーされた人全員に説明会の様子をURLでも送っているのでいつでも見返すことができるようにしている」とした。

オンライン選考により面接辞退率減少+全国の学生が応募可能に

そして、コロナ禍を契機に導入が進んだオンライン採用を継続しているかについても、そのメリットと合わせて質問。

会場、時間の制限がないことが好作用

主な回答では、ZOZOが「基本的に、オンライン面接で実施。スケジュール都合での面接辞退率が減少した(学生の移動時間がなくなったため)。対面よりも学生にリラックスして参加してもらえる1日の面接回数が増やせる(合間の準備時間を削れるため)。遠方の学生の参加ハードルが下がった」、ベガコーポレーションが「インターンシップ・説明会の社内イベント・本選考の面接でオンラインを活用している」、ジュピターショップチャンネルが「1次面接、2次面接で活用地方の学生にも多く選考に参加してもらうことが出来ている」、日本生活協同組合連合会が「2次選考(グループワーク)は、遠方の方でも参加しやすい。最低限の会場でも実施ができる。4次選考(1次面接)はリアルとオンラインの選択方式。遠方の方でも参加しやすい」、ゴルフダイジェスト・オンラインは「最終面接以外のグループ面接で活用。参加ハードルを下げ、まずは選考に参加をしてもらうことができた」、スクロールは「オンラインにて会社説明会、1次面接を実施。結果、より多くの学生と接点を持つことができた」、タンスのゲンは「1次選考・2次選考で活用し、日本全国からの学生に応募してもらえた」、イルミルドは「1次面接で実施。離れた地域の学生との日程調整を行った。(学生が東京在住で、弊社が大阪にオフィスあり)」、QVCジャパンは「昨年と同じで最終面接以前の選考は基本オンラインで行った。具体的には、説明会、グループ面接、Web適性検査、2次面接はオンラインで実施した。内定者のうち3名は遠方に住んでいたが、オンラインで無理なく選考に参加されたと思う」といった回答があった。

選考時間の短縮にも寄与

各社とも、本社から離れた地域の学生に向けて、面接会場など場所の制限がなく広くアプローチできることや、選考時間の短縮、また、複数同時に遠隔地の学生とコミュニケーションが取れるということをメリットとしてあげている。コロナで広がったオンライン化の流れだが、収束以降も利活用するケースがほとんどで、さまざまな場面で定着したと考えられる。

「売り手市場」続くなか、採用活動の競争は激化

回答企業の全社が学生側優位と回答

今年春入社の新卒採用市場について、企業が感じた印象を聞いてみた。本項目の質問に回答した13社の内、全社が「売り手市場(学生側が優位)」と回答し、「買い手市場(企業側が優位)」と回答した企業は1社もなかった。未回答やどちらとも言えないとした企業は3社となっている。

前回調査では回答10社の内、9社が「売り手」とし、「買い手」は1社もなかった。前年に引き続き、学生側が有利な売り手市場であるとの傾向が強く見られた

採用のオンライン化で全国の企業がライバルに

「売り手」とした主な企業の回答理由では、ファンケルが「コロナ禍を経て他企業も採用に積極的になっているため」、ベルーナが「承諾後辞退者の増加、採用期間の長期化等」、ランクアップが「学生が内定を2社以上持っている方がほとんどであり、各社の内定出しをする時期が早まっている印象」、DINOS CORPORATIONが「従来の求人掲載型媒体からの学生流入数が減少傾向にあり、スカウト媒体を用いたプッシュ型のアプローチをしなければ有効母集団形成が困難だったことから、企業側が学生へ積極的に接触していく必要性を強く感じたため」、アスクルが「母集団形成の時期から、プレエントリー獲得に苦戦した。学生側の動きとしても、プレ期の就職活動内容として、幅広く多くの企業を見ていくというよりは、特定の業界、企業群に絞って集中的に活動量を投下するような動きがみられた」、ベガコーポレーションが「オンラインでの就職活動が当たり前になっている就活市場において、全国の企業が採用バッティングするようになったため競争が激化していると感じている」、日本生活協同組合連合会が「採用市場そのものが売り手市場であり、早期内定出しや就活生側の早期内定承諾・第一志望群からの内定率の高さなどの影響が大きい」、QVCジャパンが「昨年同様に部署によって異なった。たとえば業務内容が分かりやすく応募が集まりやすい部門は買い手市場だと感じた一方、母集団形成がしづらい部門は売り手市場だと感じた。ただ、全体のエントリー数は想定より少なく、新卒採用全体的にみると売り手市場だと思った」、タンスのゲンが「有効求人倍率に表れている通り、国内における労働人口の減少将来にわたる労働人口減少傾向に対応する必要に迫られているため」といったものがあった。

選考期間は5~6か月間

また、新卒採用の募集から内定までの試験を実施した期間についても質問。

昨年度と時期を変えずに実施したという回答が多く見られた。傾向としては2023年の年末あるいは2024年の年明けからスタートして、2024年の5~7月頃まで行うという回答が目立った

おおむね5~6か月間ですべての選考を行っているところがほとんどだが、なかには1年をかけて行っているところもあった。

主な企業の一例としては、日本生活協同組合連合会が「2024年1月~2024年5月末。例年と同様の時期に実施」、ジュピターショップチャンネルが「2023年8月~2024年5月(仕事体験プログラム期間含む)。例年と大幅な時期変更なし」、ZOZOが「ビジネス部門は、2024年1月~2024年6月まで採用試験を実施。特に開始時期の変更はない。開発部門が、2023年10月~2024年6月頃まで採用試験を実施。特に開始時期の変更はない」、ランクアップが「2023年5月頃から集客を実施し、12月より本選考のエントリー開始。2024年3月末ごろに内定出し。時期については例年と同じ」、パレンテが「2024年3月~7月。時期の変更なし」、アスクルは「大手の採用が本格的に開始される6月までに早めに内定を出したい学生にリーチする目的で、総合職採用の選考時期を早めた(2月~3月末)。エンジニア職採用活動は例年通り」となっている。

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